紀子の食卓
「紀子の食卓」
製作:2006年、日本 159分 R-15指定
監督、脚本:園子温 出演:吹石一恵、つぐみ、吉高由里子、光石研、並樹史朗、宮田早苗、三津谷葉子、安藤玉恵、渡辺奈緒子、季鐘浩、古屋兎丸、手塚とおる
2006.9.24 劇場前売り鑑賞券¥1,300にて鑑賞
隣の評論家はいくら?→¥2,500の価値はあるかと! / 評価:5.0★/5点満点★
「この世界は虚構<ニセモノ>の楽園」
正視しろ。これが現実<リアル>だ。この世界<ウソ>をナイフで切り裂いてやる。
衝撃作『自殺サークル』の続編とも言える内容ではありますが、本作は見事なヒューマン・ドラマという印象を受けました。静かに『家族の在り方』を力強く問いかける秀作だと思います。
伊豆で平和に暮らす島原一家。17歳の長女・紀子(吹石一恵)は、東京の大学に進学する事を夢見ているが、父・徹三(光石研)は、地元で進学しろと異を唱える。
ある日、紀子は東京を思い描く余り、家出をしてしまう。インターネットで【廃墟ドットコム】というサイトを通じて知り合ったクミコ(つぐみ)を訪ねるのだが、その先に待っていたのは思いもよらない生き方だった。連鎖反応のように、次女・ユカ(吉高由里子)も家出をしてしまう。母親は耐え切れずに自殺を図ってしまう。幸せだと信じていたのに、突然『絶望』に襲われた父・徹三は、娘の失踪の手がかりを必死で探す。そして、【廃墟ドットコム】の存在まで辿り着くのだが...。
紀子、ユカ、クミコ、そして徹三。それぞれの口から一人称形式で語られ、チャプター毎に綴られていく、それぞれの人生観。実に興味深いもので、159分なんてアッと言う間に過ぎていきます。余りにも見事なストーリーに圧倒されて、気がつくとシクシク泣いている自分が居ました。
紀子の父親への小さな反抗心、理解できない事もありません。この頃の少女なら、誰でも持ち合せている《思春期》特有の反抗とでも言おうか。『家出』とは、やり過ぎな気もしますが、最終的には想像以上にたくさんの事を悟る羽目になったように見えました。
姉を想いながらも、同じ道を辿る妹・ユカ。危うく儚く不安定でいながら、賢い雰囲気がよく出ていたと思います。吉高由里子の自然体の演技は好感が持てました。
そして、父・徹三。今まで信じて疑わなかった『幸福』が、音を立てて崩れていく悲劇の展開。『絶望』で愕然とする光石研の背中に、オイオイと涙が溢れて止まりませんでした。「父は娘を理解しているつもりで、理解できていなかった」というようなセリフがありましたが。そういう娘の方だって、父を理解しようとはしていなかった。10代そこらの少女には無理な注文なのでしょうか?先日観た『太陽の傷』で、「大人は子供と向き合っているのか」などと偉そうな一文を述べてしまったのですが。コレは、口で言う程に簡単な事ではないのだと痛感しました。難しくても、向き合おうとする姿勢は大切ですよね。
本作で異彩を放っていたのは、クミコを演じたつぐみです。透き通るような美しさと、痛々しく残酷な美しさを併せ持つ存在感。そもそも、この〈クミコ〉というキャラクターは本作のキーであり、とても難しい役どころだと思うんです。クミコの人生が、一番強烈で色々と考えさせられるものがありました。
「あなたはあなたの関係者ですか」
『自殺サークル』に引き続き、こんなセリフが何度か出てきます。前回は、嫌悪感で一杯になったのですが。本作では、何だか色んな想いが昇華した気がしました。
「人は与えられた役割を演じている。父親という役割。娘という役割。」
少々小難しいセリフが多々でてきます。それでも、とにかく私の考え方はと言うと。与えられた役割は演じていかなければ!という事です。それが『生きる』という事だと思います。小難しい理屈は抜きにして、シンプルに家族(または周囲の人)と向き合おうとする事。公共広告機構のCMにあったように、親は子供をとにかく抱き締めるべきであると。とにかく、シンプルに生きていければそれでいいと思いました。
それにしても、何で《R-15指定》なんざんしょ。 園子温監督作品というだけで、この扱いな訳ですか?レイトショーに追いやられなかっただけ、まだラッキーかもしれませんがねぇ。若い世代の人も子を持つ親世代の人も、たくさんの人が見て色々と感じて欲しい作品でした。
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» お父さん、延長します? [CINECHANの映画感想]
215「紀子の食卓」(日本)
2002年5月26日新宿駅で女子高生が手を取り合って一斉に線路に飛び込んだ・・・
その前年豊川市に住む17歳の女子高生島原紀子は、「廃墟ドットコム」というサイトで知り合ったクミコを頼りに東京へと家出する。クミコと出会った紀子は〝ミツコ〟と名乗り、クミコの組織の一員となる。その組織とは・・
紀子の妹のユカも「廃墟ドットコム」の存在を知り、姉の後を追うように家出する。二人の父、徹三は崩壊した家族を再び取り戻そうと「廃墟ドットコム」の存在を追っていくが・...... [続きを読む]
受信: 2006年10月14日 (土) 00:52
» 紀子の食卓 [とにかく、映画好きなもので。]
この物語は5章からなる。2時間半以上の作品という事もあり、かなり気合を入れて観に行ってしまったのだが・・・
17歳の平凡な女子高生、紀子(吹石一恵)が豊川の実家から家出をし、東京駅に着くシーンに彼女の淡々としたモノローグが心地良くかぶ....... [続きを読む]
受信: 2006年10月24日 (火) 20:13
» 紀子の食卓/吹石一恵、つぐみ、吉高由里子、光石研 [カノンな日々]
『一家団欒という日常風景にひそむ、嘘---。既に崩壊した現代の家族の姿を、園子温が炙り出した。衝撃のホームドラマです』
というのは、プログラム冒頭にあるキャッチコピーですが、全く、園子温監督ってば評判通り鬼才というか変人というか(笑) ホントは公開後すぐに観...... [続きを読む]
受信: 2006年11月 9日 (木) 21:47
» 「紀子の食卓」:上野駅前バス停付近の会話 [【映画がはねたら、都バスに乗って】]
{/hiyo_en2/}「紀子の食卓」の主人公”紀子”が家を飛び出して降り立った上野駅ね。
{/kaeru_en4/}いやいや、「紀子の食卓」の主人公”上野駅54”と呼ばれる女が捨てられていたコインロッカーのある上野駅だ。
{/hiyo_en2/}え、「紀子の食卓」って、吹石一恵が演じていた紀子が主人公なんじゃないの。
{/kaeru_en4/}表の主人公はそうだけど、よくよく考えてみると、つぐみの演じていた”上野駅54”が�... [続きを読む]
受信: 2006年11月 9日 (木) 21:57

コメント
隣の評論家さん、こんばんは~。コメントありがとうございました。
「自殺サークル」はレイト・ショーのみの上映で平日にも関わらず立ち見が出るほどでした。
なのに本作は・・・
ブロガーの方々なら観ると思ったんですがね。
鮮烈な映像は無くとも内容は鮮烈でしたね。それにラストの再会からのシーンは一体どうなるやらとドキドキものでした。先の想像なんて出来ない内容でしたから。
>本作では、何だか色んな想いが昇華した気がしました。
この気持ち何となくわかります。何か気持ちが吹っ切れたような・・・もい一度周囲に人との繋がりを確認したくなるような・・・
本当に2時間39分が長く感じませんでした。
「バラが咲いた」もいやに印象的でした。
「ハザード」も楽しみです。
鮮烈な映像ではもちろん「ホステル」も楽しみですが。
投稿 CINECHAN | 2006年10月14日 (土) 01:04
CINECHANさま
TB&コメントありがとうございます。
・・・劇場はガラ空きだったのですね・・・(涙)。でも、取り合えず1人でも観た人と出逢えて、それだけでも嬉しく思います。しかも、なかなか楽しめたようですね!CINECHANありがとおぉぉぉぉ(号泣)
ラストの再会。予告編を見ただけでは全く想像もつかないシーンでした。できれば、もう1回観に行きたいのですが。それは無理なのでDVD化したら購入しようかな。CINECHANのところに書いた点も、気のせいだったかどうか確認してみたいです。
『バラが咲いた』のシンプルなメロディーが心に響きますね。とても効果的な選曲だったように感じられました。
投稿 隣の評論家 | 2006年10月14日 (土) 19:16
こんばんわ☆隣の評論家さん。
オススメという事で観てまいりましたが、家族という存在は鋭く辛辣に描写した秀作でしたね。本当に159分という時間もあっという間に過ぎていきました。
社会の中での家族、その中の個人・・・語りだしたらキリが無いのですが、大人が子供と向き合うという事は、そう簡単な事では無いのだなとひしひしと僕も感じました。お父さんも悪い人では無いのに、唐突に娘がいなくなった理由が分からないシーンは観ていて心が締め付けられましたね。愛しているのだけど、愛し方を間違えたのか。それとも知らず知らずに娘達を傷つけていた事に気付かない親の悲しみを光石研さんが見事に演じていました。
僕も役割というのは大事だと思います。日々生きている中で、誰しも役割を演じていますからね。もちろんその役割に飲み込まれる事無くバランスを持たないとやっていけないのですが、例えば思ったのですが、役割に飲み込まれ、自分を見失ってしまう人々がひきこもりや自殺といった現象にもつながってるのだと、少なからず思います。
隣の評論家さんがオススメしていなかったら、劇場では観ていませんでした・・・これほど力のある映画に触れる事が出来て本当に良かったです。
ありがとうございます♪
投稿 orange | 2006年10月24日 (火) 20:12
orangeさま
TB&コメントありがとうございます。
あっ、私の『すり込み』にのってい頂いての鑑賞だったのですね(照)!おー、こちらこそありがとうございました。この作品、どうにか盛り上げていきたいと思っていたのですが、私には何の力もありませんでした。それでも、たとえ1人であろうと2人であろうと。この作品を見て見応えを感じて頂けたのであれば、それはとても嬉しい事です。見て頂いて本当に良かった!
この作品、本当に語りだしたらキリが無いですねー
印象的なキャラクターを一人選べと言われたら。やはりクミコなんですけど。今回は父・徹三について書きます。
娘の父へのいらだち。わからなくもないのですが、社会に出てそれなりに人間観察を繰り返していく内に、徹三の心境もよくわかるようになりました。父と娘 って、難しい部分があるのかなぁなんて。父にとって娘って、何よりも大切な存在であるのと同時に理解しきれないモンスターなんではないかと思ってます。親子と言っても異性だから。母と息子 とはまた似ているようで違うのかななんて。
私自身は、父と不仲で家出をしたりなんて経験は全くありませんが。家族のイッコク柱として身を粉にして働いているという強さを理解しようとしていない時期もあったような気がして。母とは仲良く買い物に行っても、父とは交流を持とうとしない年頃があった気がして。
今だから言えるんですけど、この姉妹の気持ちを理解しながらも、徹三の淋しい背中に寄り添って鑑賞しておりました。本当に、これ程に《家族》の在り方を考えさせられた作品は他に余り無いかもしれないです。
何よりも、『自殺サークル』を見た後だと直視できない映像が続くものあと思い込んでいたから、いい意味で裏切られましたよね。
投稿 隣の評論家 | 2006年10月24日 (火) 22:21
上野駅54さん、こんにちは。ミツコです。
ふふふ。観ましたよ。某映画祭にて。
いやいや、おもしろかったです。
この一見凡庸風なタイトルにすっかり騙されていました。
むしろ裏をかいたタイトルだったんですね。
食卓とはこんな食卓だったなんてー。
私は紀子よりユカにググッときちゃいました。
女子高生の感情をこんなに繊細にリアルに描ける人ってそうそうおりません。
(私が知っているのは岩井俊二くらい)
ハザードと通じる感覚は大いにありますね。
私は家族のあり方というよりも、多感で難しい女子高生を描いたものとしてエラくしびれてしまいました。
決壊ダムさん、サイコー!
レヴューは書けないかも・・・
投稿 かえる | 2006年11月26日 (日) 00:55
かえるさま
コメントありがとうございます。
な、何とナント。取り上げている映画祭があったのですねー。嬉しー。しかも、ご覧になって頂いて。お気に召した様子で何よりですわ。
>私は紀子よりユカにググッときちゃいました。
確かに、ユカはとてもリアルだった気がします。紀子よりも印象に残っているし、ラストのユカの選択も...。
私は、父・徹三に寄り添って鑑賞していたので、かえるさんと痺れた部分が違えど。こうして違った角度から考えても、面白い作品だったなぁと気づかされた次第です。
クミコも強烈な存在感だったので、つぐみさんが気になって気になって。パンフレットに園子温監督の他の作品にも器用していると載っていました。それは公開されるのかなー そちらも楽しみにしているとです。
投稿 隣の評論家 | 2006年11月27日 (月) 20:18
初めまして!
TB&コメント有難うございました。
僕もこの映画は結構好きですね。観ていると色々と考えさせられると言いますか・・・確かに僕なんかもそうですが、周りから与えられた役割を演じている部分はあるのかなって気はします。時にそれが居心地良くもあり、時にそれが足枷になったりと色々とあるわけですが。
実は舞台挨拶つきでこの映画を観に行きましたが、園監督は吉高由里子を高く評価しているらしく、「手垢が付く前に何とかしたい」と仰ってました。今後、園監督の作品で見かける事が増えるかもしれませんね。
まずは恐怖爆髪な『エクステ』が観たくてたまらないですが(笑)
って事でこれからもよろしくお願いします。
投稿 蔵六 | 2007年1月22日 (月) 22:13
蔵六さま
TB&コメントありがとうございます。
もう、この作品を見たという方に出逢えただけで、飛び上がる程に嬉しく思います。「見てみたい」と言いながら結局みなさん観に行かないんだもんっ 観に行ってよぉー と、いう感じで(笑)。
この作品に関しては、語りたい事が色々ありすぎて困ります(笑)。
考えてみると、誰でも何かしらの『役割』を与えられて生きてるんですよね。与えられたからには演じていかないと なんて事は、今まで考えた事もありませんでした。『自殺サークル』の時は、小難しいセリフだなっ なんて辟易したのですが。本作では、スーッと入ってきました。
蔵六さんは、園子温監督の舞台挨拶つきだったのですね。羨ましいです~ 理解できるかできないかはさて置き、園子温監督の話って聞いてみたいです。私なんかには入っていけない頭の中って感じだとは思うのですが、それでも彼の才能には脱帽しまくりなのでありました。
さて、この作品について書くと、どうしても長くなってしまうのですがー(汗)。これからもどうぞヨロシクお願い致しますね~♪
投稿 隣の評論家 | 2007年1月23日 (火) 19:26
こんにちは♪
先日はTB&コメントどうもありがとうございました。
一週間だけ夜1回の上映だったのですが、どうしても見たくて行ってきました。
「自殺サークル」は未見ですが、あのプラットホームでの集団飛び込みのシーンはあまりにもショッキングですね。
Rー15指定はあまりに流血シーンが多いからでしょうか。
人はみんな与えられた役割を演じている。という印象的なセリフがありますが、「演じている」と感じた時からそれが苦痛になってしまうのではないかなと思います。
「演じている」と感じる暇が無いほどそれに没頭していられればいいんですけれどね。
一旦疑問を持ち始めるともうダメというか・・・。
上手くいえませんが、とにかく見て良かった、問題作、衝撃作だと思います。
今後ともよろしくお願いいたします。
投稿 ミチ | 2007年1月24日 (水) 18:35
ミチさま
TB&コメントありがとうございます。
>どうしても見たくて行ってきました。
ひゃ~っ、まるで自分の事のように嬉しいです。
>演じている」と感じた時からそれが苦痛になってしまう
なるほどー。確かに、そうかもしれませんね。大人になってしまうと、そんな風に感じる余裕も無いけれど。多感な頃って、色々と考えてしまうのかもしれませんねぇ。でもまぁ、どんな人も何らかの役割を与えられている訳だから、演じていくしかないと思うよ。なんて言ってみたかったけれど。一度、疑問に思ってしまうと、なかなか払拭できないものなんでしょうね。
『自殺サークル』は未見との事ですが、かなり衝撃的だし何か苛立ちました(笑)。とても同じ監督が撮ったとは思えないくらい、毛色が違います。うーむ、苦手だ という事であれば、見なくても大丈夫だと思います。
最初のやり取りに長々と失礼いたしました。『紀子の食卓』となると、話が止まらなくなってしまうんですよー。
これからもどうぞヨロシクお願い致します。
投稿 隣の評論家 | 2007年1月25日 (木) 20:39
あらまたTB反映されないかしら。
>そういう娘の方だって、父を理解しようとはしていなかった。
ここはかなり引っかかりました。
父親が嫌悪感を抱かれることをしたのは紛れもない事実として、
しかし最後のほうのあそこまで否定されるところは、
子どもいないくせにお父さん目線になって辛かったです。
そんな僕の感情論は小さいことなんでどうでもいいんですが、
とても力のこもった作品だと思いました。
「それボク」に引けをとらず。
特に第2章だったかな? ユカの件。
シンクロ具合が素晴らしかったです。
「自殺サークル」を良かったという人の気持ちは理解できないのですが、
本作は賛否が大きく分かれるかなぁと感じました。
僕としては全体的に見ると波長が合わなかったような。
あ、まあ結局個人的感性になっちゃうんですけどもw
投稿 現象 | 2007年1月29日 (月) 02:02
現象さま
コメントありがとうございます。何かTBのらなくなっちゃいましたねぇ。むむぅ、ゴメンなさーい。
>しかし最後のほうのあそこまで否定されるところ
男性から見ると、ここは ヒドイじゃないかっ と感じる方が多いですよね。私は、女ながらに、父・徹三にピッタリと寄り添って鑑賞してました。父と娘って、わかり合えない部分もあると思うのですが、不器用であっても父親の娘への無償の愛は否定したらいけないなんて思ったりしました。本作の姉妹にとっては、そこまで考える余裕を持つにはまだ若いといったところだったのかな。すれ違いが迎える展開、本作のソレは余りにも悲し過ぎると思いました。
『自殺サークル』をいいという人がいるんですね。どこがだー!と思う私にとっては、本作は同じ監督による作品とは信じがたかったです。そういう驚きも手伝って、園子温に注目するようになりましたー。
『エクステ』も勿論、鑑賞予定♪
投稿 隣の評論家 | 2007年1月29日 (月) 20:36