手紙
「手紙」
製作:2006年、日本 121分
監督:生野滋朗 原作:東野圭吾 出演:山田孝之、玉山鉄二、沢尻エリカ、吹石一恵、尾上寛之、田中要次、山下徹大、石井苗子、杉浦直樹、吹越満、風間杜夫
2007.1.10 レディース・デイ¥1,000にて鑑賞
隣の評論家はいくら?→¥2,000で妥当 / 評価:4.0★/5点満点★
「人は、ひとりでは生きていけない――。」
手紙って、めちゃ大事やねん。 命みたいに、大事な時あんねんで。
かなりベタだし、プロに言わせれば技術的には稚拙な作品かもしれません。それでも私、とても深く感動しました。心に深く焼きついた部分を書いていきたいと思います。公開されてからだいぶ経つので、ストーリー紹介は省略します。
二人っきりの武島兄弟。成績優秀な弟・直貴(山田孝之)を大学に進学させたい一心で、お金欲しさに強盗事件を起こす兄・剛志(玉山鉄二)。故意にではなく、突発的に人を殺めてしまった剛志は刑務所へ。塀を挟んで、手紙でやり取りする兄弟。しかし、直貴の運命は徐々に狂い出す。仕事はクビになり、アパートも追い出される。
冒頭から直貴の表情はどんよりと暗い。まるで【鬱】という文字が人の姿をしているかのような存在感。自分は、この世で一番不幸だと言わんばかりの表情をしている。そういう生き方って、本当にイライラするんですわー。兄の存在を誰にも知られたくない、誰にも心を開くまいと誓う直貴。結果、どんどん曲がり道を歩んでしまったように見えます。何か都合の悪い事が起きると、それは全て《アニキのせい》。「どう考えるかは、全て自分次第なんだよ。」と母親に、「ピンチはチャンスです」と上司に。耳にタコができるくらい聞かされてきた私にとって、直貴の考え方は共感のしようがありません。もう少し周囲に甘えれば、誰かに助言してもらえたかもしれないのに。やがて、兄という存在を疎ましく思い、【憎しみ】だけをエネルギーに取り合えず生きているように見えました。
周囲からバッシングを受けても、直貴の側には温かい人物がいました。直貴にひたむきな愛を捧げる由美子(沢尻エリカ)というキャラクターは重要です。自分自身も辛い過去を背負っている由美子は、とても前向きで芯の強い女性です。兄に手紙の返事を書かなくなった直貴に隠れ、直貴になりすまして返事を書きます。直貴とお笑い芸人を目指す幼なじみ・祐輔(尾上寛之)も印象深いです。お笑いを諦めた直貴に「今、刑務所を巡る『慰問ライブ』をやってるんだ。またコンビ組まないか?」と、誘います。由美子と祐輔のおせっかい、とても心地良く心に響きました。直貴め、何て幸せな野郎だ!とも思えて、溢れる涙が止まりませんでした。
直貴とすれ違う人にも、忘れがたい人物がいました。ある工場で、年長の同僚(田中要次)とソリが合いません。実は彼も、刑務所に服役していた過去があるのです。刑務所にいる兄から直貴に手紙が届く事を知り、「兄貴に手紙を書いてやれよ」と言います。彼の呟くこの言葉は、とても重みがありました。
ある電気販売店でも身内の事情が知れて、工場へ異動になります。クビではなくて『異動』ですよ。それでも、みんなアニキのせいだという思いは強くなる一方だったようです。そこへ、本社の会長(杉浦直樹)がひょっこりと姿を現します。「コツコツと、ココから始めればいいんです。」という会長の言葉には穏やかな力があり、嗚咽状態でした。ほんの僅かな登場でも、杉浦直樹の確かな存在感は素晴らしかったです。
兄・剛志は、被害者の息子(吹越満)にも手紙を書き続けていた事が判明します。直貴が「今後一切、返事は書かないから手紙を寄こさないでくれ」と、手紙で縁切り宣言します。ようやく届いた、弟からの悲しい手紙。「自分も書くのを止めます」と最後の手紙を書く剛志、受け取った被害者の息子は心を打たれます。彼もまた【憎しみ】という感情に蝕まれていたのかもしれません。直貴に「もう終わりにしましょう」と言葉をかけます。こうして、兄に対する直貴の複雑な想いは昇華されました。
一番忘れがたいのは、ラストの剛志の表情でしょう。祐輔のおせっかいに身を任せて、刑務所へ慰問ライブに訪れる直貴。そこは勿論、剛志の服役している刑務所。祐輔&直貴のお笑いライブに爆笑が起こる中、鼻水を垂らして溢れる涙を止められない剛志。声を漏らさないように気をつけているのか、自然と合わせた手の平に力が入ります。涙を拭こうともせず、ただ手に力を込める剛志。私には、合掌しているように見えました。ようやく自分と向き合ってくれた直貴への感謝の気持ちもあったと思いますが。まるで、弟の晴れ姿を見せてくれた神様に心からお礼を言っているようにも見えました。演じた玉鉄の如く、私も涙が止まりませんでした。
誰かを憎むことは簡単かもしれません。でも【憎しみ】は、ある種の毒だと思います。人を【赦す】ということは難しいことかもしれませんが、魂を清めるかの如く崇高なのかもしれないと思いました。ちょっと大袈裟ですけど、本当に感動しました。
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コメント
こんにちわ。
最近、観たい新作がなくて、DVDばっかり観ていた睦月。
明日からやっと2007年の映画祭りが始まりますね♪
ご覧になられたんですね、この作品。
睦月、ベロベロ泣いてしまいましたよ。
あのラストの玉山さんの表情にはかなりヤラれました(泣)。
洋画の興行収入を邦画が抜く勢いとのことですが、最近の邦画は
ホントに良質なものが多いなあという気がします。
この作品もホントに感動的なイイ映画でしたね。
投稿: 睦月 | 2007年1月12日 (金) 12:45
こんにちは~
隣の評論家さんのレビュー読んだだけで、また泣けてきましたよ。
本当にドラマとしては少々ベタかもしれませんが、泣かされる作品でした。
直貴に対する思いは、私も同じように苛立たしい感じがしましたが、彼の立場というのが自分では経験するものではありませんからねぇ。
でも支えてくれる人がいるのは幸せなことです。
投稿: CINECHAN | 2007年1月13日 (土) 12:14
TB&コメントありがとうございます。
★睦月さま
いやぁ、間に合いました。13日までは気になる新作もなく、評判のいい本作を上映している映画館が幾つかあったのです。
私も相当泣きました。帰りの電車でも目を真っ赤に腫らせていたので、変に思われたかも?一度お手洗いで「うわーん」と泣いてから電車に乗れば良かったな。
玉鉄はラストの姿が忘れられませんが、私はもう1つ書きたい事があった!由美子の代筆とは言え、弟から届く手紙。次の手紙は必ず「手紙ありがとう」と書き出してましたね。それだけで泣けてきました。罪を犯したとは言え、とても清らかな心の持ち主に思えたりして。
メールが主流の今日この頃ですが、手書きの手紙っていいですね。本作では縦書きというところがまた印象深いです。
★CINECHANさま
鑑賞してから大分時間が経っているとは言え、思い出して泣ける作品って素晴らしいですね。涙腺を刺激してしまいましたか(笑)。
直貴のキャラクター。私は同じ目に遭った事がないから、幾らでも好きなこと書けますけど。周囲に支えてくれる人がいる幸せというのを噛み締めて欲しいと思いました。また、アニキに反発しているように見えても、直貴は心の奥ではアニキを大切に思っていたのだと思います。頑固で不器用なばっかりに、それが伝わらないといった印象を受けました。そこまで書きたかったのですが、まとめている内に省いてしまいましてん。
投稿: 隣の評論家 | 2007年1月13日 (土) 16:13