血と骨
「血と骨」
製作:2004年、日本 144分 R-15指定
監督:崔洋一 原作:梁石日 出演:ビートたけし、鈴木京香、新井浩文、田畑智子、オダギリジョー、松重豊、國村準、濱田マリ、中村優子、北村一輝、柏原収史、寺島進、伊藤淳史、唯野未歩子、塩見三省
隣の評論家のおススメ指数 4.5★/5点★満点
一言コメント:こんな壮絶な人生は、見たことがない!書きたい事があり過ぎて、まとめるのに時間がかかってしまいました。主演のビートたけしの生身の迫力が画面から溢れ出てくる秀作です。
「血は母より、骨は父より受け継ぐ。」
その年の各映画賞を賑わせた本作を見たのは、昨年のクリスマス付近でした。余りにも衝撃を受けて、劇場まで足を運ばなかった事を心から後悔しました。気を取り直してDVDを購入し、再度見てから記事にしています。ちなみに、原作は一切読んだことがありません。
1923年、祖国を後に大阪へ渡ってきた金俊平(ビートたけし)。朝鮮人集落での生活は貧しく過酷であったが、蒲鉾工場を立ち上げて成功する。凶暴で強欲な人柄ゆえに、誰もが恐れる存在だった金俊平。工場が上手くいかなくなると、高利貸しに転じて逞しく生きていく。そんな彼の壮絶で迫力満点の人生を描いた作品。
原作は映画を遥かに凌ぐ迫力なのかもしれませんが、これは凄い映画だと思いました。何が凄いって、金俊平という人物は今まで見た事もないくらいの迫力を見せます。困難を困難とも受け取らない迫力、何としても生き抜こうとする迫力。演じたビートたけしの生身の迫力が、真に迫っていて姿勢をピンと伸ばしてしまいました。暴言を吐くだけでは止まらない暴力の数々。「アンタの息子じゃき」と、突然姿を現した息子・武(オダギリジョー)との取っ組み合いの喧嘩も凄まじいけど、妻・英姫(鈴木京香)や娘・花子(田畑智子)に加える暴力も直視できない程の迫力がありました。
ビートたけしの迫力も見応え十分だけれど、息子・正雄を演じた新井浩文もいい!
子供の頃から母や姉が苦しめられる姿を見て育った正雄は、当然のように父・俊平を憎むようになります。しかし、運命とは皮肉なもの。スッカリ大人になった正雄は俊平にソックリな生き方をするようになるのです。父を憎悪し疎ましく思いながらも、潜在的には父の逞しい生き方を学び取っていたのかもしれません。
それは母・英姫も同じだったかもしれません。別れたいと思いながらも、なかなか離れられないのは、あの逞しさは生き抜く為には必要だという現実もあったかもしれません。花子が父の暴力から逃れたくて嫁いだ男も、蓋を開けてみれば父と変わらない暴力男だった事も皮肉でした。俊平の影から決して逃れられない家族の姿が印象的でした。
俊平は2人の愛人を囲います。という訳で、妻・英姫も含めてレイプに近い濡れ場のシーンもありますが。そこには、自分の分身を少しでも多く残したかったという思いがあったのではないでしょうか。自分自身が生き抜くだけでは決して満足できず、《種》を残すことにも執着しているように見えました。なかなか子を授からない1人目の愛人・清子(中村優子)は、やがて脳腫瘍で倒れてしまいます。全身麻痺と思しき状態で退院してからは、意外にも献身的に世話をする俊平の姿が映し出されます。鬼のようでも情に深い一面があったようです。
2人目の愛人・定子は、清子の世話係として子連れで登場します。演じた濱田マリは、朗らかなイメージが強かったので。吹き替えなしで濡れ場を見せられた時は驚きました。俊平の思惑通り、定子は結果的には4人の子供を産みます。4人目は男の子でしたが、男の子が生まれるまで縛られているようにも見えました。やがて年老いた俊平は倒れて、杖なしでは生活できない身体になります。そうなってからの定子の言動は恐ろしかったです。転んだ俊平を蹴りまくり、「この死に損ないが!」と罵倒しながら杖を取り上げて叩き続けるシーンがありました。スカートの下からチラッと姿を現す膝下ストッキングのラインが、〈もう女は捨てたの〉と言わんばかりの迫力を垣間見せました。
他にも松重豊や國村準といったベテラン陣や、北村一輝や柏原収史といった若手のキャストが素敵なのですが。本作は何と言っても、俳優・ビートたけしを堪能する映画です。一言では言い表せない存在感を発揮していました。暴力シーンも凄いけど、ボカシ付きとは言え、オールヌードを堂々と披露した点も迫力がありました。濡れ場を演じる勇気は、女優だけのものではないのですね。
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コメント
DVDをレンタルしに行って、迷ってた時この作品が目に付き、
そういえば、隣の評論家さんの評価がいやに高かったなと思い出し
借りて見てみました。
衝撃でした。
感動話でも主人公俊平に感情移入できる訳でもなく、俊平の生に対する恐ろしい執着と我儘に心暗くならずにはいられない作品でした。
ただそんな事でこの作品を評価は出来ないと思いました。
確かにあったであろう戦後日本の人々の貧困と在日コリアンの苦しみと日本の発展を自然に生々しく感じることが出来ました。
二度と集まらないかのような豪華で個性的な俳優陣、素晴らしい昭和のセット&CG。稀有な作品でした。
投稿 星雄 | 2007年3月 4日 (日) 16:31
星雄さま
いらっしゃいませ!コメントありがとうございます。
読んで頂けただけでも嬉しいのに、レンタル店でも思い出して頂けたなんて!!!しかも、この記事は全く盛り上がっていないので、大変嬉しく思います。どうもありがとうございます。
>ただそんな事でこの作品を評価は出来ないと思いました。
そうですね、そこですよね、ポイントは。
こういった作品には、私なんかとは逆に嫌悪感で一杯になって見た事を後悔するような方もいらっしゃるかもしれません。でも、この作品で描かれた世界は、確かに存在していたのですよね。
>俊平の生に対する恐ろしい執着
とても真似はできませんが、この執着こそが生きる活力になっているというか。本当に圧倒されてしまいました。「なんとなーくブラブラと生きている」つもりはありませんけど、本作を見て何だか喝を入れられたような気持ちもあったりして。何ともパワフルな作品だと思いました。
もしかしたら、原作は映画以上に迫力があるのかもしれませんね。機会があったら読んでみたい気もします。
また気が向いたら遊びにいらしてくださいね。
投稿 隣の評論家 | 2007年3月 4日 (日) 22:38
こんにちは。またまたおじゃましてしまいました~。
『血と骨』観させていただきました。以前から『観なくては。しかし・・・』みたいな感じでなかなか手が出ず、躊躇していた作品だったのですが、いやー、衝撃でした。
幸せな人がひとりもいないのでは?って思っちゃうくらい誰もが不幸に見えてしまいました・・。すさまじい暴力、自殺、病気などなど観ていて相当つらかったです。でも生き抜いていかなくてなならなかったのですね。誰もが。
『生きる』ことにこれほど執念を燃やすって今はなかなか実感できないことですよね。のんべんだらりんと生きているような私にはガツンときました・・。
『執念』とか『強欲』とか『自分勝手』とか結構人間の『負』の面を見せつけられた感じがしました。
出演者の体当たり演技も本当にすばらしいですよね。すべてに圧倒されまくった映画でした。
あ、新井浩文くんやっぱりすばらしいです!!
投稿 franky | 2007年3月 6日 (火) 18:09
frankyさま
コメントありがとうございます。
おおおおお!見ましたかー。やっぱり衝撃的でしたかー。
この作品、人によっては、とてもじゃないけど受け付けられないという方も居るかと思うんですよね。嫌悪感しか残らないという方も。
>『生きる』ことにこれほど執念を燃やすって今はなかなか実感できないことですよね
そこなんですよねー。今の世の中、子育て放棄だの自殺だの。生きることが嫌になっているのかしらという事件が、幾つも幾つも起きていたりするから。この作品から溢れ出る俊平の生に対する執念は、無視できないと思いました。負の面であっても、こんなにも生きようとする俊平。自分の血を残そうとする執念も凄まじく。現代人には余りない人間の本能をさらけ出す生き方って凄いなぁと思いました。こんなに生命力に溢れている人って、自分の周りでは見たことがありませんです。
ちょっとやそっとでブチブチ文句を言ってしまう自分が恥かしくなったりもしました。『生きる』って凄いことなんですねー
と、まぁ。普段はこんなに深く真剣にお話できないので、ちょっと書いてみました~。
投稿 隣の評論家 | 2007年3月 6日 (火) 21:01