叫
「叫」
製作:2006年、日本 104分
監督、脚本:黒沢清 出演:役所広司、小西真奈美、伊原剛志、葉月里緒奈、オダギリジョー、加瀬亮、平山広行、奥貫薫、中村有二、野村宏伸
2007.3.7 映画サービス・デイ¥1,000にて鑑賞
隣の評論家はいくら?→¥2,500で妥当 / 評価:4.5★/5点満点★
「“忘れ去られた過去”の恐怖」
連続殺人事件発生、容疑者は刑事。 「俺、何やった・・・?」
実は余り期待していなかったのですが、私はメチャメチャはまりました。具体的にキッチリ描かれる訳ではなく、それとなく場面を繋いで観客自身に解釈を委ねているかのような作風。『LOFT ロフト』はイマイチ掴めなかったのですが、本作は気持ちいいくらいに自分なりに解釈して楽しむことができました。またしても少数意見のような予感がするのですが(汗)、怖気づかずに書いてみたいと思います。
連続して海水による瀕死体が発見される。捜査に乗り出す刑事・吉岡(役所広司)は、次第に奇妙な出来事に悩まされる。被害者の周辺には自分を暗示する痕跡が見つかる。そして、赤い服の女性(葉月里緒奈)があり得ない状態で姿を現し、悲鳴を上げては去っていく。次第に、吉岡の精神は不安定になっていく。果たして、幾つもの謎の先に、吉岡が見たものとは...。
最初の瀕死体は、赤い服を着た身元不明の女性でした。警察が現場検証をしている際、水溜りに太陽の光が反射していたかと思いますが。どこか不安を覚えるままに、ストーリーは進行していきました。事情聴取の部屋、吉岡の部屋、犯人が顔を洗うシーン。色んな場面で【鏡】が異様な存在感を放っていた気がしました。鏡って人間の本性を映し出すと言うし、何か変なモノが映るのではないかと余計な心配をしてしまいました。鏡を象徴的に使っているのは怖いけどツボでした。それと、水溜りがブルブルと振動する描写も恐ろしかったです。ハリウッド大作『コンスタンティン』でも、現世から異界へ侵入する入口として《水》を利用していたし。専門家によると、水には霊的なものが集まり易いそうですし。【水】の存在感も異様なものがありました。
一番恐ろしかったのは、赤い服の女性の叫び声でした。一言で《悲鳴》と片付ける事ができないくらいの迫力でした。「きえぇぇぇーーーーーっ」と、響くもの凄い音に鼓膜が破れてしまうかと思いました。発せられる度に、吉岡の如く耳を塞いでしまった私です。
吉岡が犯人なのか、そうではないのか?という部分は、それほど重要ではないと思いました。赤い服の女性に何が起きたのかも同じだと思います。あれは【死神】 【悪霊】といった良からぬものが人の姿をしているだけなのかもしれないと解釈しました。(最初は人間だったんだとは思いますがね) 叫び声も、人間のものとは思えないくらいに異様でしたし。それこそ、全ての人間をジーっと監視しているのかもしれないと考えてしまったりー。《嫉妬》 《恨み》 といった負の感情って、誰の心にも生まれ出るものだと思うのですが。そんな想いが【闇】となって心を支配した時、赤い服の女性を映す《鏡》が人の中に生まれてしまうのかもしれない。つまり、誰でも赤い服の女性を見る可能性があって、更には人を殺めるというとんでもない行動を無意識に起こしてしまう可能性だってあるのかもしれません。そんな感じで、本作は顕わにされるべきではない人間の《闇の部分》を見事に描いている印象を受けました。同時に、とても恐ろしい作品だと思いました。
全体的に受ける恐怖の度合いは、黒沢清監督の作品の中で私が最も魅了された『CURE キュア』に似ている気がします。私は、吉岡が迎えるオチは、割と早くから想像していたのですが。それでも存分に堪能できました。本作の死体が醸し出す不気味さも『CURE キュア』を連想させました。ラストの絶望的な1ショットは、黒沢清監督作である『回路』を思い出してしまいましたわ。という訳で、黒沢清監督ファンには堪らない仕上がりだったと思います。本作を気に入ったけど『CURE キュア』を未見だという方は、是非とも見てみてください~。
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コメント
こんばんわ☆隣の評論家さん。
叫び声・・・凄かったですね。葉月さんが発声しているかと思いきや、誰かが当てているようでした。それでも大仕事だとは思うのですが・・・
黒沢清監督には毎回、翻弄されます。『CURE』『回路』は大傑作なのですが、これもそのラインナップに加えようかと思っているほどハマリ込んでしまった一作となりました。
鏡と水。対比なのかもしれませんが、異世界に通じるという意味ではこれほど映像に映えるモチーフも無いのかもしれませんね。
特に印象に残ったのが、小西真奈美さんが鏡を捉えるショット。これがラストでどうなってくるかと思っていたら、上手いことラストに余韻を残しましたね。
これからも黒沢清監督には付いていこうと思っています♪
投稿: orange | 2007年3月10日 (土) 17:09
orangeさま
TB&コメントありがとうございます。
あの叫び声を担当した方は、何を生業としている方なんでしょうね。とても気になりました。私は本当に鼓膜が破れるかと思ってしまいましたし。
水もですけど、特に鏡の使い方が上手すぎて恐ろしかったです。orangeさんが挙げているコニタンを鏡で捉えたショットは、何故かゾッとなっておりました。その予感は的中していた訳ですがね。
>これからも黒沢清監督には付いていこうと思っています♪
おおお~っ、頼もしい一言ですね。私は未見のものもあるので、是非チェックしてみようと思います。
投稿: 隣の評論家 | 2007年3月10日 (土) 22:12
こんばんは。
TB・コメントありがとうございました。
黒沢清監督の描く霊は怖いです。予告の時から予測していたんですが。
「回路」の霊たちや「LOFT」の安達祐実、そして本作の葉月里緒奈。
ストーリーはちょっと私は今ひとつ飲み込めませんでした。
ラスト・シーンは私も「回路」を思い出しました。「CURE」にも似たところあるかもしれませんね。
いずれにしても今回は葉月里緒奈にやられました。
投稿: CINECHAN | 2007年4月 9日 (月) 01:41
CINECHANさま
TB&コメントありがとうございます。
>ラスト・シーンは私も「回路」を思い出しました。
おおお!嬉しいです、同じ意見で。私は全体的に「CURE」を彷彿とさせる印象だったので、黒沢ファンにはたまらないのではないかと思ったですよね~
そう言えば『松ヶ根』を観に行った時に、ロビーで黒沢ファンの青年2人の会話が聞こえてきたんですよねぇ
「『叫』は、なかなかでしたよ~」みたいなパッと見若いのに、他人行儀な会話だったなぁ。こういう単館系の作品だと、それこそ映画製作を目指しているような方が多いのかもしれませんね。
投稿: 隣の評論家 | 2007年4月 9日 (月) 20:32