絶対の愛
「絶対の愛」
<TIME>/製作:2006年、韓国 98分
監督、脚本:キム・ギドク 出演:ソン・ヒョナ、ハ・ジョンウ、パク・チヨン、キム・ソンミン、ソ・ジソク、チョン・ファン
2007.3.23 ミニシアター回数券¥1,330にて鑑賞
隣の評論家はいくら?→¥3,000で妥当 / 評価:5.0★/5点満点★
「永遠に、あなたと愛しあいたかった。」
奇跡か。愛の深淵か。 えっ?! 【整形返し】?
《唖然呆然ロードショー》 という言葉そのままに、呆然としっ放しです。こんなにハマるとは全くの予想外でしたけど、かなり胸に突き刺ささった作品でした。「タイトルに【愛】という言葉が入っているからどうかなと思ったけど。やっぱり、キム・ギドク監督の手にかかると、ラブ・ストーリーも奥が深いですね。ハマった自分にビックリしています。
セヒ(パク・チヨン)とジウ(ハ・ジョンウ)は、付き合い始めて2年が経つ恋人同士。時が経つにつれて、どんどん不安になっていくセヒは危うい言動を繰り返すようになる。そして、ある決意を胸に、忽然と姿を消してしまう。ジウは放心状態になり、孤独を埋められない。そんなある日、スェヒ(ソン・ヒョナ)という美しい女性がジウの前に現れる。セヒへの想いを消せぬまま、スェヒに魅かれていくジウ。実は、スェヒは整形手術を施して生まれ変わったセヒだったのだ。その事実が明らかになった時、ジウが取った衝撃的な行動とは...。
個人的には、人前で恋愛談義でワーキャー盛り上がるのは好きではないので。この作品を見て感じた事をどう表現していいのか難しいんですけど。とにかく衝撃を受けた部分を書いてみたいと思います。
整形前のセヒの言動には驚きました。ジウの視線の先が女性だと、ジウの前で仁王立ちして嫉妬を顕わにする。反面、「いつも同じ顔でゴメンなさい。」 「いつも同じ身体でゴメンなさい。」 とベッドのカバーで顔を覆いつくしてメソメソする。私が男だったら、何て疲れる女だ!と別れを切り出す事は間違いないのですが(苦笑)。同時に、セヒの嫉妬心も理解できるような気がしました。整形に踏み切るという少々常軌を逸している決意の根底には、溢れて止まないジウへの強い愛情があったのでしょう。危うい言動を見せても、特にセヒを突き放そうとするようにも見えないジウ。そこにはセヒへの愛が確かにあったと思うし、何よりもジウって優しい男性なんだなぁと私は感じました。ジウを愛する余り、ジウの気持ちと正面から向き合えないセヒの姿が悲しく映りました。
整形して自信を得たスェヒは、内面的にも変貌を遂げたようです。以前は愛情の押し付けとも取れる一方的な言動を取っていましたが、整形後は余裕の笑みを浮かべてジウを翻弄していました。見事な駆け引きでジウを掌で転がしていると言うか。ちょっと真似できないです。ジウと愛し合うスェヒは、これで思い通りになった訳ですが。「胸が張り裂けそうに苦しい」 と、号泣するシーンがありました。目的を果たしても決して満たされない愛情といったところなんでしょうか。とても複雑な心情だったように思います。私には、ジウという青年はとても純粋で真っ直ぐに見えました。スェヒが同じように感じ取っていたのなら、ジウの愛を勝ち得て幸せな反面、心が痛んだりしたのでしょうか。答えはありませんでしたけど、とても深い内容だったと思います。
人を愛することの奥深さ・難しさを痛感しただけで終わらせないのが、キム・ギドク監督。スェヒが実はセヒだったと知らされて衝撃を受けるジウ。そして、彼もまたある決意を胸に忽然と姿を消します。セヒが姿を消してジウが味わった不安や焦燥感を同じように体感するスェヒ。そして、突きつけられるジウの取った行動と悲劇的な結末。ラストは、顔を変えても何の意味も無いという気持ちにさせられました。《ありのままの自分》を表すのって難しい部分もあると思いますが、後味は良くないにしても不思議な魅力溢れる作品でした。
他にも好きだったシーンを具体的に挙げてみます。セヒが姿を消してから、他の女性と関係を深めようとすると何故だが邪魔が入ります。その正体は恐らくスェヒの手によるものだったとは思いますけど、明らかになっていないところがまた怖かったです。『足湯合コン』っていうのも面白いと思ったり~(笑)。それと、ジウとセヒの思い出の場所。フェリーで渡った島なのかな、彫刻公園みたいなところ。両手を重ねた彫刻が階段の代わりとなっている姿も面白いのですが、潮が満ちた時にその彫刻に座る姿が美しくて印象的でした。
| 固定リンク
トラックバック
この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/144633/14316241
この記事へのトラックバック一覧です: 絶対の愛:
» #39.絶対の愛 [レザボアCATs]
キム・ギドク監督2006年。韓国映画界引退宣言後の作品。精神的に疲れていて、すごく見たかった、キム・ギドク監督作品。連日のスーパーギドクマンダラ(@ユーロスペース)では満席だったりして、どれだけ混むかなあ、と思ったら、それほど混んでいなくて、「なぜ新作な....... [続きを読む]
受信: 2007年3月24日 (土) 23:10
» 『絶対の愛』 TIME [かえるぴょこぴょこ CINEMATIC ODYSSEY ]
愉快、痛快。ギドクの独創性は、時と共に衰えることはないのか?
セヒは、つき合って2年のジウに飽きられてしまうことを不安に思い、美容整形手術をして別人になることを思い立つ。キム・ギドクワールドの魅力はその強引さ。主人公達はいつも思い余って、普通ではありえないような過激な行動をとる。そんなわけないじゃーんとツッコみながらも、その人の一途な思いに胸をうたれて、屈折した形でしか愛を表現できないことにむしろ感銘を受けてしまうのだ。ギドクの強引さには屈服せざるを得ないのだ。
もともとの設定が非現実的... [続きを読む]
受信: 2007年3月29日 (木) 18:01
» 絶対の愛 [八ちゃんの日常空間]
TIME
[ユーロスペース/SC2/ミニシアター回数券]
公式サイト
『Super Ki-DUK Love Story』
Q-AXでの観賞の次は、その上のユーロスペースです。海でのはなし。以来かなぁ。先日までこの作品の公開を記念してキドク作品を一挙上映していたけど、急に忙しくなってちっとも....... [続きを読む]
受信: 2007年4月 7日 (土) 22:38
» 絶対の愛 [とにかく、映画好きなもので。]
もし、彼が自分の顔や容姿に飽きてしまったら・・・そんな事を思う女性が取った行動とは。
永遠に愛し合いたいのに、時は無謀にもフェイスという容姿を年齢による変化を除けば変える事はありません。
交際を始めて2年になるセヒ(パク・チヨン....... [続きを読む]
受信: 2007年4月 8日 (日) 21:39
» キム・ギドク監督の「絶対の愛」を観た! [とんとん・にっき]
映画のタイトルが「絶対の愛」、原題は「Time」?「奇想か。 愛の深淵か。 えっ!? 『整形返し』?」。今年の初め頃、渋谷のユーロスペースでもらった真っ赤な「チラシ」。詳しい内容は判らず、キム・ギドク監督の「絶対の愛」を観た!彼の作品を観るのは、偶然観た「う... [続きを読む]
受信: 2007年4月15日 (日) 11:15
» 『絶対の愛』 [分太郎の映画日記]
整形手術を題材にしたキム・ギドク監督の最新作。 韓国映画界の異才キム・ギドク監督は、斬新なテーマ・題材を豊富な想像力と独特の感性で映像化、年に1作というペースと高いクオリティには毎回驚かされるが、今回は美容整形を題材に究極の愛とは何かに取り組んだ問題...... [続きを読む]
受信: 2007年4月18日 (水) 09:20
» 毎日同じ姿でゴメンね [CINECHANの映画感想]
92「絶対の愛」(韓国・日本)
付き合い始めて2年になるセヒとジウ。互いに深く愛し合っているはずだったが、時が流れるにつれ、セヒは不安になっていった。彼は自分に飽きてくるに違いない。変わり映えのしない自分の顔に飽きてくるに違いない。不安感からセヒは、ジウが他の女と話したり、見るだけで嫉妬心を募らせていった。
ある日セヒは忽然と姿を消してしまう。携帯電話も繋がらず、ジウはセヒを見つけることができない。
セヒを見つけることを諦めかけていたジウの前に魅力的なウエイトレス、スェヒが現れ...... [続きを読む]
受信: 2007年4月21日 (土) 17:06
» [ 絶対の愛 ]永遠の愛を求めるがゆえに・・・ [アロハ坊主の日がな一日]
[ 絶対の愛 ]をユーロスペースで鑑賞。
1年1回、キム・ギドグ監督作品を観ないと、
その年はなんだか物足りない。僕にとっては、
ギドク作品は一種の中毒になってしまっている。
[続きを読む]
受信: 2007年4月26日 (木) 07:23

コメント
こんにちはー。
とってもご無沙汰をしてしまいました。
私もボチボチ更新マイペースに、マイノリティーバリバリな記事ばかりで受身でございました。
¥2,660っていうのは随分半端だな~と思ったのですが、ミニシアター券でしたか…。二枚分でもいいくらい堪能した、ということでせうかね。私はついに会員になっちまいました。笑
ところで。
スェヒの号泣シーンにはぐらぐらきましたです。
容姿が変わったことで心のありようも前向きになれるなら、整形もありだなと思えるのですが、結局裏目裏目に事がまわってる感じがまた哀れでした。
彫刻公園のオブジェ達は色んな愛を形にしたものなのか、とっても興味がわきました。彫刻は永遠に残っていきますものね。幾度となく訪れたくなる彼女達の気持ちもなんとなく察します。
ギドクワールド、ホントはまってしまいますよ。鰐も見たくなりました。
投稿 シャーロット | 2007年3月24日 (土) 14:35
再び失礼します。
あの、TBがどうも不調です…
いっぱいくっついていたら消してください。
でも結構何度も試してるんですが~。泣
こちらに来て下さってTB&コメントありがとうでした。
また挑戦しますー
投稿 シャーロット | 2007年3月24日 (土) 20:27
シャーロットさま
こんにちわ。コメントありがとうございました。
このところ、もの凄くTBが不調みたいなんですよね。どーしたものか... ご迷惑をおかけします(汗)。
そうそう ¥2,660 は、回数券2枚分のつもりです。何か最近、金額を付ける基準がよくわからなくなっています(笑)。
いやぁ、こんなにハマるとは自分でも驚きました。さすが、ギドク!ラブストーリーというと、どこかお手軽なイメージが強いんですけど。本作のように、奥が深いものだと素直に堪能できます。GWのギドク・マンダラ、是非とも参加しようと思っています。
スェヒの号泣シーン、なかなか頭から離れませんゎ。更に後半で、ばっちりメイクをグシャグシャにしながら鼻水垂らして泣くシーンもインパクトありました。観に行って本当に良かったと思います。
投稿 隣の評論家 | 2007年3月24日 (土) 20:43
となひょうさん、こんばんは。
となひょうさんも、ハマられましたか!本当に、呆然としッ放しですよね。
なんなんだ!この次に、これが来る!そして、その次に、これか!
と、次から次へとビックリする感じが、もう、すごすぎて、圧倒的なんですよね。
↑こちらで、となひょうさんもギドクマンダラに参加すると聞いて嬉しい私です♪
ちなみに、私のとなひょうさんへのオススメは、『悪い男』です。
となひょうさんの評価は、ミニシアター回数券2回分でしたか。
私も、今回で会員になりました。たったの1200円だったとは知らなかったんですよね。ヴェーラに行きまくってた頃に会員になっていれば、とっくに8回超えてたのに・・(8回で1回タダなんですよね)
とかいいつつ、もう5回逝ってます・・・。
投稿 とらねこ | 2007年3月24日 (土) 23:26
とらねこさま
TB&コメントありがとうございます。
¥2,660 ですけど、何か後から気が変わって ¥3,000 に変更しました。(シャーロットさんにも)ゴメンなさい!!!
観る前から一杯期待していて、見た後やっぱり良かった。
実は余り期待していなかったけど、見てみたらもの凄く良かった。
同じくらいの評価でも、後者の方が自分のハートにはグググーッとインパクトが残ります。という訳で、本作は正に後者でした。今月観る中では、ダントツのナンバー1確定ですー。
ギドク・マンダラ、行きますよ。『悪い男』は、かなり以前から「見たい」と思っていた作品だったので。まずは、トライしてみます。時間が作れれば、もう1つくらい行きたいんですけどね。どうなるかなー
投稿 隣の評論家 | 2007年3月25日 (日) 21:41
『足湯合コン』------なんでしょう、これ(笑)。
まだ日本ではないですよね。
というか、導入したら流行るのかな?
そう言えば先日、ショッピングモールの広場に
温泉の湯を入れて
足を付けさせる催しをやっているのを見かけました。
若いカップルもやっていたっけ。
投稿 えい | 2007年3月26日 (月) 10:46
えいさま
コメントありがとうございます。
字幕もしっかり『足湯合コン』になっていたのには笑いました。韓国では流行っているのでしょうか。
ギドクって、やっぱり凄いですね。こんなにハマるとは、感服しまくりでしたよ。ギドク・マンダラ、今から楽しみでなりません。
私は、ハリウッドでたくさん作られる、誰でも気軽に楽しめるラブ・ストーリーって、見終わった後に忘れてしまうことが多いです。本作くらいに究極までいっていないと、心に刻まれないと言うか。どうせ見るなら、いつまでも忘れられない作品と出会いたいですー。
投稿 隣の評論家 | 2007年3月26日 (月) 20:03
あにょ。
本作が満点とはちょっと意外な気がしましたが、いえ、かねがね、激しくて衝撃的な作品(去年の紀子の食卓から鬼が来たはもちろん血と骨やグアンタナモやラストキングなどなど)はとなひょーひょーの得点が高いなーと思っていたことからすると、やっぱり必然、納得でござる。
私個人的には、感情を顕にする主人公の物語よりも、台詞少なめで詩的な香りのするギドク作品の方が好みなんですが、おもしろいおもしろくないでいったら、これはすげーおもしろかったです。
ヘソで茶をわかすほどのおもしろさ。カエルにおへそはないけれどー。
私はどちらかというと、ギドクワールドは設定や物語展開が特異すぎるので、あまり恋愛映画を見るような感覚で鑑賞したことはないんですけど、となひょーさんも皆さんも結構ラブ・ストーリーというジャンルでとらえその愛に向き合っているところが興味深かったです。(自分が斜めから見すぎ?)
私もギドク・マンダラは行きますよー
投稿 かえる | 2007年3月30日 (金) 14:02
かえるさま
TB&コメントありgとうございます。
あにょはせよ~ん。
>感情を顕にする主人公の物語よりも、台詞少なめで詩的な香りのするギドク作品
詩的な香り ←おおおおお、例えば、どんな作品があるのでせうか。詩的というと、思わず園子温を思い浮かべてしまうとなひょうです。ギドク作品って好きだと言いながらも未見のものがあるので。ギドク・マンダラには絶対に参加するですにゃん。GWの昼間にやってくれてありがたや~ありがたや~。
そうそう。かえるさんのご指摘通り、この作品をラブ・ストーリーとして捉えたとなひょうでござるが。世間一般的な視点からだと、ラブ・ストーリーとしては独特で斜め目線のタッチなのかと思ってました。
なので、かえるさんのレビューを読んで斜めだと感じたりはしませんでしたよ。
ギドク・マンダラ、かえるさんは何をご覧になるのでしょう。結構、たくさんのブロガーさんが集まったりするのかしらん。
投稿 隣の評論家 | 2007年3月30日 (金) 20:56
こんばんわ☆隣の評論家さん。
満点・・・この作品、僕も今年鑑賞した作品の中でも群を抜いてます。
ギドク監督はどこまで辿り着くのやら。
セヒ=スェヒの感情の行き場の無さといったら、壮絶でした。仮面は笑っているけど、その下の表情は泣いているシーンなどは、相反する彼女の感情がスクリーンにほとばしっていて驚愕ものでしたね。
ジウという男性像は僕も好感が持てました。この役者さん非常に良い表情をしますよね。突然いなくなった女性への未練を持ちながらも、恋路をなぞろうとするシーンや、ある種の影に怯えていくシーンなどは必見。
ラストのループは見事でした。この作品、語りたい事が多すぎて困りそう。DVD出たらまた観たいと思います♪
投稿 orange | 2007年4月 8日 (日) 21:38
orangeさま
TB&コメントありがとうございます。
ギドクは、やっぱり鬼才ですね。平均的な天才よりも、鬼才に惹かれるてしまうのであります。
スェヒの号泣シーンは、今だに雲を掴むような感じで。全てを理解しきれていないながらに、何となく共感できてしまうのでありました。
やっぱり、【永遠の愛】だなんて言葉では説明しきれないようなテーマが盛り込まれていると、ついつい作品にノメリ込んでしまいます~
私も、ジウというキャラクターは魅力的に見えました。そうそう、演じた彼が絶妙な表情をしていたと思いましたー。
>ラストのループは見事でした。
何よりも、『ラストのループ』という表現を使ったorangeさんが見事だと思ったりしたのですがー。
私も、この作品は印象深いです。上半期でベスト1だなー この作品を超える秀作には出逢えるのかしら~
投稿 隣の評論家 | 2007年4月 9日 (月) 19:54
こちらもお邪魔します。
満点!! かなりやられたようですね。
ギドク作品はアート系という印象があって、避けていましたが、これは設定からして面白そうなので、観ました。
なかなか面白い作品で、観やすくもありましたよ。
正に究極の愛という感じです。
ラストがちょっと理解しきれず、戸惑ってはいるんですが。
よく服装を変えれば気分が変わると言いますが、顔を変えてしまったらどんな感じなんだろう? スェヒのように変わってしまうもんなんですかね?
投稿 CINECHAN | 2007年4月21日 (土) 17:13
CINECHANさま
TB&コメントありがとうございます。
本作は、いい意味で鑑賞前の予想を裏切られたもんで。満点をつけさせて頂きました。
冷静に考えると、設定が面白いですよね。あり得ない。そこを気にせずに、すっかり入り込んでおりました。
ラストは何だか曖昧だった気がしますけど、スェヒのアイデンティティーが薄まっていくようにも感じてしまった私。
顔を変えてしまうと、気分転換では済まないのかもしれないですねぇ。何か、恐ろしいですー
投稿 隣の評論家 | 2007年4月22日 (日) 11:03