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2007年3月25日 (日)

約束の旅路

「約束の旅路」 
<VA, VIS ET DEVIENS>/製作:2005年、フランス 140分Yakusokutabiji    
監督、脚本:ラデュ・ミヘイレアニュ 出演:ヤエル・アベカシス、ロシュディ・ゼム、シラク・M・サバハ、モシェ・アガザイ、イツァーク・エドガー、ロニ・ハダー、ラミ・ダノン
2007.3.25 劇場前売り鑑賞券¥1,500にて鑑賞
隣の評論家はいくら?→¥2,800で妥当 / 評価:4.8★/5点満点★

「行け、生きろ、生まれかわれ―――」

少年は生きる。故郷から遠く離れ 真実の名前をかくして―――。

感無量。

1984年、スーダンの難民キャンプ。エチオピアのユダヤ人をイスラエルに移送する【モーセ作戦】が施行された為、キャンプに居たエチオピア系ユダヤ人はイスラエルに脱出できる。そんな中、実際にはキリスト教徒である親子の母親が、息子にユダヤ人と偽って生き延びるよう促す。「行きなさい。生きて何かになりなさい。」 と、幼い息子の背中を押す。孤独感と戸惑いに襲われながらも、イスラエルに辿り着いた一人の少年が、故郷を想い再び母に会える日を夢見て逞しく成長していく姿を追う。

この時、アフリカで何が起きていたのか。宗派の違いや信仰心への理解が薄い私にとっては、スーッと入っていけない背景でもありました。鑑賞後、パンフレットをじっくり読んでみて、ようやく本作の素晴らしさを実感できた次第です。それと、全体的に白い色合いの画面が多いので、字幕が読めない場面が結構ありました。コストの問題とかもあるとは思いますけど、もう少し字幕に工夫できなかったのでしょうか。

原題の<VA, VIS ET DEVIENS> とは、日本語で「行け、生きよ、生まれ変われ」という意味だそうです。イスラエルに渡って〈シュロモ〉と名づけられた9歳の少年は、ある夫婦に養子として迎え入れられます。褐色の肌を持つシュロモは、白人の家族には特に問題なく受け入れられますが。学校では、差別や嫌がらせを受けていたようです。その具体描写は特に無く、ある少女がシュロモの手を汚いモノの如く触るシーンが1つあるくらい。それでも、シュロモにとっては大した問題でもないように見えました。少年にとって気がかりなのは、「自分は何者であるのか」という迷いのみ。靴下と靴を履くこと、ベッドで寝ること。私達にとっては当たり前の事が、シュロモにとっては馴染めない違和感に満ちた生活だったようです。外で裸足になったり、夜は床に雑魚寝する姿を何度か映し出すのが印象的でした。幼くして、とても苦しい想いをしていたのかもしれませんが。僕は元気で生きていると母に手紙を書かなくちゃ」 というセリフに感銘を受けました。こんなにも聡明で、生きる強さに満ちているシュロモ少年の姿は、美しく輝いて見えました。

シュロモは3人の〈母親〉と過ごす事になります。私は、画面から溢れ出る計り知れない程の【母性愛】に感動しました。本当の母親は、息子を大切に思う余り、無理矢理イスラエルに旅立たせる訳ですが。突き放すようにも取れる選択には、深い愛情が見て取れました。「行きなさい、生きなさい。」 という言葉の重みは、シュロモのみならず観客の心にも深く刻まれる事は間違いないでしょう。出番は少ないながらに、脱出時にシュロモの母役を演じてくれた女性にも深い思いやりを感じました。病に倒れ、死ぬ間際にシュロモに偽りの身分と同時に本当の家族を忘れるなという言葉を残すシーンも印象的でした。そして何よりも、イスラエルでシュロモを養子として迎え入れる養母の存在が大きかったです。シュロモは大きく成長してもなお、養父母をファースト・ネームで呼び続けます。母と呼ばれなくても、当然のように愛息子として接する養母でしたが。後に、本当は養子を受け入れる事には反対だったと告白するシーンがありました。あらゆる困難からシュロモを守ろうとした姿は、ごく普通の母親でしたが。胸の内は複雑で、口には出せない葛藤があったようです。それでも、シュロモを見守る眼差しは一直線で、とても深くて美しい母性愛に溢れていました。

やがて大きく成長したシュロモは、白人の女性と結婚します。10年間シュロモを想い続けたサラという女性、彼女もまた【母性】を発揮してシュロモを包んでくれることでしょう。故郷への強い想いを胸に、パリで勉強して医者を目指すシュロモ。やがて一児を出産したサラと電話していた場所は、アフリカの大地。医師となり難民キャンプを訪れたシュロモが迎えるラストシーンの感慨深さに、涙が込み上がり止まりませんでした。苦悩と困難に満ちているようでも、シュロモは人生を謳歌しているように感じるから不思議です。自分自身も含めて、日本人の生活って恵まれているようで足りない部分もあるように感じたり。欲しい物は割りと簡単に手に入るという暮らしは、本当に幸せなのでしょうか。貧しくてもシュロモのように心が豊かで生きる力に溢れている方が幸せに見えたりもしました。生命の尊さが軽視されていると感じる事件が多い中、改めて生きている喜びを実感させられた1本でした。

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コメント

続けて失礼します。
(少しネタバレ)

『ガメラ/大怪獣空中決戦』か
はたまた『DEAD OR ALIVE 犯罪者』か
はたまた『ハッピーフィート』か?

なんてそんなたとえは不遜ですが、
一気に天へ突き抜けるあのカメラ移動は衝撃でした。

投稿: えい | 2007年3月26日 (月) 10:52

えいさま
コメントありがとうございます。
まず何よりも、おススメして頂いて本当にありがとうございました。観に行って良かったと心から思いました。

えいさんが挙げていらっしゃる作品では『ハッピーフィート』にしか反応できませんー
でも、ラストは内容としても感動的なのに。あのカメラ移動は、胸に沁みました。私が見た時は、想像していたより混んでいましたが。これからも多くの方がご覧になってくれると私も嬉しいです。

投稿: 隣の評論家 | 2007年3月26日 (月) 20:22

こちらにもお邪魔しますです。
母性愛もそうだけど、父性愛もかなり感じました。
あのおじいちゃん(養祖父)も優しげでしたよね。
手紙を書かされる宗教指導者も。養母がシュロモを欲しがったのではなく実は養父がなにより彼を欲しがったというところには、もう涙でした。
かなり重たいのにユーモアもちょっとあったりして、しばしば肩の力を抜けるシーンがあるのも救いでした。
ラブレターも母への想いを綴ってるんだなあと思うと、グッときちゃいますー。
「感無量」って・・・ホントですね。

投稿: シャーロット | 2007年4月13日 (金) 00:21

シャーロットさま
こちらにもコメントありがとうございます。
先程、シャーロットさんのところに顔を出して来ました。この作品は、語り出したら止まらないものですから。何だか延々とコメントを入れてしまいました(恥)。

>母性愛もそうだけど、父性愛もかなり感じました。

!!!しまった、母性愛ばかりに喰い付いておりました。
そうそう、おじいちゃん、出番は少ないながらにとても素敵でした。

>ラブレターも母への想いを綴ってるんだなあと思うと、グッときちゃいますー。

今思い返してみても泣けてきます。ちょっと逸れるかもしれないけど、手紙ってやっぱり素敵ですね。

固いこと言いっ子なしにしたいんですけど。鑑賞中は、字幕が全然読めない場面が多過ぎました。配給側は、そこまで気を配る訳にはいかないんでしょうか。(コストがかかるのかな) なので、一部イライラと見ていた時間もあった為、満点にはしませんでした。でも、内容としては素晴らしい作品で感服しまくりでございます。

投稿: 隣の評論家 | 2007年4月13日 (金) 21:49

こんにちは。お邪魔します。
私もやっとみましたです。
本当に感無量でしたね~ 感動しました! 賢い、子育てのお手本のような大人たちを見習わなくてはとおもいました。

>それでも、シュロモを見守る眼差しは一直線で、とても深くて美しい母性愛に溢れていました。

あの視線に強い愛を感じましたよね。全編目をウルウルさせながら見ました。

投稿: jester | 2007年4月18日 (水) 08:16

jesterさま
TB&コメントありがとうございます。
こんにちわ、お久し振りです♪

本当に素晴らしい作品でしたねー
ところで、jesterさんの記事を拝見して知ったのですが、6月まで公開しているんですね!周囲の人にススメる時に、「GW一杯はやっているみたい」と嘘を言ってしまった。しかも曖昧だし(笑)。

この作品を見たという方がいるだけで嬉しく思います。岩波ホール、私は今回初めて行きましたけど、なかなか素敵なラインナップですよね。今後も注目したいと思います。

投稿: 隣の評論家 | 2007年4月20日 (金) 20:25

沢山トラコメ有難う!(嬉)
今のところお互いにスムースに行ってるみたいですね(^^)v
岩波ホールは良い映画掛かるので好きなんですが、我が家からは遠いし劇場の状態が良くないのでなかなか足が向かないんですが、これは頑張って行って良かったー♪
愛ですよね、愛! 
子供のいない家庭ならいざ知らず、自分の子が二人もありながら養子を迎え大事に大事に育てるなんて!もう本当に頭が下がる思いで観ていましたよ。
ラストの実母の雄たけび(違)にも激しく心揺さぶられましたよね~
仰るとおり、本当に観終わった瞬間よりも日が経つごとにジワジワと「良い映画だった」と思える作品だったと思いますー。

投稿: マダムS | 2007年4月20日 (金) 22:15

マダムSさま
TB&コメントありがとうございます。
岩波ホール、私は初めて行ったんですけどね。その日はどしゃ降りの雨でしたけど、劇場はほぼ満席だったんですよねん。元々、岩波ホールで上映するラインナップには興味がある方も多いと思いますけど、口コミで本作の評判が広がっていっているのなら嬉しいですね。
この作品から汲み取れる素晴らしさは、ものすごい一杯ありますね。
マダムさんの挙げている、既に子供がいるのにも関わらすシュロモを引き取る義父母の心の広さには感動するし。ラストの実母の叫びには涙が止まりませんでした。
まだまだ新党していくといいですね。多くの方にご覧になって欲しいと思います。

投稿: 隣の評論家 | 2007年4月21日 (土) 21:03

隣の評論家さん☆こんばんわ。
大変、コメント&TBのお返し遅くなってしまいごめんなさい・・・

冒頭とラストがこれほどまでに、スッと繋がり言葉にならない程の歓びを感じた作品でした。
シュロモが歩んできた道のりは決して簡単な事ではないのですが、ラストの抱擁は今まで彼を守ってきた、そしてこれからも守り続ける母達への思いが凝縮されたようでしたね。
やはり胸が締め付けられたのは、養母との一時の別れのシーンでしょうか。見知らぬ子供を受け入れると同時に、自分の子供への影響も恐れていた母親がやっとここで、真実を吐露しながらも、シュロモを育てた事への静かな感謝のようでもありました。
それは大変、厳しい思いであったと思いますが、シュロモもまたその思いを返すほどに成長し、母親達への思いを重ねてきたからこそ報われる幸せかなと思いました。

冒頭の母の思い。無表情だけど、作品を観終わった後に海よりも深いものを感じてしまいました。同じく感無量です♪

投稿: orange | 2007年5月 6日 (日) 20:46

orangeさま
訪問ありがとうございます。
公開規模は小さいけれど、この作品は出来るだけ多くの方に見て欲しいですね。私も観に行って本当に良かったです。人生観を少しだけ変えたところもあって、忘れられない1本です。
養母との別れのシーンは、美しかったですね。あの別れの抱擁は、ひと際輝いて見えたりなんかして。。。

>冒頭の母の思い。無表情だけど、作品を観終わった後に海よりも深いものを感じてしまいました。

ああ、その『海よりも深い』というフレーズが素敵ですね。
何か、今でも思い出して温かい何かが流れ込んでくる錯覚を起こしてしまいます。

投稿: 隣の評論家 | 2007年5月 7日 (月) 20:30

ドモドモ-♪

公開早々に観に行かれたのですねー
自分はこの間やっとこさ観に行きましたですヨ。
岩波ホールは椅子カチカチなのでなかなか行く気になれず、何時も公開終了間近に行くことが多いです。フ・・・

で、映画ですけど、、
うおお、4.8ですか!分かります!分かりますとも!!!
まさに“感無量”の一言です。
母の愛もひしひしと感じられましたね。
自分の存在意義を見失ってしまった彼だけれど、苦悩の末に光が見えて来てホッとしました。
“モーゼ作戦” のことも今回初めて知った次第で、自分の無知さが恥ずかしいであります・・・・・

「フランドル」今日観て来ました!
レヴューを書いてまた後から来ますねっ

投稿: Puff | 2007年5月22日 (火) 18:53

Puffさま
TB&コメントありがとうございます。
私は、この作品にて岩波ホール初体験でした。確かに、座り心地は微妙な感じですよね。出来れば、混んでいない時にゆったりと座りたいですよねん。実際、私が見た時は悪天候にも関わらず、ほぼ満席でしたー。

で、で。この作品ですけど、本当に素晴らしかったですよねん。
シュロモの人生は一見すると過酷なんですけど、とても豊かで輝いて見えたんですよね。羨ましく思えるくらいに。
豊かな国・ニッポンで生きている自分。物が溢れる幸せよりも、心が豊かになる幸せの方が何倍も素敵だなんて思いました。
ゆったりとではありますが、今までの人生観をも変えていくような作品でした。これからも、それ程に素敵な作品に出逢えたらいいなと思いました♪

投稿: 隣の評論家 | 2007年5月22日 (火) 21:40

今日もこんばんは^^
TBコメントありがとうございました。
おお、えいさんが『Dead or Alive犯罪者』に言及してますね。
なるほど、カメラの飛翔・・・そこまで考えていなかったです。

イスラエルに来たばかりの少年シュロモは、物質的に満たされていても心が満たされていなかったですね。
そのシュロモを、養母が包み込む愛情で彼をかばってくれたり、心の底から愛してくれましたよね。
シュロモがまっすぐ育ったのも、この養母のおかげと言っても過言ではなかったですよね。
正直、肩を上げ下げして、養母とダンスするシーンは、焦りました。
まさか、あのまま、養母と恋愛関係になってしまうというひねりがくるのかと、思ってしまいました。
・・・というのは、不謹慎なコメントでした。すみません・・
(でもちょっと思いませんでしたか?)

投稿: とらねこ | 2007年5月30日 (水) 22:24

とらねこさま
TB&コメントありがとうございます。

>養母と恋愛関係になってしまうというひねりがくるのかと

!!!そこまでは思わなかったけれど、確かに青年に成長したシュロモは何か美し過ぎたようにも感じられるかなぁ~
込められたテーマは、どちらかと言うと重たい話なのに。宴のシーンの明るさには、こちらまで元気をもらえる気がして好きでしたわ。

これは本当に忘れられない作品でした。鑑賞直後よりも、翌日またその翌日と、後になってからの方が心地良い余韻が残っていたりして。こんなに素晴らしい作品なのに、字幕が読み辛かった点は私としてはマイナスでしたねぇ。DVD化する際には、是非とも一工夫を加えてくれればいいのになぁと思っています。

投稿: 隣の評論家 | 2007年5月31日 (木) 20:45

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