14歳
「14歳」
製作:2006年、日本 114分
監督、主演:廣末哲万 脚本:高橋泉 出演:並木愛枝、染谷将太、小根山悠里香、笠井薫明、藤井かほり、渡辺真起子、石川真希、香川照之
2007.5.20 劇場前売り券に当選¥0にて鑑賞
隣の評論家はいくら?→¥2,500で妥当 / 評価:4.3★/5点満点★
「窒息しそうな毎日を変える方法がある」
14歳だったことを決して忘れない。
第16回PPFスカラシップ作品。PPFとは《ぴあ フィルム・フェスティバル》の略だそう。他にも幾つか国際映画祭に出品していて、ロッテルダム国際映画祭では最優秀アジア映画賞を受賞したそうです。チラシを手にした瞬間から、とても気になっていました。
公開2日目で、客入りは半分程度でしたが。私は、グッと心を掴まれました。何だか重苦しいし地味だしで、多分またしても《一人ぼっちレビュー》になる気はしますけど。何に惹かれたのか自分なりに振り返りながら書いてみたいと思います。
【14歳】達の微妙な日常が淡々と描かれていく。個人的には不安で一杯の【14歳】たちよりも、少し危うい【14歳】たちを前にどう対応していいかわからずに彷徨う大人たちの姿を描いている作品という印象を受けました。
普通の会社員である杉野(廣末哲万)は、ひょんな事から得意であったピアノを14歳の少年に教えることになります。杉野や同僚が、自分が14歳だった頃を振り返る場面もありますが。メインテーマとして私の心を捉えたのは、【14歳】たちの教師が戸惑う姿でした。46歳のベテラン教師・小林(香川照之)は、校則違反をハッキリと指摘して注意する厳しい教師ですが。生徒達の目線は冷ややかで、女生徒の手を掴んだ小林を変態呼ばわりしたりします。「憲法では《表現の自由》を唱えているじゃないですか」とクールに逆らう生徒の姿には唖然となりました。だって、小林みたいな教師は、私の中学・高校時代には各校に一人は必ずいるタイプの先生でした。先生に逆らう生徒の姿も、もう少し子供っぽくてわかり易いものだったんだけどな。小林の教育方針は浮いていくばかりで、生徒にどこか恐怖に近い感情を徐々に覚えていくようにも見えました。「彼の目を見て注意することができません」というセリフも強烈に印象に残りましたけど、その注意する場面も忘れがたいです。目を逸らして窓に視線を移すと、小林をジッと見据える生徒の姿がクッキリと窓ガラスに映ります。慌ててその窓を開ける小林。やがて小林の精神状態も不安定になっていきます。
私にとって本作の主役は、26歳の女教師・深津(並木愛枝)の姿でした。一見、生徒に理解を示す精力的な先生ですが。彼女は14歳の時に、強烈な体験をしていました。学校の飼育小屋への放火を疑われ、詰め寄られた際に教師の背中を彫刻刀で刺していたのです。精神科でカウンセリングを繰り返し、立ち直った彼女が選んだ職業は、《中学校の教師》でした。「生徒の中に過去の自分を見出して助けようとしているのであれば、教師は辞めた方がいい。」と精神科医に言われた時の彼女の表情。12年経っても、14歳の時の呪縛から解き放たれていないようでした。14歳の頃から《炎》に救いを見出していた深津。理科室で「紙を燃やすとスッとする」と言う。ふとしたキッカケから生徒の《イジメ》の対象になってしまった彼女は、再び紙を燃やし始めました。ストレス解消としては《炎》はかなり危険ですよね。深津のシーンで最も忘れがたいのは、ペットのハムスターの籠の前でサラダ油を手にハムスターを見下ろす彼女の姿です。多分、無意識だったのだと思います。ちょうどその時、電話が鳴り、深津は正気に戻りましたが。意識が飛んでしまうくらいに追い詰められている彼女の姿には、心が痛くなりました。
【14歳】たちが抱える問題も、気持ちのいいものではありません。嘘を重ねる少女、特定のクラスメイトをいじめる少年、勉強が追いつかない少女。教室で起きた《カッター事件》や、インターネットを通じて犯罪まがいの事件を起こす少年の姿。どれもこれも難しい問題で、一言で簡単には片付けられないと思いました。だからこそ、苦悩する教師たちの姿が強烈に心を捉えてしまったのかもしれません。私は、教育者でもなければ親でもありませんから。この映画から何を汲み取ったらいいのか難しいところなんですが。【スパルタ】か【ゆとり】か、どちらがいいとも言えませんが。教師という職業は大変だなと思いました。教える立場であっても、まだまだ未熟な大人だってことかもしれません。
パンフレットを購入しなかったので詳細に渡るキャストは確認できませんでした。(香川さんしか認識できず) 実は、たった1人だけオアシス的なキャラクターが居ました。吹奏楽部に所属している島村さんという女生徒。想いを寄せる男子生徒に告白するシーンがあります。キッパリ断られてしまいますが、彼女だけが本来【14歳】に抱く若々しくて清々しいイメージを体現してくれました。彼女にだけは、温かい視線を投げかけての鑑賞となりました。
どちらかと言うと重苦しくて、「窒息しそうな毎日を変える方法がある」というキャッチは嘘だという印象でした。見ていて窒息しそうになりますが、変える方法なんて見出せませんでした。けれど、忘れ難い作品です。廣末哲万×高橋泉というタッグは初めてではないそうです。前作『ある朝スウプは』は未見なので、是非ともチェックしてみたいと思います。
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» 『14歳』 [ラムの大通り]
----この映画「今年最大の問題作」と
書いてあったけど、そんなにスゴいの?
「チラシの言葉を借りれば
<容赦なく>スゴいね」
----どういうところが?
「日本の映画って戦後は民主主義の発達とともに、
ヒューマニズムが美徳として礼賛されてきた。
ところがこの映画は、前提として信じられてきたはずの
ヒューマニズム=オールマイティに冷や水を浴びせる作品となっているんだ」
----う〜ん。よく分からないニャあ。
「この映画は現在14歳でそれぞれの問題を抱える生徒たちと、
かつて14歳だったときのできごと... [続きを読む]
受信: 2007年5月20日 (日) 23:17
» 14歳 [シャーロットの涙]
かつて私も14歳だった・・・この時何を想い、いったいどうだったんだろう。
思い出せるようで思い出せない時の流れを疎ましく感じながらも、胸がヒリヒリと痛い・・・ [続きを読む]
受信: 2007年5月27日 (日) 14:46
» 『14歳』 [かえるぴょこぴょこ CINEMATIC ODYSSEY ]
リアルな痛みにがんじがらめ
中学教師の深津稜は、偶然に中学時代の同級生の杉野と12年ぶりに出会う。リアルな学校の日常。淡々と映し出される14歳の日常と昔14歳だった26歳の2人の日常。始まるやいなや緊迫感に包まれて、心が釘付けになる。のめり込んだまま、息苦しさとヒリヒリと痛みを感じ続ける。『ある朝スウプは』 がそうだったのと同じように、観ていて楽しいものではないけれど、見ごたえを感じる痛烈な作品。
中学生の頃、思った。中学校の先生だけにはなりたくないって。そんなことを思い出した。中学生に... [続きを読む]
受信: 2007年6月 1日 (金) 11:22
» 「14歳」:茅場町バス停付近の会話 [【映画がはねたら、都バスに乗って】]
{/kaeru_en4/}ずいぶんしゃれた建物だな。
{/hiyo_en2/}トイレよ。
{/kaeru_en4/}うそ!
{/hiyo_en2/}公衆トイレよ。
{/kaeru_en4/}へー、やっぱり都会のトイレは違うねえ。俺のトイレの思い出といったら、級友を押し込んだ中学校の小汚いトイレくらいなもんだもんな。
{/hiyo_en2/}あなた、いじめっ子だったの?
{/kaeru_en4/}いや、ただのいたずら坊主だ。映画の「14歳」に出てくる子どもたちみたいな陰湿なことはしたことないぜ。
{... [続きを読む]
受信: 2007年6月 3日 (日) 22:28

コメント
こんにちは。ひとりぼっちじゃないですよ~。
初日初回で見てきちゃった。笑
いえ、気合が入っていた訳ではないのですが、一応これでも中坊の母ですし…何故かとても気になっておりましたです。
香川さんがでてるから隣の評論家さんは絶対見に行ってるだろうと思ってました。相変わらず存在感が強烈。自分を殴っている姿がなんとも哀しく胸に響きました。ホント窒息しそうになりますね。
映画的なことはわからないけど、インパクトある作品だったと思います。
投稿 シャーロット | 2007年5月27日 (日) 14:38
シャーロットさま
TB&コメントありがとうございます。
初日初回ってことは、舞台挨拶かなんかあったのではないですか?監督さんの話、聞いてみたかった気もします。
重たくて息苦しい作品ではありますけど、私はこういう作品こそ色々な方の感想が聞いてみたいと思っています。でもやっぱり、関心を持つ人は少ないみたいですね。そんな展開になると思っていたので、気に入らなかったとしても本作を見た人が一人でも居るだけで何か嬉しく思ってしまいます♪
香川さんは小さい役でもたくさんの作品に出演しているので。全て追いかけるのは難しかったりもしますけど、本作は必ず観ようと早くから決めていました。小林先生が壊れゆくシーンは鳥肌が立ちました。生徒役の彼も本気で怯えてしまったのではないですかね。忘れ難いシーンでした。
投稿 隣の評論家 | 2007年5月27日 (日) 20:44
私もここ1,2年に知り得たという感じですが、PPF出身の監督って、要注目ですよね。
あの園 子温監督もそうですよねー。
『ある朝スウプは』はレイトだったから、ご覧になった人は少なかったと思われ。
こちらは男女ものですが、同じように緊迫感満点で見ごたえありですー。
こういう演出は基本的に好きです。
痛いけれどリアルですよねー
投稿 かえる | 2007年6月 1日 (金) 13:12
かえるさま
TB&コメントありがとうございます。
PPF出身の監督さん、私は気になり出したのが遅いんですけど、今後も注目してきたいと思いました。
どうにも重苦しい作品でしたけど、「だから嫌」で済ますのはもっと嫌だなぁなんて思ったりしました。中学教師、私も決してなりたいとは思いません。
私が14歳の頃は、生徒同士の衝突やいじめなどはもっともっとわかり易いものでした。先生に反抗する生徒の態度とか、ジメジメしていなくてカラッとしていたんだけど。本作を見ていたら、私も中学生が怖いと少し思ってしまったりもしてー。
最近の未成年による異常な犯罪も、フィクションのように理解不能だったりしますけど。それでも14歳たちと何らかの形で少しでも向き合っていける世の中にしたいとか、真面目に考えてみたりもしました。
あああ、見てくれた人が一人でも増えただけでもの凄い嬉しく思います。
投稿 隣の評論家 | 2007年6月 2日 (土) 19:28