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2007年6月 6日 (水)

あるスキャンダルの覚え書き

「あるスキャンダルの覚え書き」
<NOTES ON A SCANDAL>/製作:2006年、イギリス 92分 R-15指定Aruscandal    
監督:リチャード・エアー 出演:ジュディ・デンチ、ケイト・ブランシェット、ビル・ナイ、アンドリュー・シンプソン、マイケル・マロニー、トム・ジョージソン
2007.6.6 レディース・デイ¥1,000にて鑑賞
隣の評論家はいくら?→¥3,000で妥当 / 評価:5.0★/5点満点★

「彼女の恋の相手は15歳だった」

ふとしたきっかけで始まった秘密の出来事
これは、どこか満たされない心の奥の隙間に紡いだ、孤独と愛の物語

ジュディ・デンチケイト・ブランシェット。大好きな女優2人が火花を散らして、アカデミー賞で主演女優賞&助演女優賞のダブル・ノミネートを果たした話題作。この話題性だけに留まらない凄い作品だっ!ちょっと気が早いけど、恐らく6月のマイ・ベスト1に輝くのではないだろうか。決して清々しいテイストではないけれど、いつまで経っても余韻が消えないです。どうにか頭の中を整理して、何が印象に残ったのか書いてみたいと思います。

ロンドン郊外の中学校で教師をしている初老の女性バーバラ(ジュディ・デンチ)。ある日、若く美しい美術教師シーバ(ケイト・ブランシェット)が赴任してくる。ある出来事をキッカケに親しくなる2人だったが、やがてバーバラシーバの秘密を知ってしまう。シーバは、男子生徒と肉体関係を持ち続けていたのだ!シーバにまつわる全てを日記に綴り、シーバへ激しい程の友情を求めるバーバラ。やがて事態は、とんでもない方向へと動き出す。

バーバラは、一瞬たりとも笑顔を見せない堅物な女性でした。「オールド・ミスの必需品よ」と、1匹の猫(彼女の名前はポーシャ)と暮らす孤独な女性。生涯独身と思しきバーバラは、不器用で人付き合いが余りにも下手でした。《日記》だけが彼女の話し相手であり、日記を綴る事で均衡を保っているようにも見えました。バスの運転手と手が触れただけでドキッとしてしまうという本音から察するに、彼女はノーマルなんですが。同性の友人への入れ込み様が尋常でない為に、レズビアンだと誤解される描写は残酷に映りました。不器用すぎるが故に孤独を招いていると思うんだけど、その孤独さ故に人付き合いに支障を来たす悪循環は見ていて辛くなりました。

私が怖いと思ったのは、実はバーバラよりもシーバの方でした。確かに、嫌味の無い美しさは魅力的でしたけど。何と言うか、流されまくりの人生を送っているように見えてしまいました。そこには意志を見て取れず、大人になっても心が定まっていない印象を受けてました。バーバラの解説によると、妻子のあったリチャード(ビル・ナイ)を虜にして略奪婚で結ばれたらしいです。リチャードは、バーバラと同年代の男性でした。2人の子供を儲けて、ダウン症である下の息子も10歳を迎えました。「人生に何の意味を感じられなくなったので、仕事を始めたの」 シーバは、自分の進む道に迷いっ放しで、心が定まらないまま彷徨い続けている印象を持ちました。良く言えば《お人よし》なのかもしれないけれど、悪く言うと隙だらけの女性。シーバは、不倫相手の生徒以外の男性からも【火遊びの相手】として標的にされていましたが。痴漢によく遭う女性の話じゃないけれど、きっと隙だらけだから無意識に見透かされてしまうのではないでしょうか。(ちょっと悲しい解釈でスミマセン)クリスマスに家族が集う場面で、シーバの母親らしき女性が「シーバは美しいだけで何の才能もない」と、少々酷い言葉を吐いていました。バーバラの解説によると、父親を亡くしてから母親との折り合いが悪いとのこと。母親との関係が改善されない限りは、シーバの心は定まることができないのではかしら。

2人が使う【友情】という言葉の意味合いは、似ても似つかないところがリアルで怖かったです。バーバラにとって【友情】とは、魂の片割れである事を意味していたと想像します。【親友】とは、他人ではなく《もう一人の自分》でなければならない。ところが、シーバにとって【親友】とは都合のいい時に助け合えればそれでいい存在。秘密を知ったバーバラを口止めする為に【友情】という言葉を使っているようにしか見えませんでした。この温度差が、やがて悲劇を招きます。価値観は人によってそれぞれ違うという事を、こんな状況で見せつけられるなんて!

男子生徒との秘密の関係が明るみに出てしまい、窮地に立たされたシーバの姿はおぞましかったです。「何故だ」と詰め寄る夫に「彼が欲しかったの!」 と言い放ったり。学校だけでは留まらずに、マスコミにも大騒ぎされてしまうシーバ。家庭と同様に、シーバの脆い精神は一瞬で崩壊していきます。夫に追い出されて行く当ての無いシーバは、バーバラの家に転がり込みます。そこで、偶然にもバーバラの日記を目にしてしまいます。ピエロのようにドぎついアイラインを黒々と引き、唇からはみ出して真っ赤な口紅を差す姿には、憐れみを通り越して恐怖を感じてしまいました。直後、バーバラを問い質すシーンは迫力があり過ぎました。「恋愛のつもりなの?私とヤリたいの?」こんなケイトは見た事がありません。私は絶句し、自分でも何故だかわからないけれど涙が込み上げてきました。

事実を知った時のリチャードのセリフも、とても印象的でした。「お前の性格をわかっていたはずなのに。一緒になった時から、こんな日がくるんじゃないかと思っていたのに。」 「何故、『孤独なの、助けて』と俺を頼らなかった?」 自分より遥かに若い妻に対して、ずっと不安を持ち続けていたリチャードの気持ちを考えたら、とても辛くなってしまいました。バーバラにではなくてリチャードに心を開いていたら、少しは違っていたのでしょうか。そう思うとやり切れなくて、息苦しくもある重厚な作品でした。

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コメント

ドモドモ-♪
見応えある映画でしたねーーー!
作品は地味なのに後に残るものは大きかったですよね。

ジュディ・デンチとケイト・ブランシェット!!!
二人の競演は見応えありましたね。
どちらも凄かった。
この映画って同じ女性の方がより彼女たちの心理が分かるよねん。
そうね、バーバラはレズと言うよりも友情の延長線で、そこに強い自己愛が加わってしまってー
相手に依存して寄りかかり過ぎたんだね。
シーバの性格もねぇ・・・、自業自得って部分はあるよね。汗
ところで、ビル・ナイさん!
タコ状態から脱し、お顔がバッチリ見れたのが嬉しかったです。うふふ

投稿: Puff | 2007年6月11日 (月) 23:12

Puffさま
TB&コメントありがとうございます。
おおおおお~っ、訪問ありがとうございますー。
元々、観たいとチェックしていたのですけど。コレ、私は期待以上に魅了されちゃいましたよん。
ジュディ・デンチとケイト・ブランシェット
2人とも見事でしたよねん!バーバラもシーバも完璧ではないし理解もできると言うか何というか。女性ならではなのかしらん、とても見応えがありましたよねん。
実は、夫リチャードの叫びもとても印象に残ったんですよねー
ビル・ナイってタコ状態を始め、弾けた感じのキャラクターが多い気がするので。本作では、本来の知的な紳士然たる姿でしたもん。何か嬉しかった。(そう言えば『ナイロビの蜂』でも紳士してましたけども)

投稿: 隣の評論家 | 2007年6月12日 (火) 21:57

おお~シーバ側に行きましたか。
私はシーバの心情はわかる気がしました。バーバラが怖かった。
でも、バーバラの闇の部分も理解できる気がして。それがまた怖かったのです・・・自分もああなったりしないだろうな?と。(笑)

投稿: カオリ | 2007年6月14日 (木) 01:13

こんにちは。やっとレビューをアップしたので、遊びに来ました。

>この話題性だけに留まらない凄い作品だっ!

ほんとに、見たあとしばらくぼ~~っとしてしまいました。
期待を裏切らなかった数少ない作品のひとつですわ~

>バーバラもシーバも完璧ではないし理解もできると言うか何というか。

なんか誰の中にもある子供っぽい部分を指摘されて、しかもそれが傍目に見たらどうなのかが分って、冷や汗ものでした・・・

私も感想を書いたので、TBさせていただきました。

投稿: jester | 2007年6月14日 (木) 09:02

TB&コメントありがとうございます。

★カオリさま
そうですね、どちらの方がより怖かったかと言えばシーバですけど。バーバラも何かリアルで、ちょっと戸惑い気味でした。どちらも理解できなくはない部分があったと言うか。これは映画ではあっても、実際に起こり得る気がしてしまうところが何よりも恐ろしく感じてしまいました。
私も、もし老年期を相方なしで生きていくとしたら。多分、猫と暮らすと思うんですね。なので、バーバラの姿は、とてつもなくリアルに映ってしまいましたよ(汗)。

★jesterさま

>誰の中にもある子供っぽい部分

!!!そうですね、それだけにリアルに感じられる作品でしたよね!怖いですね~。子供っぽい部分はあっても、こんな風にスキャンダルが怒り得ない生き方をしていかないとなっ なんて思いました。
この作品は、男性よりも女性の方がガツンとくるタイプの作品ですかね?この作品を見たという方は、今のところ女性が多い印象を受けているので。男性には、どのくらいガツンとくるんでしょかね。

投稿: 隣の評論家 | 2007年6月16日 (土) 23:32

となひょうさん、こんばんは★
>不器用すぎるが故に孤独を招いていると思うんだけど、その孤独さ故に人付き合いに支障を来たす悪循環は見ていて辛くなりました。
本当にそうですね。この心情が分かるように描けているからこそ、この物語が余計に怖かったです・・・。
普通に見れば、バーバラって、怖い頑固なオールドミスでしたが、
その内面を見せられたナレーションが、辛かったです・・・。
こちら側に引きずられてしまいそうな勢いがあって、そこが逆にこの物語の成功している部分だったんですよね。
しかし、やはり髪の毛を集めたり、ここまでの執着心は、“友情”ではもはやないと思いますし・・・。本気で怖い作品でした。
私も満点です。

投稿: とらねこ | 2007年6月24日 (日) 00:38

P.S.これ、同じ日に見てます(今更ですが)。
どこでご覧になりましたでしょうか?私は武蔵野館です♪

投稿: とらねこ | 2007年6月24日 (日) 00:40

とらねこさま
TB&コメントありがとうございます。
いやぁ、コレは私にとってはパーフェクトな作品でした。
とらねこさんも気に入ったようで何よりです♪

そうそうそう。ナレーションがバーバラによるものだったので、何とも迫力がありましたよねぇ。バーバラ目線のバーバラ解釈なので、鵜呑みにするのは幾分危険なのかもしれませんけど。冷静なんだけど、どうしようもないくらいに不器用で。ちょっと恐ろしく響くと言うか。
バーバラもシーバも、まぁこういう人もいるかもなと思わせるキャラクターだったので、とてもリアルな姿だったと思いました。私もこのまま独りで生きていかざるを得なくなったら、多分猫さんと暮らすと思うので。くれぐれもバーバラのような失敗をしないようにしよとも思いましたです。
私はシャンテでの鑑賞でしたよん。新宿武蔵野館でも上映しているとは気づいてませんでした。

投稿: 隣の評論家 | 2007年6月24日 (日) 22:41

こんにちはん。
実は独映画祭の合間に見ていたこともあって、少し埋もれてしまった感じ;です。でもこの作品自体とても印象的な部分がありますので、評価自体は悪くないのですよ。
人の心の脆さ。そういうものにその先の人生の方向性が翻弄させられてしまうなんて、なんとも皮肉です。
ほんと、子供っぽさを2人の女性からは受け取れますよね。
私的にはシーバの心情はなんとなくわかるんですよ;
旦那さんに「頼ってくれれば…」なんて後から言われても…困るというか。苦笑
それにしてもデンチさん、こういう役のほうが私のイメージかも。
だ、だめよね、それじゃ・・・。

投稿: シャーロット | 2007年7月 1日 (日) 18:07

シャーロットさま
TB&コメントありがとうございます。
埋もれちゃいましたか?(笑)。

>人の心の脆さ

そうですね、とかく人って脆い生き物なんですね。私には、とてもインパクトのある作品でした。何だか、バーバラもシーバも弱い部分はあるけれど、それって誰でも持ちうるモノにも感じられて。期待していた以上にリアルに感じられてしまいましたよ~
デンチさんは、元々いかつい顔だから。こういう役は似合うのかもしれないですねん。

投稿: 隣の評論家 | 2007年7月 2日 (月) 20:36

となひょうさん、ど~も。TB・コメントありがとうございました。
TBはまたトライします。

なるほど~
となひょうさんの記事を読んで、結構わかってきたような気もします。
それでもシーバの心情は捉えがたいですね。
バーバラはわかりやすかったです。
男と女で受け止め方が変わってしまう作品かなぁ。

投稿: CINECHAN | 2007年7月16日 (月) 12:04

CINECHANさま
TB&コメントありがとうございます。

>それでもシーバの心情は捉えがたいですね。

私が思ったのは、シーバは自分でも自分の心情を整理できていないのかもしれないなぁということ。彷徨う余り、自分がどうしたいのか何処に向かっているのか、グシャグシャになっているんではないですかね。そのわだかまりから逃げるかのように、火遊びに走ってしまったのかなーなんて想像したりしました。

>男と女で受け止め方が変わってしまう作品かなぁ。

そうかもしれないですねー。男子から見て、何となくわかるということはないかもしれないですね。女子からすると、自分も同じ気持ちだというところまではいかなくても、2人の弱さを何となく感じられるのかもしれないです。

投稿: 隣の評論家 | 2007年7月16日 (月) 22:08

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