リトル・チルドレン
「リトル・チルドレン」
<LITTLE CHILDREN>/製作:2006年、アメリカ 130分 R-15指定
監督:トッド・フィールド 脚本:トッド・フィールド、トム・ペロッタ 原作:トム・ペロッタ 出演:ケイト・ウィンスレット、パトリック・ウィルソン、ジェニファー・コネリー、ジャッキー・アール・ヘイリー、ノア・エメリッヒ、フィリス・サマヴィル、グレッグ・エデルマン
2007.8.4 劇場前売り鑑賞券¥1,500にて鑑賞
隣の評論家はいくら?→¥2,500で妥当 / 評価:4.5★/5点満点★
「今の自分を愛せたら、未来はきっと変えられる」
なぜ、満たされないの?
今の幸せに気づかず、別の人生を夢見てしまう【大人になれない大人たち】。
派手さは皆無だけど、後になってからジワリジワリと味が出てくる素晴らしい作品でした。ブログにレビューを書くにあたり、色んな想いが頭の中をグルグルと巡りました。2日前に見たタランティーノのインパクト・オンリーな新作が記憶から抹消される程に、私の中に強烈な足跡を残した作品です。
主婦のサラ(ケイト・ウィンスレット)は、今日も子供を連れて公園に来ていた。そこへ姿を現す主夫のブラッド(パトリック・ウィルソン)を、主婦たちは『プロムキング』と呼び話題にしていた。ふとしたキッカケから会話をするようになったサラとブラッドは、やがて日頃の不満を爆発させるかのように不倫関係を持つようになる。同じ頃、元受刑者のロニー(ジャッキー・アール・ヘイリー)が釈放される。幼い子供への性犯罪で捕まっていた男なだけに、街中が子供を守ろうと不穏な空気に包まれる。中でも、ブラッドの友人で元警官のラリー(ノア・エメリッヒ)は、執拗に嫌がらせを仕掛ける。冷たい目で見られるロニーを温かく守ろうとする母メイ(フィリス・サマヴィル)だったが、ある日悲劇がロニーを襲い・・・。
大人になるとは、どういうことか。年齢を具体的に数字で表すと、立派な大人でなければいけない私でも。具体的には語りきれない気がします。若い頃に思い描いていた理想通りに生きていない今の自分に、本当は色々な不満が蓄積している私ですが。どんな人も、何かしらの不満を抱えて生きているんですよね、きっと。
この作品の登場人物も、不満・苛立ち・苦悩といった負の感情を少なからず溜め込んでいるようでした。メインのキャラクターのみならず、全ての登場人物が。サラと夫のリチャード(グレッグ・エデルマン)は、とても立派な家に住んでいますが。お互いが《スウィートホーム》という存在ではなくなっていました。アダルトサイトにはまる夫の実態を知ってしまったサラは、自らもブラッドと不倫関係を続けます。ブラッドは、司法試験の合格を目指して何年も勉強していました。家計を支えるのは、映像作家として成功している妻のキャシー(ジェニファー・コネリー)。ブラッドの中で「このままでいいはずがない」という鬱屈した想いが積もっていたのでしょうか。サラとブラッドのセックスシーンは、R-15指定がつく程に大胆なものですが。何と言うか、エロスよりも日頃の負の想いを絶叫しているという印象です。ロニーを糾弾するラリーの姿は、一つも正当性を見いだせなくて嫌悪感を覚えました。やることが卑劣でしたから。後になって明らかになるラリーの過去。ある発砲事件をキッカケに警察を追い出されたらしいのです。「子供を守るため」という口実で、苛立ちの矛先をロニーに向けていたという訳です。公園で子供を遊ばせる主婦たちも、日常に不満をつのらせているように見えました。子供の話題ならともかく、どこまで真実なのかは知らないけれど、夫との性生活を激白し合っている場面はどうもなぁ・・・。3人が固まって1つのベンチに座っているんだけど、離れたベンチに1人で座っているサラにグーッと共感していく私でした。
こんなにも満たされない大人たちでしたが、終盤に向けて静かに自分なりの終点へ帰結していくようでした。不倫の末、逃避行を図るサラとブラッドでしたが。実行する夜、ふとした瞬間に我に返るチャンスを与えられました。このまま満たされない生活から逃げ続けるのか、冷静に現実の生活に戻っていくのか。サラとブラッドは、我に返ることに決めたようです。
ラリーの執拗な嫌がらせがキッカケで、ロニーの母メイは発作を起こして帰らぬ人となってしまいます。母の持ち物から出てくる「いい子でいるのよ」 という手紙を目にしたロニーは爆発します。冒頭でも印象的だったコチコチコチという時計の音がロニーの頭に木霊します。そして刃物を手にしたロニーが取った行動は衝動的なものでした。演じたジャッキー・アール・ヘイリーの存在感が素晴らしかったと思います。絶叫しているシーンの激しさと、静かにじっと見つめる視線と佇まい。《静と動》を小さな身体で前面に表現しきっていたと思うんです。私にとって本作の陰の主役は、元警官のラリーでした。自分の取った行動が、間接的ではあってもメイの命を奪ってしまった訳で。罪悪感から少しずつ我に返っていくように見えました。自分からロニーに歩み寄ろうとした際に、悲劇を向かえるロニーの姿を目にします。今までは憎悪の矛先であったはずのロニーの命を、無意識に助けるラリーの姿はとても印象に残りました。
あくまでも私の感性で見た意見ではありますが。本作のラストでは、彷徨い続けた大人になりきれない大人たちが自分なりに《大人の選択》をしたような気がしました。そこで色々と考えたのが、自分を信じるということも大切だということです。私自身もそうですが、思い通りにいかなくて不満を抱えている人って結構多いのではありませんか。でも、自分が辿ってきた道を信じて《財産》として捉えること。日々の出来事を良い意味に理解して、どんなにくだらない事でも小さく幸せを噛み締める気持ちを持つこと。プチプチと小さなハッピーでも、積み重なれば自然と笑みが零れるってもんではないでしょうか。口で言うのは簡単ですけど、是非とも実行に移していけたらいいなと思っています。
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受信: 2007年10月 1日 (月) 08:11
コメント
こんにちは♪
秀作でしたね。
例え現状が不満だらけでも、いつかはドカンと
幸せを引き出せるもんなんだ。
と思いながら日々を送ってはいるんですが、それが
何時のことやらと思うと、もがきたくもなるから
登場した連中に共感しまくりでした。
ただ不倫だけは共感出来ずでしたけどね…r(^^;)
J・E・ヘイリーの存在感は素晴らしいの一言です!!
投稿: 風情♪ | 2007年8月 5日 (日) 00:33
こんにちはー 久しぶりにカキコを
こんなのわたしじゃないー他の生き方があるはずーって思うより、ちょっと視点を変えてみればもっと幸せ前向きに生きてけるかも、と思ったり。でもそのちょっと変えることが難しいんでしょうね。見応えもあったけど、いろいろ考えちゃった作品でした。
投稿: mako | 2007年8月 5日 (日) 11:34
makoさま
こんにちわー カキコありがとうございます。
>でもそのちょっと変えることが難しいんでしょうね。
そうですねー、口で言う程に簡単ではないんでしょうね。
この作品は、鑑賞直後よりももっと後になってからの方が色々な想いがグルグルと頭の中を駆け巡りました。《自分探し》って何だかエンドレスだけれど、少しずつでも自分を受け入れられたら素敵ですね。
投稿: 隣の評論家 | 2007年8月 5日 (日) 20:13
風情♪さま
こんにちわ。コメントありがとうございます。
私も、不倫には共感できませんでしたけど。
自分探しに悩みもがいている登場人物の気持ちは理解できる気がします。
>J・E・ヘイリー
お母さんの手紙を読んで絶叫している姿も、とても印象深いんですけど。全体を通して、静かにジッと見つめる視線が印象的でした。目が語っていると言うか、何と言うか。
ラストのロニー&ラリーの場面は、忘れ難いです。
投稿: 隣の評論家 | 2007年8月 5日 (日) 20:36
こんばんは☆
ちょっとお久しぶりですー。
これ、たしかに後からじわじわくる作品かも、、、
あのラストはとてもよかったです。
ロニーはかなり気持ち悪かったけど(車のところとか、私までオエーッってなっちゃった!)静と動の迫力すごかったです。
きっかけはどうであれ、大人へ一歩踏み出した彼らたち。
自分はどうかなーなんてことまで考えちゃった。
公園のママ友つきあいはリアルでなんかいやだねー><こわい、こわい。
投稿: きらら | 2007年8月 5日 (日) 21:27
きららさま
TB&コメントありがとうございます。
お久し振りですー、お元気でしたかー
>きっかけはどうであれ、大人へ一歩踏み出した彼らたち。
そうですね、何だかラストがじんわりと染み入りました。
この映画ほど暴走しなくても、自分はどうかなーと考えたりもしますよね。とにかく、この作品は余韻がタップリ残りました。
公園デビュー
できればしたくないなんて思ってしまったけど、実際に自分に子供ができたらそうもいかないんですかねぇ。
投稿: 隣の評論家 | 2007年8月 6日 (月) 20:46
良い映画でしたねーー
観る前も良さげな予感はしてましたが、期待以上でありました!
今年の下半期マイベスト入りは確実ッス。
印象的なシーンは幾つかあるのですが、
>コチコチコチという時計の音
このシーンも強烈でしたね。
規則正しく刻む時計の音と、小さなたくさんの人形たち。
ロニーの頭の中で何かが爆発したように思えました。
>彷徨い続けた大人になりきれない大人たちが自分なりに《大人の選択》をした
おお、確かにそうですね!
過去にあったことはさておき、最後には何かを得て、うっすらと希望の光が見えたのが救いでした。
投稿: Puff | 2007年8月 6日 (月) 20:56
こんばんは。
公園デビューなんて言葉がいつの間にやら出来ていて、
とっても公園に行きたくない…って思ってる人もいっぱいいますよ。
最近はショッピングセンターで一日過ごす親子も多いのだとか;苦笑
ところで。
自分のアイディンティティを模索することなしで大人にはなれないものなのでしょうね。遠回りしてもたどり着けると信じるのも必要だし。でも意外と自分で自分を変えたいと思っている時ほど変えられないものなのかも、とも思うんですよね。
でもそんな時、何かきっかけをくれる人や物事ととの出会いがあるのかなって過去の経験からも思えます。そこに気がつくか…。変わりたいなら気がつけると思いますわ。希望的な最後は救われました。
投稿: シャーロット | 2007年8月 6日 (月) 23:56
TB&コメントありがとうございます。
★Puffさま
>過去にあったことはさておき、最後には何かを得て、うっすらと希望の光が見えたのが救いでした。
本当に!ラストは感動的でしたー
私も、下半期ベストに顔を出しそうな予感です。
とりあえず、8月に観た作品の中ではベスト1なんじゃないかと思っております。負けないくらいに気に入る作品に出逢えることを期待しておりますけどねん。
時計のコチコチという音。何とも印象的でしたよねー
特に、ロニーが爆発する前のシーンでは。
今だに、忘れられない場面が一杯ありますよ。
投稿: 隣の評論家 | 2007年8月 7日 (火) 20:38
★シャーロットさま
少々、反応が鈍くて失礼いたしました(汗)。
>ショッピングセンターで一日過ごす親子も多い
あっ、こっちの方がいいな。な~んて思ったり(苦笑)。
「アイデンティティの模索」
私自身も、今だにどこにも辿り着けていない気がしますです。
私は、近道よりは遠回りして時間をかけたいタイプかもー
>でも意外と自分で自分を変えたいと思っている時ほど変えられないものなのかも、とも思うんですよね。
あっ、そうかもしれないですねー!!!もの凄い共感してしまいましたわ。気づかずに素通りしてしまっていないか、改めて振り返ってみたくなる清々しいラストでした。地味なようでも、感動的でしたです!
投稿: 隣の評論家 | 2007年8月 8日 (水) 23:57
ぼんぼんぼんー。
私はとにかく道化師の帽子のかわいさに釘付けでした!
プールは混んでいたのに、公園はすいていましたね。
わが国も元犯罪者に対する世間の目は手厳しいですからね。
正義をふりかざすモンスターペアレントは怖いっす。
性犯罪者って再犯の可能性は高いのかもしれないけど、
それはやりすぎだろーってカンジでしたよね。
そんなことを描いていたところもよかったです。
ジャッキー・アール・ヘイリーを本作にプッシュしたのは
オールザキングスマンで共演したケイトだそうで、
そのオールに、ジャッキーが出ることになったのは、
昔のよしみのショーン・ペンの推薦があったかららしく。
そんなつながりもちょっとステキと思いましたー
投稿: かえる | 2007年8月11日 (土) 19:22
かえるさま
TB&コメントありがとうございます。
あの帽子、本当に愛らしかったですよね!
プールに入る時まで被っちゃって。
濡らさないように気をつけてねって思って見てました。
>正義をふりかざすモンスターペアレント
怖いですねー こういう輩の結束力もまた、恐ろしい限りですぅ
何だかリアル~(汗)
ジャッキー・アール・ヘイリーの出演には、そんな素敵なエピソードがあったんですね。『オール・ザ・キングスメン』は見たのにイマイチ忘れてしまった私ですが(汗)素敵な繋がりを噛み締めながら見たかったー
投稿: 隣の評論家 | 2007年8月12日 (日) 11:20
こんばんはー。
最後に大人の選択をした、私も思います。ブラッドは偶然の出来事かもしれませんが・・・
この世の中は、大人にならなければ生きづらい世の中なのだと思いまいした。
投稿: カオリ | 2007年8月17日 (金) 01:12
カオリさま
TB&コメントありがとうございました。
>この世の中は、大人にならなければ生きづらい世の中なのだと思いまいした。
んー、そうですねー。
こんな風に感じている人は数多いことでしょうから、本作の登場人物の心情にスーッと入っていけるという声も多そうですね。
投稿: 隣の評論家 | 2007年8月17日 (金) 21:18
となひょうさん、こんにちは。
今の自分の満足がいかないというのは誰もが持つ感情でしょうね。
その点ではよくわかる作品でしたが。
ただ、サラ、ブレッドが取った行動は共感できなかったなぁ。
ラリーとロニーは、頭でしか考えられない事柄なんで何とも。
ここまで生きてきたからには、もう彷徨ってばかりはいられないな、
と考えさせてくれる作品ではありました。
投稿: CINECHAN | 2007年8月25日 (土) 11:38
CINECHANさま
TB&コメントありがとうございます。
>ここまで生きてきたからには、もう彷徨ってばかりはいられないな、
と考えさせてくれる作品ではありました。
そうですねー、どちらかと言うと地味な作品ですけど。
私も、ズシッと心に残る作品でしたー。
『不倫』には共感しかねますけど、2人とも愛し合っていたと言うよりは、自分の中の迷いをぶつけ合ったという感じなんでしょうかね。
結婚も子育ても未経験なので、スーッとは入っていけない部分も多々ありますけど。幾つになっても、人生には迷うものなのかもしれないですよねー
投稿: 隣の評論家 | 2007年8月26日 (日) 10:26
この映画、好きでした!何で上映館、少ないんでしょうね。
最後は、みんな”大人”の一歩を歩み出したんでしょうね。
何か、身につまされる映画でした。
現状に不満で『これは本当の私でない』と思うなら、未来を自分の意志で変えることが出来るんですよね。う〜ん、やってないけど(笑)
投稿: あん | 2007年9月18日 (火) 22:05
あんさま
TB&コメントありがとうございます。
私も、もう少し多い上映館なんだと思ってましたー。
ちょっと勿体ないような気もします・・・。
>現状に不満で『これは本当の私でない』と思うなら、未来を自分の意志で変えることが出来るんですよね。
そーですねー、出来たら素敵ですよね。
なかなか口で言う程に実行に移せなかったりしますけど、この作品を見て感じたことは忘れないようにしたいところです。
投稿: 隣の評論家 | 2007年9月20日 (木) 22:03
となひょうさん、こんにちは。
「スワロが映画を見た」のスワローテイルです。
す~っごくしばらくぶりにコメントさせていただきます(照)
>タランティーノのインパクト・オンリーな新作が記憶から抹消される程に、
>私の中に強烈な足跡を残した作品です。
はは(涙)
そのインパクト・オンリー映画はスワロのお気に入りなんです。
でも、スワロも同じ状況だったら忘れるかも・・・
そのくらい、この映画はすごく印象的です。
スワロも見た直後はイマイチだと思いましたが、
時間が経つにつれてなんとも言いようのない思いがあふれてきましたよ。
おかげで評価の★が翌日に一つ加わりました(苦笑)
ロニーとラリーのエピソードはスワロもすごく強烈に感じました。
涙が出そうになって。
偶然にも人を傷つけてしまったラリーがまた人を傷つけてしまって。
さらにはロニーも・・・だなんて皮肉だし。
警察を退職したラリーのやり場のない思いが痛々しくて。
投稿: swallow tail | 2008年1月31日 (木) 17:39
swallow tailさま
こんにちは、訪問ありがとうございます。
ああ、『デス・プルーフ』は楽しめましたよ。
タラちゃん作品の中ではインパクトが少々弱かった印象でした。えへへへ・・・
>おかげで評価の★が翌日に一つ加わりました
あ、この気持ちよくわかります!
数日経っても余韻が残っている映画っていいですよね。
最近は、こういう作品の方が味わい深くて見て良かったなぁという気持ちになります。
ロニーとラリーのエピソードは、とても良かったですよね。
鑑賞前は、ラリーってキャラクターに引き込まれていくとは思ってませんでしたし。
中盤は、嫌な部分が目だっていたラリーが、ラストに取った行動は人間味に溢れていて感動的でした。
誰でも闇を抱えて生きているんだなぁとも思うと、ラリーの勇気は清々しかったです。
投稿: 隣の評論家 | 2008年2月 1日 (金) 21:27