ドッグ・バイト・ドッグ
「ドッグ・バイト・ドッグ」
<狗咬狗/DOG BITE DOG>/製作:2006年、香港 108分 R-15指定
監督:ソイ・チェン 出演:エディソン・チャン、サム・リー、ペイ・ペイ、ラム・シュー、チョン・シウ・ファイ、ライ・ユウチョン
2007.8.29 レディース・デイ¥1,000にて鑑賞
隣の評論家はいくら?→¥2,300で妥当 / 評価:4.3★/5点満点★
「世界は絶望に満ちていた 彼らは孤独しか知らなかった」
生きるために何を捨て何処へ向かうのか・・・
生き残るために何を見つけ何処へたどり着いたのか・・・
〈新宿武蔵野館〉という決して大きくない劇場の一番小さいスクリーンで、3週間限定ロードショー。何とも小さな扱いです。この作品の存在すら知らないという方も多い中、チラシや予告編の雰囲気がどことなく好みだったので気になっていました。教科書の如く参考にしている映画サイトでもなかなかの高評価だったので。上映終了ギリギリ前に、いそいそと観に行って来ました。
香港の高級レストランで、殺人事件が発生する。現場に駆けつけたワイ刑事(サム・リー)は、犯人らしき人物を尾行して屋台街に追いつめた。殺し屋パン(エディソン・チャン)は、交渉人として歩み寄ったベテラン刑事リン(ラム・シュー)をも刺殺して逃亡する。やがて、パンがカンボジア人孤児であることが判明する。幼い頃から闘犬のように育てられ、生きるためには相手を殺さなければならない日々を送っていたのだ。過去の出来事がトラウマとなって、憎しみしか知らないワイ刑事は、パンを執拗に追いかける。ゴミ埋立地に逃げ込んだパンは、ユウ(ペイ・ペイ)という少女と出逢うのだが・・。
本作は、暴力的な場面がとても多いです。人によっては受け入れ難い描写も含まれているかもしれません。冒頭、殺し屋パンのターゲットは、女性弁護士でした。パンが逃げ込んだ屋台街で、最初に巻き込まれて射殺されたのも女性客でした。ユウという少女の扱いも凄まじかったです。母親が死んでから、父親に性的虐待を受けていたのです。(娘をレイプして召使のように扱う父親の姿には、吐き気を催しました) また、パンを追う刑事がユウを盾に取る場面も迫力がありました。女性への暴力描写も情け容赦がありません。
それでも、惹き込まれた理由の1つは。全体的に黄味がかった色合いが印象的でした。夜の真っ暗い街並みを街灯がポーッと照らす黄色い光。真っ赤ではなくて黄色く照らされた夕日など。蛍光色ではなくて、あくまでも目に優しい暖色系の黄色。凄まじい暴力描写が多くても、この黄色マジックで中和されているような気すらしてきました。
何よりも特筆すべきは、エディソン・チャンとサム・リーの力演だと思います。
エディソンが演じたパンは、カンボジア人という設定でした。カナダ生まれで香港出身の彼は、日本映画に日本語で出演していた経歴もあります。本作でカンボジア語(ですか?)を話す場面があるのを見て、この人はもの凄い努力家なのかもしれないと改めて見直しました。ルックスだけだと二枚目で王子様キャラかもしれないのに。全く原型を留めていない汚い役作りにも感心しまくりでした。韓国映画『美しき野獣』でクォン・サンウが挑んだことが中途半端に感じられる程の迫力があったと思います。暴力描写は勿論のこと、パンがガツガツと食事している場面の迫力も忘れがたいです。〈食べること〉は生きていく上で基本的なこと。地獄のような人生でも必死に生きようとするパンの意志が伝わってきました。食べ物の好き嫌いが激しい人、ダイエットの為に食事を抜く人。私達は、とても贅沢に過ごしているのかもしれません。
くっきりソース顔のエディソン・チャンに対抗するのは、スッキリしょう油顔のサム・リーです。対照的な二枚目像も面白いと思いました。サム・リーと言えば『メイド・イン・ホンコン』や『ピンポン』での飄々としたマイペースな佇まいが魅力的でしたが。今回は、ある過去の出来事から芽生えた憎悪こそが生きる原動力といったアクの強いキャラクターを好演していました。わがままな態度で周囲の和を乱し、先輩刑事のフォローへの感謝が見えない姿は幼く映りました。傷ついた繊細な心ゆえの未熟さが、存在感を発揮していたと思います。何よりも、ラストのワイ刑事の姿は圧倒的でした。ガリガリに痩せ細り、骸骨のように覇気の無い表情で異彩を放っていました。元から細身なのに、一体何キロ体重を落として挑んだのでしょうか。
ラストの展開には、嫌悪感を覚える人もいるかもしれません。詳しくは書きませんけど、とにかく印象的でした。ユウを父親の呪縛から解放したパン。幼い頃から人間らしく育っていないパンにとって、恐らくユウは初めて《人間》として触れ合った人物なんだと想像します。お互いが【救世主】のような存在であったと思えるパンとユウの絆や、憎しみをバネにするしか生きる道がなかったワイ刑事の悲哀など。重たい空気が流れるのと同時に、発せられた〈泣き声〉と夕日の〈黄色〉が、どことなく希望を持たせてくれる気がする不思議なエンディングでした。
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» 『ドッグ・バイト・ドッグ』 狗咬狗 [かえるぴょこぴょこ CINEMATIC ODYSSEY ]
演出は好感触。クール一辺倒でいってほしかった。
カンボジアで生まれ育った青年パンは、殺人の依頼を受けて香港にやって来た。刑事ワイはパンを追うことになる。タイトルからして、何やらクールでカッコいい響きで、そのオープン・クレジットのデザインもなかなかスタイリッシュ。ジョニー・トーの『PTU』ばりに冷徹でクールなバイオレンスものの予感がしてわくわく。血みどろな残酷シーンは決して得意じゃないけれど、徹底した激しいバイオレンス描写には時として圧倒されて魅了されてしまうのだ。状況説明がされないままに、噂ど... [続きを読む]
受信: 2007年9月 2日 (日) 13:23
» 闘う狗たち [CINECHANの映画感想]
201「ドッグ・バイト・ドッグ」(香港)
ある日船に乗って一人の男が香港にやって来る。男の名はパン。殺し屋である彼は高級レストランで仕事を果たす。殺人事件の捜査にやって来た刑事ワイは、犯人らしき男パンを発見し、追跡するが、目の前で同僚のリン刑事を殺されてしまう。その場から逃亡するパン。
ワイは執拗な捜査を続け、パンがカンボジアの孤児であり、幼い頃から闘犬のように育てられたことを知る。そのワイもまた父親の取った行動により、常に苛まれていた。
一方逃亡するパンは、ごみ埋立地の壊れか...... [続きを読む]
受信: 2007年9月 8日 (土) 23:13

コメント
となひょうさん、こにちは。
私はこの脚本が結果的にはどうも好きになれなかったんですが、映像や演出はすこぶる好みでしたよ。すたいりっしゅでしたよね。
これ観ながら、ひょっとしてとなひょうさんはこういうのお好きかなぁーと思ったりしてました。ご覧になれてよかったですね。
エディソン・チャンはとにかくよかったですよね。久しぶりにサム・リーの姿も観られて嬉しく。
投稿 かえる | 2007年9月 2日 (日) 14:17
かえるさま
TB&コメントありがとうございました。
>映像や演出はすこぶる好みでしたよ
そでしたかー それは良かった、良かったです。
お察しの通り、私の好みの作品でした。
それでも、実は最初はチェックしていなかったんですけどね(汗)。
エディソン・チャンとサム・リーのプロの仕事っぷりが素敵でしたね。
投稿 隣の評論家 | 2007年9月 2日 (日) 21:50
となひょうさん、こちらにもTB・コメントありがとうございます。
そうでした・・・確かに画面は黄色っぽい映像でした。
画面の色合いで受ける印象も変わってきますね。
もう情け容赦ない暴力シーンで、確かに合わない人もいるでしょうね。
バイオレンス・シーンは問題ありませんでしたが、
心情描写がやや希薄だったような気がします。
1作目ということで、今後に期待ですかね?
投稿 CINECHAN | 2007年9月 8日 (土) 23:17
CINECHANさま
TB&コメントありがとうございます。
黄色かったでしょ!
もし、これが違う色合いだったら、印象がだいぶ変わっていたと思ったんですよね。
うーん、「好きじゃない」と感じる人の方が多いタイプの作品でしょうかねぇ。
私は、結構惹かれたのは、上にも書いた黄色い画面の力があったみたいです。
100点満点の仕上がりでもないかもしれないけれど、やっぱり次の作品も気になってしまいますよ。
1作目でこの仕上がりだったら、立派なんではないかと。
投稿 隣の評論家 | 2007年9月 9日 (日) 21:33