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2007年11月17日 (土)

4分間のピアニスト

「4分間のピアニスト」 
<VIER MINUTEN/FOUR MINUTES>/製作:2006年、ドイツ 115分4minutes_pianist        
監督、脚本:クリス・クラウス 出演:モニカ・ブライブトロイ、ハンナー・ヘルツシュプルング、スヴェン・ピッピヒ、リッキー・ミューラー、ヤスミン・タバタバイ、シュテファン・クルト
2007.11.17 劇場前売り鑑賞券¥1,500にて鑑賞
隣の評論家はいくら?→¥1,800で妥当 / 評価:3.8★/5点満点★

「弾く時だけわかる。何のために生まれてきたか。」

これが、私の音、私の叫び、私の魂。

ドイツアカデミー賞で作品賞と主演女優賞を受賞し、他にも栄誉に輝いたという噂のドイツ映画を観て来ました。私は少しだけクラシックも聴きますが、《通》ではありません。ピアノも弾けませんから、ピアノ演奏の云々を正々堂々と述べることはできませんけど。ただの映画ファンとして、この作品を見て感じたことを書いてみたいと思います。

ある老女がピアノ教師として刑務所にやって来た。クリューガー(モニカ・ブライブトロイ)は、そこで問題児とされている少女ジェニー(ハンナー・ヘルツシュプルング)の類まれなる才能を見抜く。そして、ジェニーをコンテストに出場させようと奔走する。ピアノのレッスンを通して、2人の魂がぶつかり合っていく。

この映画の予告編を見て、ジェニーが鏡を叩き割るシーンを早くから知っていました。私が見たドイツ映画というと、まず思い浮かぶのが『es<エス>』というパンチの効いたスリラー。他にも『レボリューション6』や『ラン・ローラ・ラン』など、勢いがあるなぁと感じた作品が多いです。予告編を見て、今回もパンチのある味わいなのかと期待しておりました。私は、クラシック曲というとムソルグスキーの『禿山の一夜』で味わえるような、眠気も吹っ飛ぶ激しさに溢れるものが好きです。どこかの映画サイトで、本作に「冒涜だ」と悪い印象を持った方の声を目にしたのですが。正統派のピアニストの方からすると、ジェニーの演奏はあり得ないといったところなのでしょうか。私にとっては、シューマンやモーツアルトの名曲を課題として与えられて弾いている場面よりも、ジェニーの完全なオリジナル演奏の場面に魅せられました。結果、帰りにサントラCDを購入しました。

ジェニーは、とても凶暴で無愛想、そして孤独な少女でした。何が彼女をこんな風にしたのか、彼女のセリフの中で少ししか語られませんでしたが。若くして悲痛な人生を歩んできたようです。その重さに耐えうるには、余りにも若すぎると思いました。彼女の激しい演奏は、彼女の魂の叫びだと思います。ピアノ演奏という形で自己表現すること。それこそがジェニーに均衡をもたらす必要な行為というか。実際、ジェニーのオリジナル演奏には心を鷲掴みにされました。クリューガーは、彼女の演奏を聴きながら忘れたい過去を少しずつ思い出しているみたいでしたし。一度も規則を破ったことのない看守も、たった一度だけルールに反するとは言え人情味ある行動に出ます。もともと、音楽には力があると思っていましたが。ジェニーのピアノ演奏には、ジェニーにしか出せない力が込められているような気がしました。

クリューガーの静かな佇まいも印象的です。実は頑固で、作法には人一倍うるさい女性です。人によっては、彼女の《しつけ》はサディスティックに見えるかもしれません。でも、クリューガーの静かな威厳と迫力は、少しずつジェニーの心を開いていくように見えました。冷たいようで温かさを感じる存在感というか。私の一番好きだった場面は・・・。ある看守の娘に「お辞儀はできないのか」と皮肉を言い続けるクリューガーでしたが。ジェニーは「私にもお辞儀させたいの?」という勢いで凄んでいました。そんなジェニーに、ギリギリ与えられたラストの《4分間のみの演奏》シーンが印象的でした。それは、コンテストの決勝でした。面食らう程に迫力のある演奏を披露した後に、客席に向かってゆっくりと丁寧にお辞儀をするジェニー。あれは、クリューガーに向けられた感謝以外の何ものでもないと思いました。美しく感動的な場面でした。クリューガーと出逢い、再びピアノを演奏する機会を与えられたジェニー。演奏以外に印象的だったもう1つのシーンは、ジェニーが板か何かに丹精込めてあるものを彫っている場面です。ピアノの鍵盤を1つ1つ丁寧に自分で描き、音の出ないピアノを弾く姿にも心を打たれました。凶暴で手に負えなくても、ピアノに賭けるジェニーの想いは本物でした。クリューガーとの出逢いは、ジェニーの今後の人生を明るく照らすと信じて劇場を後にしました。

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コメント

こんにちは。

この映画、評判いいですね。
ヒットに繋がってくれると嬉しいです。
ドイツ映画はほんとうに元気がいい。
自国の歴史ときちんと向き合っているところが、
映画に広がりと奥行きをもたらしている気がします。

投稿 えい | 2007年11月18日 (日) 10:03

えいさま
TB&コメントありがとうございます。

>自国の歴史ときちんと向き合っている

日本ではできていないような気も・・・
私は、この作品は荒々しいオンリーなのかとイメージしてたんですけど。私にとっては、割と静かな作品でもありました。
ラストのお辞儀シーン、本当に忘れ難いです。

投稿 隣の評論家 | 2007年11月18日 (日) 17:42

TBどうもでした。
今迄のピアノ系とは毛並みの違った重いテーマでしたね。
それだけに心の奥底に響く物がありました。
最後の演奏、そしてお辞儀、あの眼差しも焼きついてます。
師に対する感謝も見せつつも自分の音楽は曲げられない信念を表してました。

投稿 くまんちゅう | 2007年11月18日 (日) 21:07

くまんちゅうさま
TB&コメントありがとうございます。
わぁ、わざわざご足労頂きまして~、感謝です。
ジェニーの独創的なオリジナル演奏は圧巻でしたね~
中には受け入れ難いという人もいるかもしれませんが、余りにも魅せられたのでサントラCDを買ってしまいましたー
やっぱり、音楽など芸術には人それぞれのアプローチがあった方が面白いですよね。

投稿 隣の評論家 | 2007年11月18日 (日) 22:58

こんにちは~
地味だけど、最後まで気を抜けない展開でしたね~


最近、音楽の映画を続けて鑑賞してるのですが、この映画、「Once ダブリンの街角で」に続いて秀作でした!

彼女が本当に殺人を犯したのでしょうか?しかしあの激しさなら犯しかねないとは思いました。
でももし無実なら、それで傷つき、誰も信じられなくなってしまったのでしょうね。

投稿 jester | 2007年11月19日 (月) 07:58

こんにちはー。
私もとなひょうさんと感銘を受けたところはほとんど同じです。そうそうクラシックはいいですよー。でも大昔の音楽が好きなんて・・・いいのかな。笑

ベルリンの壁を壊した勢いの如く、ドイツには底知れぬパワーがいつもあるんですよね。実際にはクラシックの流れを汲む新しい音楽も今はもうたくさん生まれているんです。
特にドイツやオランダ等あたりで劇中のような現代音楽は盛んでして。すっごいですよ、そんな音楽達。もう唖然、呆然。・・・ギドクみたい;笑
規則にしばられていることや古い歴史や自分のしがらみ等、それらの概念から解き放たれたことにラストは意味があると思ったので、ドイツの新しい時代の幕開けのような感じにも見えてきて、とってもグッときました。

投稿 シャーロット | 2007年11月19日 (月) 14:49

TB&コメントありがとうございます。

★jesterさま
いやぁ、素敵な音色でしたねぇ。
音楽は勿論、文学やら歌やら絵画やら。
芸術は、自己表現の一つでもあるんですね。
(ブログも加えていいのかな・・・)

うろ覚えですが、私はジェニーは無実なのに罪を被って刑務所にいるんだと思ってました。
だから

>それで傷つき、誰も信じられなくなってしまったのでしょうね。

こっちだと思ってマス。


★シャーロットさま

>ベルリンの壁を壊した勢いの如く

なるほど、確かにドイツ映画に勢いがあることの説明がつく気がします。

>そんな音楽達

『音楽達』って表現は素敵ですね。
シャーロットさんが、どれ程に音楽を愛しているのかが伝わるかなぁなんて思って見ました。
よく考えてみると、音楽を題材にしている映画って各国でありますよね。本作は、別格といったところでしょうか。

投稿 隣の評論家 | 2007年11月19日 (月) 20:33

こちらにもお邪魔します~☆

>客席に向かってゆっくりと丁寧にお辞儀をするジェニー
ね、ラストのお辞儀はホントに心に残りましたよね。
このお話の言いたいことは、あのお辞儀に集約されているのだなあ、
と思いましたッス。

ところで!
ワタシもドイツ映画というと「es<エス>」を思い出します。
あれは観たあとは何時までもどよ~~んとなりましたよね。汗
そういえば、モーリッツ・ブライブトロイはモニカ・ブライブトロイの息子なんですね!
「ブライブトロイ」って同じ名前なんだーって思っていたのですけど、
後から親子関係と知ってびっくりしましたです。エヘヘ

投稿 Puff | 2007年11月22日 (木) 06:59

Puffさま
TB&コメントありがとうございます。

>このお話の言いたいことは、あのお辞儀に集約されているのだなあ、と思いましたッス。

おおおおお~、仰る通りぃ
最後のお辞儀は、いつまでも忘れられない名場面の1つですー

>ワタシもドイツ映画というと「es<エス>」を思い出します。

おおおおおー、そうですかー
やっぱり、どこか嗜好が似ているでしょうかね(笑)。
強烈な映画でしたよね。あの衝撃は今でも鮮明だったりします。どよ~んとするから誰にでもおススメという訳にもいかないんだろうけど、ドイツ映画と言えば『es<エス>』であります!


投稿 隣の評論家 | 2007年11月23日 (金) 17:37

となひょうさん、グーテン・ターク♪
ドイツ映画といったら、『バグダッド・カフェ』かなぁ。
ん。これは舞台がアメリカだからドイツ映画じゃないかしら。
じゃあ、ドイツ映画といったら、『ベルリン 天使の詩』かなぁ。
あと、『ノッキン・オン・ヘブンズ・ドア』、『ラン・ローラ・ラン』、『ブリキの太鼓』、『会議は踊る』など。
以上20世紀のmyドイツ映画でした。
21世紀でいったら、それこそたくさんの印象的なドイツ映画がありますねぇ。
骨太なものが多いですー。
まず、『es<エス>』というのはとなひょうさんらしいですねー。
esといえば、シネセゾン渋谷。
シネセゾン渋谷といえば、『ディセント』の夜を思い出しますよー。

投稿 かえる | 2007年12月 2日 (日) 11:53

かえるさま
TB&コメントありがとうございます。
わ、一杯映画のタイトルが挙がってる~
比較的、見てますです。
でも実は、今だに『ブリキの太鼓』を見れてなかったりするんですよねー いつかはいつかはで後回し・・・

>『会議は踊る』

コレ、初めて聞きましたー
ミュージカルでせうか。王も踊る♪♪♪

>シネセゾン渋谷といえば、『ディセント』の夜を思い出しますよー。

ほっほっほ、頼もしい一夜でございました。
私は、初めてシネセゾン渋谷で見た映画が『レクイエム・フォー・ドリーム』なんです。
ミニシアター・デビューが結構遅く。

投稿 隣の評論家 | 2007年12月 2日 (日) 21:09

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