ジェシー・ジェームズの暗殺
「ジェシー・ジェームズの暗殺」
<THE ASSASSINATION OF JESSE JAMES BY THE COWARD ROBERT FORD>/製作:2007年、アメリカ 160分 PG-12指定
監督、脚本:アンドリュー・ドミニク 出演:ブラッド・ピット、ケイシー・アフレック、サム・シェパード、メアリー=ルイーズ・パーカー、ジェレミー・レナー、ポール・シュナイダー、ズーイー・デシャネル、サム・ロックウェル
2008.1.14 TOHOシネマズ・デイ¥1,000にて鑑賞
隣の評論家はいくら?→¥1,800で妥当 / 評価:3.8★/5点満点★
「あこがれて こがれて、心がつぶれた。」
アメリカで最も愛された無法者を、背中から撃った卑怯者の物語
最近では、鑑賞前に他のブロガーさんのレビューを読まないようにしています。「右へ倣え」することなく、私の目線で感じたことを大切にしたいので。今回も、気をつけていたつもりなんですが。ブログ巡りしている内に、辛口めな評価が視界に入ってしまいました。私が常に参考にしている映画HP等でも、プロの厳しいレビューが載っていたし。あらぁ、どうしようかしらと一瞬止まったのですが。やっぱり観に行ってまいりました。確かに160分という尺は長過ぎますよね。でも、結構好きだった点も多かったので。私は、そんなに辛辣な感想にはなりませんでした。
南北戦争後のアメリカが舞台。ジェームス兄弟率いる犯罪集団は、世間を騒がせていた。兄フランク(サム・シェパード)を筆頭に、カリスマ性を誇る弟ジェシー(ブラッド・ピット)達は列車強盗を計画する。メンバーの1人チャーリー・フォード(サム・ロックウェル)の弟ロバート(ケイシー・アフレック)は、この集団に憧れていた。中でも、ジェシー・ジェームズの存在は大きかった。憧れる余り、列車強盗に加担するロバート。ジェシーの側で過ごす日々に夢中になるロバートだったが。やがて、ジェシーを背後から射殺する運命の日を迎えるのであった・・・。
クドイようですが、やっぱり160分は長いと思います。だからと言って、あのシーンやこのシーンを削除するべきだとも言えません。これはあくまでも私の見方なんだけど、この作品は【男の世界】を描いているように見えました。女の入り込む余地なし。やっていることは犯罪なんだけど、これが彼らの生きる道。男同士の仲間意識、友情、羨望、嫉妬、そして裏切り。各メンバーの個性はバラバラですが、それぞれ印象的でした。本作の宣伝文句は「ブラッド・ピット、キャリア最高の演技」というもの。正直、キャ~、ブラピ様♪というノリで鑑賞するには重たい話だし何よりも長過ぎる。私は『ジェシー・ジェームズ』という人物を全く知らなかったので、理解しきれていない部分も多々あると思いますが。『12モンキーズ』の頃の肩に力が入り過ぎているブラピさんとは違って、ちょっと余裕のある熱演を見せてくれたと思います。それでもやっぱり『ブラッド・ピット』という大スターの存在感は消し去れなくて、ジェシー・ジェームズではなくてブラピさんがそこにいるという感覚は拭い去れなかったなぁ。ジェシーが少年に暴行を加えるシーンがありました。子供大好きなブラピさんがそんな事する訳ないじゃんと思ってしまった。
本作の主役は、ジェシー・ジェームズではなくてロバート・フォードの方だと思います。純粋な少年のような眼差しで、ジェシーに心酔するロバート。周囲からも子供扱いされることに苛立ち、少しずつ人間の汚い部分を知りながら成長していく。憧憬が殺意に変わる瞬間。冒頭と最後のロバートの目の輝きは、全く違うものでした。演じたケイシー・アフレックの繊細な表現が素晴らしいです。目線のみならず、口の端を小さく上げる笑顔も演じ分けていた気がします。一番印象的だったのは、ジェシーを射殺する前の微妙な表情。殺意はあったにせよ、恐怖と緊張で張り詰めているようでした。こめかみを抑えた左手が微かに震えていたし。この瞬間までも、ジェシーへの強い思いは残っていたのかもしれません。一言では表せないくらいに複雑な胸の内だったと思います。それと、ジェシーはロバートの手で殺されたいと思っていたのではないかと思ってしまいました。兄フランクも手を焼く程に、気紛れで扱いにくいジェシー。明るく笑ったかと思うと、次の瞬間に怒りを爆発させる。カリスマティックで逞しそうな振る舞いの裏で、辛く淋しい表情を浮かべているようにも見えたり。アウトローとして有名になったこと、【ジェシー・ジェームズ】というカリスマティックな存在に、自ら嫌気が差していたのかもしれない。彼なりに、生きるのが辛かったのではないかしら。ロバートのことを「KID」と呼んで子供扱いしているようだったけど、心の底ではロバートに助けを求めていたのではないかと。ロバートに新しい銃を贈っていたし。射殺される瞬間も、銃を構えたロバートの姿が額縁に映っていました。何だか、わざと背中を向けたようにも思えてしまって。深読みし過ぎかもしれないけれど、そんな風にドラマ部分を堪能できました。
個人的には、ロバートの兄チャーリーを演じたサム・ロックウェルも印象的でした。コメディからシリアスまで演じきる器用な俳優さんなので、安心して見ていられます。友人であるジェシーの機嫌を必死に取りながらも、気が短くて世間知らずの弟ロバートの身を案じていたようにも見えました。チャーリーのストレスも大きかったと想像します。 全編に渡って優しい印象の音楽も素敵でしたが。一枚の画として好きだった場面も多かったです。列車強盗に挑む前の1ショット。列車の白煙の中に佇むカリスマ溢れるジェシーの姿。これから何が起こるのかとワクワクさせられました。もう1つは、ジェシーとチャーリーが旅している時のショット。真冬の凍った池(多分)に佇む2人。周囲は白い雪に包まれていました。緑の木々と高い山並みの白が美しく心に焼きつきました。
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コメント
初めまして。映画ブログを彷徨い、今日観てきた「ジェシー・ジェームズの暗殺」のコメントがあったので、思わず出てきました。
この映画でブラピがヴェネツィア映画祭主演男優賞を取ったのもうなずけるくらい「今までのブラピの役」とは違い、少しホレ直しました。
しかし、この映画の主役はなんといってもロバートを演じた「ケイシー・アフレック」だと思います。
20歳の揺れる男心を微妙に演じて・・・すっかりファンになりました。兄より演技も容姿も上なのでは?
それに、あのリバー・フェニックスの妹と結婚しているなんて・・・・今後が楽しみです。
2時間半の上映は少し長いかと思いますが、ご指摘のように雪の平原を行くシーンなど、映像も美しく、処々に流れる音楽もステキでした。
男が感情移入できる映画かもしれないけど、女の私でも十分堪能できました。
投稿: cinema_61 | 2008年1月14日 (月) 22:48
こんにちは。
いつもながらの微に入り細に入ったレビューに感心しました。
ほんとうに、となひょうさんは、映画に入り込んでご覧になっていますね。
160分は疲れるだろうな、なんて余計な心配まで。
サム・ロックウェルも素晴らしかったです。
サム・シェパードの出番があまりにも少ないのは驚きしたが、
ロバート・フォードのうさんくささを見破り自分から遠ざけるところは、
さすがの演技でした。
投稿: えい | 2008年1月15日 (火) 10:59
cinema_61さま
初めまして!訪問ありがとうございました。
ブラピも熱演でしたけど、ケイシー・アフレックは印象的でしたよね。
>兄より演技も容姿も上なのでは?
ふふふふふ、そうかもしれませんね。
アメリカでは、ベン兄貴が監督デビューとなった作品で、ケイシー君が主演していると聞きます。そちらも日本でいつ公開されるのかと楽しみです。
雪の平原の映像は見事でしたね。
とても印象に残っております。
投稿: 隣の評論家 | 2008年1月15日 (火) 19:54
えいさま
TB&コメントありがとうございます。
>いつもながらの微に入り細に入ったレビューに感心しました。
・・・そうでしたか?本当に無意識なんですけど。
えいさんにそう言って頂けると、やっぱり素直に嬉しく思います。ありがとうございます。
160分という尺が苦痛だという声、私の周りでは多数寄せられています。だったら観に行かなくていいや。という具合に。尺だけで見るのを諦めて欲しくなかったので、再三書いてみました。
サム・シェパードの出番が少ないのは淋しいですよね・・・でも、えいさんが仰るように一瞬でロバート・フォードを信用しなかったというくだりは、彼だからこそ場面を締めてストーリー展開に魅力を注いだのかもしれないですね。さすがでした。
投稿: 隣の評論家 | 2008年1月15日 (火) 21:47
私もみてきましたが、、やや長かったですね~この作品(--;
いい演技を俳優陣がしているのにそれを生かせてないところが惜しいです!
サム・ロックウェルの演技コブタも感心していしまいました!
ロバートのジェシーを崇拝しているといいながら、結局は自分しか愛してない様子の退避もあったのでしょうが、あの一味の中では最も平凡で普通の感覚ならではのジェシーやロバートや仲間に対する愛情と葛藤というのが絶妙に出ていたように感じました。
やはりいい俳優さんですよね!
投稿: コブタです | 2008年1月17日 (木) 14:21
コブタさま
訪問ありがとうございます。
確かに長くはありますが、短くまとめるのが難しい作品なのかもと思ってました。
この作品を語るには、まずケイシー・アフレックなんですけど。サム・ロックウェルも印象的でしたよね。
ジェシーの機嫌を損ないように、かなり気を遣っているように見えましたが。同時に、危なっかしい弟にハラハラしながら、兄として気遣っているようにも見えたのでありました。
サム・ロックウェルって、コメディタッチの強烈キャラのイメージも強いけど。こんなシリアスな演技でも印象的なんだなぁと感心しました。
投稿: 隣の評論家 | 2008年1月18日 (金) 20:04
こんにちは。
もしかしたらコメントするのは初めてかもしれません。
私はこの作品が皆様が言うほど長いとは感じませんでした。特に、ジェシーと誰かが絡んでいるところはじっくりと描いていて且つ、心理描写が見事でした。
なので評価も高いです。
おっしゃる通り、ケイシーの目の演技は、「仮面の男」で2役を目だけで演じ分けたディカプリオに匹敵すると思います。
このレビューも読みごたえがありました。また、遊びに参ります。
投稿: turtoone | 2008年1月18日 (金) 21:34
turtooneさま
TB&コメントありがとうございます。
本当に「長い」という声が多いですね。
160分って確かに長いかもしれないけど、この作品を短くするのは難しい気もしてしまいます。
>ジェシーと誰かが絡んでいるところはじっくりと描いていて且つ、心理描写が見事でした。
そうですね。私もドラマ部分は、とても興味深く堪能できました。
>ケイシーの目の演技
本作の最大の見せ場と言っても過言ではないくらいに魅せられました。素晴らしかったですよね。
後から読み直してみると、何とも熱がこもってしまっていますが・・・。読みごたえがあると仰って頂いて、とても嬉しいです。どうもありがとうございます。
こちらからもまた遊びにいきますので、どうぞヨロシクお願い致します!
投稿: 隣の評論家 | 2008年1月19日 (土) 20:05
となひょうさん、こんにちは。
これって、評判悪いんですかー。
私も別段期待はしていなかったんですが、思いの外、チョー気に入ってしまいました。
男の美学を感じるクールな作品だったと思います。
私はブラピも素晴らしくよかったと思ったし(バベルのブラピはブラピだったけど、今回はジェシーに思えました。)、ケイシーも2人のサムもサイコーでした。
アメリカ映画らしからぬこういう映画が私は好きなのです。
テレンス・マリック風味に美しく、撮影監督が共通だからか、コーエン兄弟テイストも感じたような。
投稿: かえる | 2008年1月22日 (火) 20:04
かえるさま
TB&コメントありがとうございます。
んー、私が目にしたところ限定ですが、イマイチ褒めていない声を多く見掛けてしまいました。
>男の美学を感じるクールな作品だったと思います。
そうですねー、痺れちゃいましたよ。
まぁ、一目で誰が見てもよくわかる起伏とは違うのかもしれないけれど。私は結構ハラハラしました。
>テレンス・マリック風味に美しく
あっ、そうかもですねー
そう言えば『ニュー・ワールド』も閑古鳥が鳴いちゃったんでしたっけ。わかる人にはわかるアートの世界って感じなんでしょか。私も楽しめました。
投稿: 隣の評論家 | 2008年1月22日 (火) 23:34
こんにちは、
ケーシーがベンの弟とは知らなかったので、「アフレック?まさかな」と思っていたのですが、兄と異なり演技の出来る奴ですね。ベンには演技学校が必要ですが、彼には不要でしょう。
映画としては、「サム・シェパード、爺になったなぁ。」が、一番の感想だったりします。
投稿: バラサ☆バラサ | 2008年1月23日 (水) 19:56
長い映画でしたけど、納得の長さかなって思いました
>銃を構えたロバートの姿が額縁に映っていました
それを認めてからの横顔が、ようやく解放されるっていうような感じがして
僕も、となひょうさんが言わはるみたいに
ロバートに助けを求めてたっていうふうに思います
列車の白煙の中に佇むジェシーの映像もよかったですね!
投稿: doBlog! | 2008年1月23日 (水) 22:08
バラサ☆バラサさま
訪問ありがとうございます。
ケイシー・アフレック、アカデミー賞の助演男優賞にノミネートされましたね!
兄とは違う・・・
今度は、兄が監督する作品に出演しているとの噂を聞きました。それはいつ公開するのかしら。
★doBlog!さま
納得の長さということで、本当に良かったです。
長くて苦痛だという声が余りにも多い印象だったので・・・
>それを認めてからの横顔が、ようやく解放されるっていうような感じがして
あそこは印象的でしたよね。ジェシーの腕なら、瞬時に撃ち返せるはず。それをしないということは、寧ろわざと撃たれたとしか思えないですもんね。
全体的に映像が素敵でしたね。
投稿: 隣の評論家 | 2008年1月24日 (木) 22:00
となひょうさん、こんばんは。
なかなかエンタメ系とは言い難い作品で、
興味深い話ではありましたが、やっぱり長かったかな。
そんなに飽きるという長さを感じたわけでもないけど。
何とも言い難い作品でした。
ケイシー・アフレックは良かったですね。
アカデミー賞も候補になったのかな?
この作品って、変な話、単館系で公開されたら、また鑑賞前の気持ちが違って、感想も変わったかな? という気がします。おかしいかな?
投稿: CINECHAN | 2008年1月25日 (金) 23:17
CINECHANさま
TB&コメントありがとうございます。
確かに、エンタメ系とは違いますかね。
アメリカ映画=エンタメ系というイメージが強いですね。
私は、鑑賞直後よりも暫く経ってから味わいが深くなりました。もう1度じっくりと見たいかも。
ケイシー・アフレックは、アカデミー賞にノミネートされましたね!とても嬉しいニュースでした。
撮影賞でもノミネートされてます。
確かにキレイな映像だったから、何か受賞して欲しいところです。
投稿: 隣の評論家 | 2008年1月27日 (日) 10:51
隣の評論家さん♪こんにちは☆
わたしもこの映画、世間の評判に比べて全然ハマりました。
ひとつひとつの演技や画が丁寧に表現されていて、とにかく特に2人の演技と美しい画に圧倒されて魅せられました。
わたしも納得の長さでした。
暗殺の場面は、やっぱりジェシーが自ら終止符を打ったような気がしました。
ジェシーになりたかったのは、ジェシーだったんじゃないかなーという感じ。。
投稿: ルールー | 2008年1月29日 (火) 15:09
ルールーさま
TB&コメントありがとうございます。
ルールーさんも、お気に召したようで何よりです。
そうそう、とても丁寧に描かれている作品でしたよね。
流れる雲の早送りとか、世界遺産なみに感動してしまいましたわ。
暗殺というけど、ある意味『自殺』っぽかったですね。
>ジェシーになりたかったのは、ジェシーだったんじゃないかなー
これは深いですねー。また色々とこの映画について思いを巡らせたくなってきましたー。
投稿: 隣の評論家 | 2008年1月29日 (火) 19:47
こんばんは☆
遅くなりました;
前評判が悪いとかなんとか全然知らず。
ただ、ブラピか…どうしよう…なんて思いつつ、ついつい見たいリストの優先順位が上がらず見に行くのが遅くなった感じです;
やー、これは結構好きでしたよ。
長いっていうのも知らなかったのですが、長い作品は長いなりの理由があるんですよね。きっとこれでも随分削ったのでは?なんて思っちゃうのですが。
映像と音には惚れましたよ。
それと、、、ジェシーが背中を見せたあのシーンですが。
そうそう、となひょうさんのようにもまず考えましたよ。
死に際を探していたというか、やはりわざと背を向けたのでしょうね。
ブラピが笑うシーンではどうしてもオーシャンズシリーズで笑ってる姿を思い出してしまいましたけど(笑)、でもこの作品の彼は私の中ではピカ1かもなあ~
投稿: シャーロット | 2008年2月20日 (水) 23:59
シャーロットさま
TB&コメントありがとうございます。
>長い作品は長いなりの理由があるんですよね。
きっとそうですね。


この作品は、余り長さを感じませんでした。
映像も素敵だったけど、静かな音楽も印象的で。
いつまでも余韻を残す作品でした。
ブラピ・ブラピでもっと押していくのかと思ってたけど。
上映も早々に小さい劇場へ追いやっていたみたいですね。
シネパトスとか。
興行側はヒットは望めないと予想してしまったのだとしても、ブログを巡ってみると絶賛している声を割りと見かける気がします。しかも、どう印象に残ったかが人それぞれなので、拝見しながら何か勉強になって楽しかったです。
投稿: 隣の評論家 | 2008年2月22日 (金) 22:37