ノーカントリー
「ノーカントリー」
<NO COUNTRY FOR OLD MEN>/製作:2007年、アメリカ 122分 R-15指定
監督、脚本:ジョエル・コーエン / イーサン・コーエン 出演:トミー・リー・ジョーンズ、ハビエル・バルデム、ジョシュ・ブローリン、ウディ・ハレルソン、ケリー・マクドナルド、ギャレット・ディラハント、テス・ハーパー、バリー・コービン
2008.3.15 劇場前売り鑑賞券¥1,500にて鑑賞
隣の評論家はいくら?→¥2,500で妥当 / 評価:4.5★/5点満点★
「純粋な悪にのみこまれる」
世の中は計算違いで回る。
転がる運命は誰にも止められない、それぞれの過信が全てを狂わせる―
何がキッカケだったのか忘れてしまったけれど。昨年の秋頃に、本作の存在を知りました。その瞬間から、絶対に観に行こうと固く心に誓った作品です。コーエン兄弟と言えば、その名を聞いて安心して鑑賞できる映画人です。おまけに、先日のアカデミー賞で作品賞を始めとする最多4部門を受賞した話題作 です。
私だけではなく、世界中の映画ファンが楽しみにしているに違いない。![]()
麻薬取引に使われたと思われる200万ドルという大金を手にした男ルウェイン・モス(ジョシュ・ブローリン)。金を取り戻す為に雇われた殺し屋アントン・シガー(ハビエル・バルデム)。死体の山を発見して捜索を始めるエド・トム・ベル保安官(トミー・リー・ジョーンズ)。主に、この3人の追跡劇の行方を描いた作品。
実を申しますと、何を伝えようとしているのか読み取れませんでした。
誰が見ても楽しめるシンプルなアクションやサスペンスとは違います。何を読み解くのか、見た人の感性にかかっているのかもしれません。私は、どんな映画も感想は人それぞれに異なるのが当たり前だと思っています。だから、是非とも本作から自分なりに何か解釈をしてみたいところなんですが。悔しいことに、何を感じ取っていいのか止まってしまいました。
この映画に完敗です。
娯楽ではなくて、宿題を突きつけられたような感覚に陥りました。
お財布に優しくしなくちゃと、最近では毎回パンフレットを購入する訳でもないのですが。
今回ばかりは、購入しました。プロのライターさんの解説を読んで勉強することにしたのです。
ロングラン上映するのであれば、是非とも再度トライしたいと思わせる作品でした。
今の私には、大したレビューなんて書けない状態です。
仕方がないので、印象に残った部分など振り返ってみたいと思います。
やはり、特筆すべきは殺し屋シガーを演じたハビエル・バルデムだと思います。とにかく、あの存在感を見て体感して欲しいです。濃厚で端正なお顔立ちのハビエルさんが、おかっぱ頭で登場する。しかも、もの凄い姿勢良くピィーンと背筋を伸ばして不気味に佇む。
大怪我をしても、表情ひとつ変えずに自分で治療する冷静さ。
武器は、酸素ボンベ。改造された酸素ボンベも、ミサイルのように異様な存在感を放っていました。(原作でも酸素ボンベなんでしょうか
)シガーの最初の登場シーンも強烈です。自分を捕らえた保安官補を殺すのですが。手錠を嵌められた両手で首を絞めます。
のた打ち回る保安官補の靴が、白い床に落書きのような黒い線を描きます。首を絞めている時のシガーの両目をひん剥いた表情も強烈ですが。
標的が息絶えると、ふぅ~っと安堵の溜息をもらして微笑むんですよ。あの場面は、夢に出てきそうなくらいにインパクトがありました。![]()
逃亡者モスも、なかなか強烈な存在感だったと思います。作品中、ベトナムから帰還したかどうかを訪ねる会話が何度か出てきました。「ベトナムから帰還した=男らしく逞しい」という考え方が根強くあったのかもしれないですね。モスは、ベトナム帰還兵です。サバイバル能力だけでなく、強運の持ち主であったようにも見えました。演じたジョシュ・ブローリンのいかつい存在感も良かったです。
そして『逃亡者』以来、大ファンで追いかけ続けているトミー・リー・ジョーンズ。保安官役ということで、個人的には『メルキアデス・エストラーダの3度の埋葬』を瞬時に思い出しました。舞台がテキサスという点でも一緒だし。原題の「NO COUNTRY FOR OLD MEN」 の"OLD MEN" の代表格は、彼のことなのかな。正義の象徴だという雰囲気もあったと思いますが、世の中は必ずしも正義が勝つ訳ではありませんでした。ラストのベル保安官のセリフは、何かを感じ取らないといけない重要なものだと思いながらも。どうにも解釈できなかった私です。
悔しいなぁぁぁ。
![]()
俳優さん以外に印象的だった部分もありました。まずは、テキサスの風景にウットリしました。一面が砂漠の乾いた大地に揺らめく陽炎とか。夕日も朝日も、それはそれは美しくて。
絵ハガキにしたいとすら感じる程に魅了されました。私みたいなもやしっ子は、アッと言う間に唇がカサカサに荒れてしまうに違いないけど。
乾燥した広大な地で、馬と会話をしているかのように見える保安官の姿とか。何とも言えない逞しさを感じて、憧れの気持ちが止まりませんでした。ストーリーとは関係なく、ミャーミャーと猫が何匹か登場したのも嬉しかったんですけど。
モスを追いかける猛犬、いいえ《殺人犬》の俊足にも圧倒されました。
できれば、もう少しあの犬の登場を拝みたかったです。
最後に、本作には音楽がありません。いわゆる生活音だけでストーリーが進行していく訳ですが。この演出が、もの凄い効果的だと思いました。シガーの殺人兵器ボンベの「プシュッ」という音や。気配を消す為に靴を脱いで忍び寄るシガーの姿とか。
個人的に好きだったのは、モスが奪った大金の中に仕込まれた発信機。シガーが探知機を手にモスを探すんですけど。近づくと「プププププ」と音がします。シガーの猛烈な存在感と緊迫感の中で、「プププププ」って・・・。
ちょっと肩の力が抜けて、何か口許が緩みました。もしも意図的にこんな音にしたのだとしたら、私は見事にコーエン兄弟の罠に嵌ったことになります。![]()
| 固定リンク


コメント
こんにちは
確かにコチラの作品 どういう切り口で記事を書いて良いのか悩みますよね!
観て衝撃をうけ、凄い映画だというのは感じているのに、それが文章にならないんですよね。
かなり苦しみながら記事を仕上げました
でもでも、となひょうさん、、画面の隅々に出てくる猫さんの姿に密かに喜ばれていたのではないですか?
怪演して人間をいい感じにサポートしていましたよね~
投稿: コブタです | 2008年3月17日 (月) 16:15
コブタさま





訪問ありがとうございます。
そうそうそう、かなり衝撃的で凄い映画だと思ったんですけど。
何をどう書いていいのか、よくわからなくて・・・
コブタさんは慎吾ちゃんが司会をしている『スマステーション』って見てるかな
月一で、吾郎ちゃんの映画コーナーがあるんだけど。
慎吾ちゃんが選ぶ5本を吾郎ちゃんが斬るというヤツ。
今月分は、『ノーカントリー』を第1位に選んでた吾郎ちゃんだけど。「後味が悪くて不愉快だ」という感想を持ったみたいなんですわ。
この作品って、やっぱり奥が深いんだなぁと改めて思いました。
できれば、もう1度ジックリと見直してみたいところです。
そうそう、ミャーミャーとネコさんが一杯出てきましたよねん。
余りにも緊張感溢れる作品だった為、ネコさんの声が聞こえただけでホッとひと息できました。
投稿: 隣の評論家 | 2008年3月17日 (月) 20:50
こちらもTB感謝です
これは感想書くの難しいですね
まあ、とにかくシガーのキャラが圧倒的でした。
あの髪型とか武器とか驚きでした
終わり方がイマイチすっきりしなかったですが、コーエン兄弟だから仕方ないですね。
投稿: くまんちゅう | 2008年3月18日 (火) 22:28
くまんちゅうさま


TB&コメントありがとうございます。
全体的に不気味で恐怖を味わえたんですけど、ラストの保安官の夢の話がよくわからなくて。
最終的には、混乱してしまいました。
今更ながら、あの終わり方はコーエン兄弟が意図的に仕組んだのかなぁとも思い始めたのですが。
不穏さを増幅させる為に、わざとプッツリ終わらせたみたいな。
>終わり方がイマイチすっきりしなかったですが、コーエン兄弟だから仕方ないですね。
『バートン・フィンク』も、見た当時は終わりがスッキリしなかったと思った記憶があります・・・。
投稿: 隣の評論家 | 2008年3月20日 (木) 20:45
こんにちわ。
≫娯楽ではなくて、宿題を突きつけられたような感覚に陥りました
こういう感覚、すごく分かります。
この作品って、観る人間によって、観る回数によって、観たときの心境によって180度も270度も見解や受け捉え方が変わってくるように思えますね。
個人的には、難解に見えて、メッセージとしては実に直球ストレートな印象を受けたのですが・・・今となっては、記事に書いた事以上に湧き出てくるものがあったりして、グズグズしちゃってます(苦笑)。
でも間違いなく今年のベストムービー上位に入る秀逸な1作だと感じました。素晴らしかったです。
投稿: 睦月 | 2008年3月21日 (金) 15:00
睦月さま





コメントありがとうございます。
これまた、いつまでも余韻の残る作品でしたね。
しかも、後味スッキリではなかったりなんかして。
仰るように、見る度に感じることも少しずつ変わってきそうで。
私は、パンフレットや雑誌やら読んでみても、最後の保安官の夢の話がイマイチよくわからないです。今だに。
余裕があったら、是非とも再度トライしてみたいです。
もう1度見ても、ラストをどう捉えるか考えは広がらないような予感はするんですが。
なかなかショッキングな映画でした。
投稿: 隣の評論家 | 2008年3月21日 (金) 20:31
こちらにもお邪魔致しまするる~~~!
いやはや凄い映画でしたね!
最初はね、シガーとモスの追いつ追われつの逃走劇かと思っていたのですけど、違ったのですねー
真の?主人公は語り部でもあるベル保安官だったのですねん。
(・・・ラストの登場で、そうか!とポン!と膝を打ったのでした。←大袈裟?笑)
>テキサスの風景にウットリしました。一面が砂漠の乾いた大地に揺らめく陽炎とか。夕日も朝日も
と思ったのでしたん。
ねー、あの映像美は本当に素晴しかったですねー!
この映画、観る前はミニシアター向けじゃないかと思ったりもしたのですが、左右に広がる砂漠を見たら大きな劇場で観て良かった
あの死体の腐敗ぶりを見ると、数分居るだけで肌や唇がじゅっと乾燥しそうですネ。
そうそう、シガーのオカッパ頭。
毛先が少しくるんとしていて怖いけれどお茶目でした。うふふふ
「デッド・サイレンス」
)
本当は今日観に行く予定だったのですが行きそびれました・・・・・・うううう
ああーー、早く観たい観たいデスーーー!くおーーーん(早く観たい雄叫び
投稿: Puff | 2008年3月22日 (土) 21:23
Puffさま

こちらにもありがとうございまするるるー
バルデムさんの化けっぷりは凄かったですね。
素顔はかなりのイケメンさんなのに。
でも、その変貌がまた俳優として素晴らしいですよねん。
あの砂漠の映像は、大きいスクリーンでじっくりと堪能するべき美しさですよねん。
先に見た『ジャンパー』での世界の映像よりも、本作の砂漠の映像に魅せられたのです。
やっぱり、CGは本物のは勝てないっすよー
この作品は、再度見るとまた印象が少し変わってきそうな気がしています。
間に合えば、是非とも再トライしたいところなんですけど。
ロングラン上映してくれるかしらん。
おおおおお、Puffさんも『デッド・サイレンス』をチェックしてるとですねー

当然ですわな。
ご覧になったら、是非ともお話したいっす。
投稿: 隣の評論家 | 2008年3月22日 (土) 23:42
ハビエル・バルデムは不気味でしたね
最初の保安官殺しのシーンから強烈でした
殺した後の表情、白い床に描かれた黒い線といきなりパンチありました
音楽が無いのも良かったですね
特に仰ってるように受信機の音はシガーが近付いてきてるのを上手く表現してると思いました
また見たくなる考えさせられる映画でしたけど
退院したモスのシークエンスとかおもしろい点もあり、さすがコーエン兄弟ですね!
投稿: doBlog! | 2008年3月29日 (土) 01:02
doBlog!さま

TB&コメントありがとうございます。
冒頭の保安官殺しの場面、もの凄い迫力ありましたよね。
ちょっと不気味すぎました。
素顔は、あんなにイケメンさんなのに。
バルデムさんは、さすがです。
音楽がないという演出が、不気味さをジワジワと増幅させていた感じがしますよね。
シガーの迫力があり過ぎて、音楽なんか意味がないという感じもしましたし。
再度見ると、また違った感想も湧いてきそうな作品でした。
投稿: 隣の評論家 | 2008年3月29日 (土) 23:26
ううむ。お疲れですか、となひょうさま
そんなとこお邪魔してもうしわけないっす
自分なりの考えをひねくりだそうと思えばそれなりに出てくるんですけど、それが合ってるかどうか・・・というとなんともこころもとないですね
とりあえず荒涼とした風景と無音の世界が印象的でした。この世であってこの世ではないような。どこかの掲示板でシガーさんは「生ける死神なんだ」という意見を読んだのですけど、「ああ、なるほどね」と思いました
探知機のシーンはわたしは素直にびびってましたよ。というか、気づいたらさっさと壊せよ!と(笑) あといくら田舎とはいえ、警察は一体なにやってんだーとも思いました
こちらにお邪魔するようになって、もう一年くらい経ちましたかね。できましたらこれからもよろしゅうお願いします
投稿: SGA屋伍一 | 2008年4月 1日 (火) 21:57
SGA屋伍一さま

TB&コメントありがとうございます。
すいません、ご心配をおかけしまして
SGA屋さんは優しいですね。
ちょっとした一言でも嬉しいです。
そちらへのお返しを先にするべきなのでしょうが、まずここにお返事をしたくなりました。
>生ける死神なんだ
なるほど、そんな感じですね。


保安官の追跡が終点に近づくあたりから終盤にかけての展開に、戸惑いが隠せないです。(今だに・・・)
最後の保安官のセリフも、幾らか注意力が散漫だったのか。
どう捉えていいのか迷ってしまいました。
最終的には、かなり不安感の残る作品でした。
アカデミー賞受賞作品ということで、普段はそんなに映画を観ない方からも「どうですかー」と聞かれるのですが。
何と表現したら良いのか、少し止まってしまうのであります。
どんな風に勧めたらイイすかねー
投稿: 隣の評論家 | 2008年4月 2日 (水) 23:05
遅くなりましたが、やっと私もこの映画のレビューを書くことが出来ました。
どうもコーエン兄弟とは相性が悪いらしくて、良く作られた映画だというのはわかるのですが、ただただバビエルさんが恐かったとか、景色が綺麗だったとか、そんな感想しかかけませんでした・・・・
>一面が砂漠の乾いた大地に揺らめく陽炎とか。夕日も朝日も、それはそれは美しくて。
よくあるカレンダー的な美しさじゃなくて、心象風景みたいな美しさでしたね~
>本作には音楽がありません。いわゆる生活音だけでストーリーが進行していく訳ですが。
下手に音楽で盛り上げられるより、音だけのほうがずっと恐かったです!
投稿: jester | 2008年4月 9日 (水) 11:28
jesterさま




TB&コメントありがとうございます。
おおお、jesterさんはコーエン兄弟とは相性が悪い感じなんですねぇ
私は、どちらかと言うと相性は良い方かもしれませんが。
本作に関しては、後味が悪過ぎちゃって何と表現したら良いのやら
2度以上鑑賞すると、また違った側面が見えてきそうな気がしています。
でも、もう1度劇場に足を運べるかどうかはわかりません。
でも、あのテキサスの絶景は、もう1度大きいスクリーンで堪能したい気もするんですよねぇぇぇ。
投稿: となひょう | 2008年4月10日 (木) 21:06
となひょうさん、こんにちは。
やっぱりハビエル・バルデムは強烈でしたね。
彼を見ていたら、誰も勝てない、逃げ切れない
という気がしました。
私もこの作品から何かを読み取るということはできませんでした(苦)。
何となく最後は「老兵は去るのみ」という印象で終わった感じですね。
投稿: CINECHAN | 2008年4月20日 (日) 17:04
CINECHANさま
TB&コメントありがとうございます。
確かに、殺し屋シガーから逃げられる人なんていないというくらいに迫力がありましたよね。
>何となく最後は「老兵は去るのみ」という印象で終わった感じですね。
なるほどねー
最後がよくわからないけれど、果たして再度見たところで理解できるのでしょうか。
やっぱり、よくわからないと思ってしまいそうな予感もします。
でも、まだ上映しているんですよね。
今日、26日に『ゼア・ウィル・ビー・ブラッド』を見ようと指定席をゲットしてきたばかりです。
まだまだシャンテシネ2で上映してました。
投稿: となひょう | 2008年4月21日 (月) 20:57
ノーカントリーでネットサーフィンしていて、たどり着いた
あげく書き込みまでしてすいません。音楽がないとも気づき
ませんでした。みなさんの解説をみるまで。豊かなオトの
世界なのかな。
テーマは、諸行無常というか「人生なるようになる」という
か。イージーライダー、タクシードライバー、初期タケシ
作品のような。誰が倒すの?無敵の殺人鬼が、しょ~もない
自動車事故で事実上再起不能になるとこが(片手ダメだと
ボンベ持てない)。
投稿: 兼六園 | 2008年8月31日 (日) 14:07
兼六園さま
ようこそいらっしゃいました!
コメントどうもありがとうございます。
お返事が遅くなってしまって申し訳ありません。
>諸行無常
なるほど、なかなか奥の深い作品だったのですね。
あの自動車事故にはビックリしちゃいましたね
あそこで死ななかったとは言え、確かにあれではボンベは持てませんよね・・・
あの後に言葉を交わした子供たち、あそこに嫌な予感を持ったという方もいらっしゃって。
色々と捉えようがある作品なのかもしれませんね。
私は、再度観に行くことはできなかったのですが。
原作は読んでみました。
ラストはさておき、割と展開は原作に忠実だったようです。
DVD化したら、再度ジックリ見直してみたいところです。
投稿: となひょう | 2008年9月 8日 (月) 22:53