つぐない
「つぐない」
<ATONEMENT>/製作:2007年、イギリス 123分 PG-12指定
監督:ジョー・ライト 原作:イアン・マキューアン 出演:キーラ・ナイトレイ、ジェームズ・マガヴォイ、シアーシャ・ローナン、ロモーラ・ガライ、ヴァネッサ・レッドグレイヴ、ブレンダ・ブレシン、パトリック・ケネディ、ベネディクト・カンバーバッチ、ジュノ・テンプル
2008.4.14 TOHOシネマズ・デイ¥1,000にて鑑賞
隣の評論家はいくら?→¥2,300で妥当 / 評価:4.3★/5点満点
「一生をかけて償わなければならない罪があった」
命をかけて信じ合う恋人たちがいた。
あなたを愛しています。私のもとに帰ってきて・・・。
===(シネマトゥデイよりストーリー紹介)===
1930年代、戦火が忍び寄るイギリス。政府官僚の長女セシーリア(キーラ・ナイトレイ)は、兄妹のように育てられた使用人の息子、ロビー(ジェームズ・マカヴォイ)と思いを通わせ合うようになる。しかし、小説家を目指す多感な妹ブライオニー(シーアシャ・ローナン)のついた嘘が、ロビーに無実の罪を着せ、刑務所送りにしてしまう。
鑑賞前に、勝手にイメージを作り過ぎていたようです。過剰に煽られて、恋愛映画で号泣したことのない私でも、嗚咽してしまうようなメロドラマを想像していましたが。
実際には、アッサリ目だった印象でした。無駄がなく、必要最小限に感動を誘う。なるほど、批評家さん達の絶賛の声も納得できます。うーん、でも個人的には。もう少しこってりした演出を見たかったなぁというのが正直な感想です。
クオリティの高さは認めるけれど、個人的には『フィクサー』の方がお気に入り度が高かったりします。
そうは言っても、私目線でも高評価とさせて頂きます。
色々と印象に残った部分を振り返ってみたいと思います。やはり、メインとなる3人のキャラクターの心理描写が素晴らしかったと思います。令嬢セシーリアと使用人の息子ロビーの《身分違いの恋》は、少しずつ近づいていく2人の距離にドキドキします。
普段は殆ど口を利かないけれど、本当はお互いを強く意識していて。その事にも、お互いに気がついているという雰囲気。セシーリアを演じたキーラ・ナイトレイは、露出度の高い衣装が多かったです。
余りにもガリガリに痩せているので、今更ながらちょっとビックリしました。この体型と大きくて切れ長の瞳が、勝気な雰囲気を強調していた気がするし。もちろん、微妙な表情などの繊細な演技でセシーリアという女性を体現していて魅せられました。ロビーを演じたジェームズ・マカヴォイも、人柄が良くて賢い雰囲気が上手く出ていたと思います。真っ直ぐに先を見据える青い瞳が印象的で、ルックスだけに留まらないイケメンっぷりを発揮していました。
それでも、一番印象深いのはブライオニーでした。やはり、この作品は彼女の【贖罪】の物語なんですね。セシーリアとロビーの純愛は、あくまでもブライオニーの【贖罪】を盛り上げる要素の1つという感じがしました。セシーリアとロビーが2人でいる場面で、2つ印象的なものがあります。軽い言い争いから、高価な花瓶が割れて破片を噴水に落としてしまうセシーリア。下着姿になって、噴水に潜って破片を探す。拾った後に、ずぶ濡れで噴水から出ると、目の前にはロビーが気まずい表情で立ち尽くしている。
この時、お互いをハッキリと意識したようです。やがて、図書室で2人きりになる機会が訪れて。自然の成り行きで愛し合う2人。どちらも、ブライオニーは目撃してしまうのですが。
ブライオニー目線で描いた後に、実際の場面を再度描いていました。この演出が効いているように思えました。やはり、主人公はブライオニーだと思います。
ブライオニーは、姉セシーリアを心から慕っているようでした。同時に、ロビーを「王子様視」していたようです。大好きな姉と憧れの人とのラブシーンは、13歳の少女にとっては衝撃的なものでした。
淡い恋心が打ち砕かれただけではありません。ロビーは、「噴水の一件」の後に謝ろうとして手紙をしたためます。
セシーリアを想う余り、卑猥な言葉を並べてしまうのですが。慌てて、冷静に書き直します。直接渡さずに、ブライオニーに渡してもらうように頼むのですが。ブライオニーは、コッソリと手紙を見てしまいます。何と、ロビーは間違えて「卑猥な言葉」の方を封入してしまったのです。
この手紙の後に、2人が愛を確かめ合って絡み合う姿を見てしまうのですが。大好きな姉が汚されてしまうことへの嫌悪感もあったでしょう。多感な少女は、複雑な思いで混乱してしまいます。その直後、従姉妹が襲われる事件が起こります。
嫌悪感を繋げて、ロビーが犯人だと嘘をついてしまいます。激しい困惑から逃れられると思ったのでしょうか。しかし、その嘘は恋人達を引き離してしまいます。![]()
絶望したセシーリアは、行き先も告げずに家出してしまいます。ロビーを糾弾した家族を恥じていたようです。ロビーは、刑務所を経て戦地へと送られてしまいます。家族を捨てても、ロビーとだけは連絡を絶たなかったセシーリア。これは私の解釈なのですが、セシーリアは妹だけを激しく憎んでいたということもなかった気がします。ロビーに至っては、ブライオニーを憎むどころかセシーリアを想うことで頭が一杯だったと思います。引き裂かれても、限られた時間で逢瀬を続ける2人の純粋な愛は、ある意味輝いて見えました。
「悲劇的な恋」という見方が多いかもしれないけれど、私には青春を謳歌しているようにも見えたのです。セシーリアとロビーの気持ち以上に、ブライオニー自身の《自責の念》 ばかりが大きく膨らんでいるような気がして。引き裂かれた恋人達よりも、自分を責め続けるしかなかったブライオニーの人生の方が悲劇に思えました。![]()
本作は、音楽がとても印象的でした。ブライオニーが作家を目指す少女ということで、色んな場面でタイプライターのカシャカシャという音を効果的に挿入しています。効果音というよりは、タイプライターが1つの楽器として音楽を奏でているのです。
仕事で時々タイプライターを使っているので、拾わずにはいられない要素でした。そう言えば、本作はアカデミー賞で作曲賞<Music (original score)>を受賞しているのでした![]()
追記:とても興味深く読ませて頂いた素晴らしいレビューに出会いました。敬意を込めまして、ご紹介させて頂きます。少し悶々とした気持ちがスーッと引いていきました。TBどうもありがとうございます。 『INTO』
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コメント
こんばんは。
久しぶりに壮大なロマン大作を観た感じがしました。
映像・音楽・ストーリーが見事に調和して、観た後しばらくしてジワジワと感動が湧いてきました。
私はブライオニーに感情移入してみていたので、彼女の気持ちが切なくて・・・文学少女が陥るちょっとした間違いがいろいろな人の人生を狂わせるところを、少女期のシアーシャ・ローナンが特に見事に演じていましたね。キーラは気品があって美しく(とくに背中ガキレイ)前作(プライドと偏見)同様主役の貫禄がありました!タイプの音も含めて音楽が耳に残りました。
投稿: cinema_61 | 2008年4月15日 (火) 23:57
cinema_61さま
こんにちは。
ようこそいらっししゃいました。
コメントありがとうございます。
そうですね、ジワジワとくる作品でした。

私も、誰よりもブライオニーに感情移入して観ていましたよ。特に、シアーシャ・ローナンが印象的でしたよね。
13歳の多感な感じが、よく出ていたと思います。
今後の活躍が楽しみになってきました。
キーラ・ナイトレイは、パイレーツ・オブ・カリビアンのお転婆娘のイメージが強い人が多いと思うから。
こういった大河ドラマでの違った顔も、たくさんの人に見て欲しいところですよね。
『プライドと偏見』とはまた違った女性像で、なかなか興味深かったです。
投稿: となひょう | 2008年4月16日 (水) 20:38
ハロ~~~ン♪
そうなんですー、予備知識を殆ど入れてなかったので、観る前はてっきりキーラが主人公なのかと思っていました・・・フ
ブライオニーからの視点、彼女が主人公なのですねん。
最後の最後で「そうだったのかー」と衝撃を受けた次第デス。。。
>真っ直ぐに先を見据える青い瞳が印象的

キャッ
マカヴォイくん、素敵でしたねーーー
ワタシが彼を観たのは「ナルニア」のタムナスさんが初めてだったので(あの映画の中で一番印象に残ってるかも!)被り物を取るとまさかあんなに素敵だとは思いませんでしたー!!テヘヘ
「ナルニア」以降「ラストキング・オブ・スコットランド」「ペネロピ」と目覚しい活躍ですね。
是非、あの初々しさは変わらず頑張って欲しいものですねん~~~!
投稿: Puff | 2008年4月20日 (日) 10:57
Puffさま

訪問ありがとうございます。
またしてもTBが不調・・・むむむ、悔しいですぅぅぅ
22日にまたメンテナンスをかけるらしいから、その後には復活している事を祈るばかり
私も、マカヴォイさんは「タムナスさん」が初めての出会いでした。まさか、こんなにイケメンさんだったとはビックリです。

さすが俳優さんですよね。
今後の活躍も、とても楽しみになってきました。
本作のマカヴォイさんは、小柄なのに子供にしては大柄な双子の少年を肩車して現れた姿にキュンとなりました。
ここまでして探し出してくれたのに、信用しないなんて
と、ブライオニーよりも父ちゃん・母ちゃんに腹が立ちました。
出番はかなり少な目でしたけど、ロビーの母を演じたブレンダ・ブレシンが凄い迫力で車に詰め寄る場面は切なかったです。
投稿: となひょう | 2008年4月21日 (月) 19:19
となひょうさん、こんにちは♪
わたしはかなりこの映画気に入ってしまい、即原作を読んでみました。
原作を読んでみると、またいろいろ心理的なことがわかって面白かったです。
>嫌悪感を繋げて、ロビーが犯人だと嘘をついてしまいます。
ブライオニーは確かに真犯人を知っていて、ロビーだと言ったのはうそだけれど、彼女の中では「あんな手紙を書いて、姉に襲い掛かっていて、変質者」を告発する思いだったと思います。
もちろんその裏には、好きだったのに裏切られたという悔しさもあったのでは。
キーラは確かにやせすぎでしたね。
監督さんはキーラにブライオニーの役をさせたかったみたいですけれど・・・・
キーラがセシリアをやりたいと言い張ったんだそうです。
でもブライオニーの3人は素晴らしかった!
ああいうかたくなな少女性みたいなもの、とってもよく分かります。
投稿: jester | 2008年5月 3日 (土) 09:26
jesterさま

訪問ありがとうございます。
今、jesterさんのところにいってきました。
原作の方が、各キャラクターの心理を深く描いているようですね。
やっぱり、原作のあるものの映画化って、まるまる100%は難しいのが現実なんでしょうかねー
キーラは、線が細い上に胸がペッタンコなので。



おまけに、キリリとした釣り目美人だし。
私から見ると温かみがイマイチ伝わらない印象でした。
多少は丸みもあった方が、何かホッとできるなんて思ったり。
自分のやりたい役という主張を貫き通しちゃう辺り、ますます気が強いのかしらというイメージが強まりますわ。
個人的には、シアーシャ・ローナンちゃんの透き通った瞳と存在感にやられました。
少女ならではの潔癖さとか、よく出ていましたよね。
投稿: となひょう | 2008年5月 4日 (日) 16:03
となひょうさん、こんばんは
いくつか観た今年のオスカー関連では、これが一番印象に残りました。予告だけではわからないところがいっぱいありましたね
。その辺のミステリー的な見せ方も上手でしたね
「目は嘘をつく」というか、ちょっと細部が見えないだけでこんなにも誤解が深まってしまう・・・という点では怖い話でした。まあマカヴォイくんのウッカリミスも大概痛かったけれど
ロビーもセシーリアも気の毒だったけど、夢を抱いたまま逝けたならば、彼らは確かに幸せだったかも。それよりも罪の意識を背負って長い年月を生きなければならなかったブライオニーの方が、よほど哀れのような気がしました
>仕事で時々タイプライターを使っている
そいつは驚きですね・・・ もうてっきり過去の遺物になってるかと思ってました
PCには出せない独特の字体を好む人もいるということでしょうか?
投稿: SGA屋伍一 | 2008年5月20日 (火) 21:26
SGA屋伍一さま
TB&コメントありがとうございます。
>ちょっと細部が見えないだけでこんなにも誤解が深まってしまう・・・
普段から小さいことから誤解を招くことって、よくありますが。

ここまで深まってしまうとは、悲しい話ですね。
私は、ブライオニーの思い込みの強さが更に彼女を苦しめているようにも思えて。
そこがまた切なくもありました。
>PCには出せない独特の字体を好む人もいるということでしょうか?
んー、というか。PCでゼロから入力し直すよりも、部分的にチョコっと修正したいだけという場合に活用しています。
って、別にどーでもいいか、そんな事は。
先日、席替えをして、私はタイプライターさんのある机の隣に座って仕事しているのであります。
投稿: となひょう | 2008年5月22日 (木) 20:57