大いなる陰謀
「大いなる陰謀」
<LIONS FOR LAMBS>/製作:2007年、アメリカ 92分
監督:ロバート・レッドフォード 出演:ロバート・レッドフォード、メリル・ストリープ、トム・クルーズ、マイケル・ペーニャ、アンドリュー・ガーフィールド、ピーター・バーグ、デレク・ルーク
2008.5.3 劇場前売り鑑賞券¥1,300にて鑑賞
隣の評論家はいくら?→¥1,800で妥当 / 評価:3.8★/5点満点★
「何のために立ち上がり、何のために戦い、何のために生き、何のために死ぬのか――?」
===(チラシよりストーリー紹介)===
対テロ戦争をプロパガンダにし、大統領選へと野望を抱く上院議員(トム・クルーズ)。その裏に巨大な陰謀を感じ取ったTV番組のジャーナリスト(メリル・ストリープ)は、上院議員との会話の中から真実を暴こうと画策する。また、意義ある人生を送りたいと願う若者たちは、アフガニスタンで対テロ戦争に命をかけることを選択する。その若者たちの選択に誇りを感じながらも、戸惑いを隠せない恩師の大学教授(ロバート・レッドフォード)。今、それぞれの思惑が一つに繋がろうとしていた時、何も知らずにアフガニスタンで戦う若者たちの未来が、大きな陰謀のうねりに巻き込まれようとしていた。
ロバート・レッドフォードがメガホンを取るということで、2時間以上ある長尺なのかと思ってました。内容も力強そうだし、骨太にタップリと描いていくのかと思って。実際には、 92分という短い尺でした。各キャラクターの信念をサラッと映し出しているという印象でした。大スター、トム・クルーズが出演しているということで、何やら派手なストーリーが展開していくことを期待していた方も多いかな。だとしたら、ちょっと物足りなく感じる人もいるかもしれませんが。私は、コレはコレでありだと思います。
尺が短い割には、各キャラクターの信念を自分なりに吟味してみたりなんかして。エンタテインメント作品と見せかけて、観客に問題を投げかけている意欲作とも言えるのではないでしょうか。![]()
トム・クルーズと言えば、『トップガン』から始まって『ミッション・インポッシブル』シリーズに見るような、派手に暴れるイメージが強いです。
今回は、上院議員の役ということで「どうなのよ?」なんて思っていたのですが。
攻撃的で自信過剰、カリスマティックでアンビシャスな人物像をトムさん独特のスターオーラで上手く再現できていたと思います。
私は、トムさんと言うとストイックで清潔感に溢れる「色気のない」俳優と感じてるのですが。(けなしているのではありません)
ニヤッと笑って白い歯を覗かせても、爽やかだと感じるどころか生理的に嫌だと眉間に皺が寄りました。
高そうなスーツをビシッと着こなし、壁には過去の栄光の証を飾っています。嫌味にしか映りません。
政治家にもカリスマ性は必要だと思うけど、こんな議員は応援したくないです。
きれいごとを並べても、結局は自分のことしか考えていないような気がして。いつか誰かが、この男の鼻をへし折ってくれればいいのにとさえ思ってしまいました。
ワンパターンが多いことを自身でも気にしていると思われるトムさん、殺し屋の役に挑んだ『コラテラル』よりも本作の演技の方が《悪》という感じで新境地だったような気がします。![]()
ですので、メリル・ストリープが演じたジャーナリストのジャニーン・ロスは印象的です。「撤退」という言葉の解釈が全然違う2人。議員は、メディアを利用して自分の支持率を上げようと画策したようですが。その相手に選ばれたロスは、決して踊らされずに真実を見抜く確かな目を持っていたような気がします。
議員に食ってかかったりせずに、1つの言葉も聞き逃さずにメモを取る。感情的になって声が大きくなる議員とは違い、穏やかで落ち着いている様子でした。
議員より何倍も器が大きく見えたりなんかして。
メリル・ストリープと言えば、熱演するタイプの女優さんというイメージが強かったので。私にとっては、とても新鮮でした。ストリープさんに演じられない役なんて無いですね。
実は、本作で印象的なのはロバート・レッドフォードが演じた大学教授の3人の教え子です。
レッドフォード自身が、若者に投げかけた作品なのかと思いました。メキシコ系の若者アーネスト(マイケル・ペーニャ)とアフリカ系の若者アーリアン(デレク・ルーク)。危険な街で育ち、勤勉で誠実で今を1歩1歩踏みしめて生きているという印象です。
人種は違っても、同じ信念のもと双子のように寄り添う2人。
《学歴》を積んで、普通に社会人となることよりも。彼らなりの信念を貫き、志願兵となる道を選びます。「テロに立ち向かえ」とは「戦地に行け」という意味ではない。 私は、教授の言葉通り、2人には《志願》という形ではなくテロに立ち向かって欲しかったです。
同時に、2人の信念を汲み取り尊重した教授の胸の内にもグッときました。『クラッシュ』で一目惚れした「透明マントのお父さん」ことマイケル・ペーニャが今回も印象的で。
澄んだ瞳と強い信念に、『ワールド・トレード・センター』で演じたキャラクターと被ります。(背景も似てるし) 何気に、出演作が目白押しなんですね。とても嬉しいです。
そして、ちょっとイケメン風のトッド(アンドリュー・ガーフィールド)に全てが掛かっているような気がしました。もともと優秀で雄弁だったトッドが、現実の社会情勢に嫌気が差してしまったらしく、授業にも顔を出さなくなります。彼の才能を見込んだ教授は、トッドにアーネストとアーリアンの話をします。トッドの中で、何かが変わっていったようですが。《志願》という大きな選択でなくていい、ほんの少しでいいからトッドには立ち上がって欲しいなと思いました。![]()
最後に一番強く感じたことをば。9・11の悲劇の後、アメリカは苦しんでいるということが《映画》を通して流れ込んできます。本作の前にも、強いメッセージを込めた作品をたくさん観てきました。日本人で、強い信念を持った若者は少ないかもしれないけど。この映画を見たことで、今まで以上に世界情勢への関心が強まる人が増えたら素敵ですね。
私も、新聞には目を通せない時も、テレビのニュースだけは毎日チェックするようにしたいと思いました。![]()
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コメント
コチラは、レッドフォードの熱い想いのこもった作品でしたよね。
それに、やはりメインとなっている人物がみな演技が素晴らしかったと思います。
ロバートレッドフォード演じる教授も、メリルストリープ演じるジャーナリストもアメリカの今の問題を理解はしているでも、自分ではどうにも止められない力の不足を歯がゆく感じ感じ苛立っているのですが、その苛立ちこそがこに作品で描きたかったことなのでしょうね~
その苛立ちがよく出ているだけに、みた方も何とも言えない焦燥感を感じモヤモヤとした感情を残してしまう内容でしたよね(><)
投稿: コブタです | 2008年5月12日 (月) 11:28
コブタさま

訪問ありがとうございます。
何となく、鑑賞前のイメージより地味な感じも否めないのですが。
92分という短い尺の割には、色々なメッセージが込められていたような気がしました。
私が見たのはGWの昼間だったので、ほぼ満席状態でした。
何となく、「トム・クルーズ主演」というだけで足を運んだという雰囲気の若い方が多かったのですが。
どういう感想だったのかしら。
投稿: となひょう | 2008年5月12日 (月) 22:46
こんにちは。
邦題から予想していたストーリーとはだいぶ違いましたが
豪華キャストの共演は見ごたえありましたよね。
おっしゃるとおり監督のメッセージが強く出てて、見ている観客に何かを考えてもらいたいという思いを感じました。
ホワイトハウス、アーリントン墓地を見るロス記者の目に浮かぶ涙がとても印象的でした。
投稿: ゴン他 | 2008年5月15日 (木) 16:26
ゴン他さま

コメントありがとうございます。
ゴン他さんも、ご覧になりましたか。
そうですよね、監督のメッセージが強く出ていますよね。
そうは言っても、一般的に浸透しにくい作品かもしれない気もした。
ゴン他さんが挙げているロス記者の表情は、とても印象的でしたよね。
多くの人に、様々なシーンが印象に残っているといいんですが・・・。
投稿: となひょう | 2008年5月15日 (木) 22:57
となひょうさん、こんばんは。
二つの対話が進んでいく形式。
これはこれでなかなか面白かったです。
確かに9.11以後、多くの作品が出ていますが、
いまだアメリかも迷走してる感じですね。
ちょっと日本人には、捉え辛かったかもしれません。
何と言っても日本の政治自体もよくわかってませんから。
否、私のことですけど(苦)。
投稿: CINECHAN | 2008年5月16日 (金) 01:47
CINECHANさま

TB&コメントありがとうございます。
鑑賞前のイメージが何やら派手めな感じなので、実際に見てみると地味な作品という印象はありますけど。
私も、2つの対話になかなか引き込まれましたー
そう感じる人が多いといいんですけどね・・・
>ちょっと日本人には、捉え辛かったかもしれません。
そうですよね、ココが大ヒットに繋がらない要因なのかなぁとも思っています。


私も、日本の政治からもうちょっと勉強しなさい状態ですよ
この作品を見たことがキッカケで、もう少し政治に興味を持ってみようと感じた人が多ければ、それはそれで良きことかもしれないですねー
投稿: となひょう | 2008年5月17日 (土) 17:36
これはかなり問題作だったなぁと感じてます。映画としては、もちろん地味だけど、よくできてる。「普通の人々」「クイズショウ」以降、良作を作り続けているレッド・フォードらしい仕上がりになってます。「右」に「ダーティハリー」のクリントイーストウッドがいるとすると、「サンダンス・キッド」のレッドフォードが「左」にいるって感じ。どちらも丁寧な映画作り、シンプルで飾りっ気はないけど骨太なストーリー等で、映画好きのファンを魅了しています。
「何のために立ち上がり、何のために戦い、何のために生き、何のために死ぬのか――?」。結構これは、アメリカ特有のアイデンティティ・クライシス問題なんじゃないでしょうか。こういう問題を「信念」一般で語るのは、ちょっと狭量じゃないかとも思うのです(ごめんなさいね)。
アメリカって国は、「戦う」ってことに国民の存亡がかかってる所です。ヨーロッパから移民してきて、まず最初にインディアン、次にチョッカイを出すヨーロッパ陣、南北戦争、WW2、冷戦…こういう戦いの中から、「アメリカNo.1」が生まれた。今アメリカは貧富の差がひらいてるけど、中間層は「概ね」、「グッド・ライフ」を満喫してます。「勝利」し続けたおかげです(ベトナム、イラク除く)。その勝利とは、一言「人民解放」「liberation」なのです。
確かにイギリス、フランスも、自由を「戦い獲った」わけですが、その後をよく見て下さい。クロムエルの独裁、ナポレオンの独裁と解放戦争…特に彼らは植民地政策続行中のことですよ。これ、天邪鬼で言ってるんじないんです。歴史の中の常識。だからこそ現代の「アメリカ帝国主義」を世界中のメディアが警戒しているのです。
結論から言うと、彼らのいわゆる「信念」が、今世界中に問題を撒き散らしている側面があるのです。
レッドフォードだってわかってるはず。でも「アメリカ」では、自由信奉のフロンティア・スピリッツしか、今は「正解」が見つけられないでいるのです。大統領がオバマさんになっても変わらないでしょう(イラク撤退してもアフガニスタンで戦争「war」宣言してる)。
日本はどうかっていうと、「信念」自体が空洞化しているのです。文化としては、戦国を経て、軍事政権(江戸)が続いた国としては、「戦士」は高い位置を持ってるはずですが、WW2で、木端微塵にされました。民主主義の時代が来た。その上で、信念とは、「自由・平等・博愛」であるはずです。でも、これは、「世間」では「信念」とは呼ばれず、単なる「逃げ」と受け止められます。どうしてこうなるんでしょう・・・日本には、日本の特有な問題があり、この映画では、なかなかその核心まで見通せないと思う。
長くなりましたが、結論から言うと、アメリカで、先程便宜的に「右」(保守)「左」(革新)と位置づけたものは、こと外交、国外に対してしては、完全に「右」になっちゃうのです。その罠にレッドフォードでさえ嵌ってる。でも多分彼はそれ分かってます。その上で、「アメリカ的自由と信念」の新しい解釈と読み替えを、トッドに託したわけです…と思う。
投稿: madmax | 2009年1月 1日 (木) 14:24
madmax さま
コメントありがとうございます。
madmaxほど長いコメントを頂いたことがありません。
しかも、ほぼ毎回。入れる度に零れ落ちそうなくらい長いコメントを頂きまして、ありがとうございます。
付き合いの長いブロガーさんでも、こんなに熱弁する方はいらっしゃいません。
凄いですね。博識でいらっしゃるんですね。
それで、どうお返事をしたらいいのか、とても悩みました。
というのも、私はmadmaxさんと同等に語れる程の知識も脳みそも持ち合せていないので。
更に言うと、この作品は正直なところ、記憶に残っていないというか。
見た時にまとめた感想も、今となってはどういう気持ちで書いたのか、ハッキリ言って曖昧なんですよね。
見たのもだいぶ前だし、後から見たお気に入りの作品に消されてしまいました。
だから、実を言うと、madmaxさんに頂いたコメントの内容を半分も理解できていない状態なんですよね。
結局、的を得たお返事を書けない現状です。
無難な言葉で誤魔化そうかと、ちょっと悩んだのですが。
思うところを正直に書くことに致しました。
的を得たお返事を書けずに、失礼いたしました。
投稿: となひょう | 2009年1月 2日 (金) 12:09
ごめんなさい。言わんとしている事分かります。つい熱くなってしまいます。ほとんど自己満足で書いています。でも出来るだけ多くの方に、もうちょっと「突っ込んだ」意見を投げかけて、議論のキッカケにしてほしいな、と思った次第です。
もうかれこれ20数年ほどの映画暦です。もちろん玄人にはまだ足元にも及びませんが、将来なんとか対決できるくらいの映画通を目指してはいます。それももっと庶民的な観点から、「となひょう」さんみたいに(失礼でした?)。
次回は、もっと的を得た、シンプルな感想を残すよう努めたいと思います。でないと会話ができませんものね。あけましておめでとうございます。
投稿: madmax | 2009年1月 2日 (金) 12:41