シークレット・サンシャイン
「シークレット・サンシャイン」
<SECRET SUNSHINE>/製作:2007年、韓国 142分
監督、脚本:イ・チャンドン 出演:チョン・ドヨン、ソン・ガンホ、チョ・ヨンジン、キム・ヨンジェ、ソン・ジョンヨブ、ソン・ミリム、キム・ミヒャン、イ・ユンヒ、キム・ジョンス、キム・ミギョン、オ・マンソク
2008.6.11 映画サービス・デイ¥1,000にて鑑賞
隣の評論家はいくら?→¥2,000で妥当 / 評価:4.0★/5点満点
「ふりそそぐ陽射しを どれだけ浴びたら あなたの悲しみは消えてゆくのだろう」
最愛の息子を失い、心を閉ざしたシングル・マザーと、
その痛みをひたすら受けとめることしかできない不器用な男――
===(シネマトゥデイよりストーリー紹介)===
シネ(チョン・ドヨン)は事故で亡くなった夫の故郷で再出発するため、息子ジュン(ソン・ジョンヨプ)とソウルから密陽(ミリャン)に引っ越して来る。車が途中で故障しレッカー車を呼ぶと、自動車修理工場を営むジョンチャン(ソン・ガンホ)が現れる。彼の好意でシネは無事にピアノ教室も開き、順調に新生活を送っていたが、ある日息子が誘拐され…。
冒頭、車の中から覗く眩しい青空が絶品です。
陽射しがモチーフになっているのかしら。最初から最後まで、シネの言動と心情に引き込まれました。鑑賞直後よりも、一晩明けてからの方が素敵な映画に出逢えたと実感します。
印象に残った点を全て挙げられないし、まとめるのも一苦労な感じですが。シネの場面を中心に振り返ってみたいと思います。
引越しの挨拶中、寂れたブティックの店主に「インテリアを明るくするべき」と提案する。〈アドバイス〉と片付ければ聞こえはいいかもしれないけれど。いきなり初対面の人にケチをつけるなんて、ちょっと失礼な感じがしました。
本当はそんなに裕福ではないのに、土地を探している素振りで見栄を張る。夫の故郷で暮らしたいといいながら、【密陽】という地に同化しようとしていなかった気がします。
シネの些細な言動は、小さな町では大袈裟な噂に化けていきます。
隣人同士の繋がりが密接なのかもしれません。《都会から来た金持ちのシネさん》と肥大した噂は、やがて思いもよらない事件に発展します。
最愛の息子ジュンを誘拐された上に、殺されてしまうのです。
夫を事故で亡くし、両親(特に父親)と何らかの確執があるらしいシネは、独りぼっち。まるで、抜け殻のようになってしまいます。
ジュンの葬式に訪れた祖母(夫の母かな)は激しく泣き崩れて、涙を流さないシネを罵倒します。〈人生の一部〉とも言える人を亡くすと、その事実をなかなか受け入れられないものではないと思います。暫くして、その人が本当にもう居ないことを実感して初めて、涙が込み上げてくるものではないかと。
だから私は、シネの様子には何の疑問も湧きませんでした。(寧ろ、祖母の激しい嗚咽の方が嘘っぽい)生気を失った目で、ヘナヘナと座り込んでしまう姿には胸を締め付けられました。
息子を亡くした後、一応は普通に暮らしているように見えるシネでしたが。喪失感と虚無感に覆い尽くされた心は、どうすることもできませんでした。
信仰心の強い隣人から《宗教》を勧められても神の存在を否定していたはずのシネが。ふらふらと教会に足を運ぶ姿も痛々しく映りました。
牧師の言葉に、ひと時の安堵感を覚えるようになり。ようやく救われたと感じたシネは、思いもよらない決断をします。刑務所を訪れ、息子の命を奪った男に赦しを告げようというのです。
しかし、予想もつかない展開が。男は刑務所で信仰に目覚め、神から赦しを得たというのです。顔色も良く、清々しい笑顔を見せる男。自分が苦悩している間に、自分より先に「神に触れた」と告げられ。シネは、激しく動揺します。
信じることにした神にも裏切られ、生きる糧にしたはずの信仰心は音を立てて崩れていきました。それ以来、ますます不安定になっていきます。言動も怪しくなっていき、ある日・・・。恐らくスッピンで、シネの心の変化を体現したチョン・ドヨンの演技に心を揺さぶられました。カンヌ映画祭で主演女優賞を受賞したのも納得。
現時点で、今年見た映画の中ではベスト・アクトレスです。![]()
私が本作を観ようと思ったキッカケは、愛しのガンホ様の最新作という点です。とても魅力的なパフォーマンスでした。黙っていれば、縁なしメガネが知的な印象だったけれど。
あくまでもコミカルで温かみ溢れるキャラクターでした。同僚とは下ネタ話もする普通の男性ですが、シネを一途に想い続ける姿には感動すら覚えます。全く相手にされなくても、胸の内をシネに見透かされても。めげることなく、シネを見守り続けていました。
人によってはストーカーとも取れるアプローチもありましたが。
ガンホ様が愛敬タップリに、時にはマヌケに演じて見せるので。ジョンチャンという男が愛おしくて仕方ありませんでした。
全体的に控え目な演出でも、かなりシリアスな作品ですが。ジョンチャンの存在感が温かいスパイスを効かせていたと思います。
シネの側にいながら、なかなか気持ちを伝えられない純情男。それ程に真剣だったのではないかと思うと、羨ましくて仕方ありませんでした。
精神的に不安定になったシネが、愛を告げないジョンチャンを自らおちょくる場面があります。ジョンチャンが声を上げて怒る唯一の場面で、とても印象的でした。
怯えて泣き出すシネを見ていたら、もしかして素直になれないのはシネの方なのではないかと思いました。
精神的にボロボロになってしまったシネは、突発的にある行動を起こしてしまいます。
それでも、ジョンチャンのシネを支えようとする姿勢は全く変わりませんでした。想いが通じなくても、どこか幸せそうに見えたりもして。
ラストシーンは、ちょっと抽象的ではありますが。これからもシネのことはジョンチャンが見守ってくれるに違いないと小さな光が見えた気がしました。
いつの日かシネが素直にジョンチャンを受け入れられる日がくればいいなと、映画であることを忘れて物語に入り込んでしまいました。
生きるって辛く苦しいこともあるけれど。側に誰かがいることは、この上なく幸せなことなのかもしれません。![]()
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コメント
お久しぶりですー♪
なんとなく、"ソン・ガンホ"っていうと隣の評論家さんを思いだしてやってきました。
これ、、、なんともうまく言えないけどずしりとくるような作品でした。
そして、かなり抑え目なガンホの存在がとってもすばらしく思えましたー。もちろん、チョン・ドヨンの演技なくてはならない作品だけど☆
私も、、、そばにいて自分を想ってくれるがいるっていうことが一番幸せなんだなーって思いました。
今会社からこっそり来ているので、TBはまたあとで送らせてもらいますねー。
投稿: きらら | 2008年6月17日 (火) 13:22
きららさま



こんにちはー
どうもご無沙汰しております、お元気でしたかー
ガンホ作品ということで、私のことを思い出して頂けたなんて・・・
うぅぅ、それだけで感動ですー、嬉しいですー
本作はチョン・ドヨンの迫真の演技こそが見物だと思うけど。
ガンホ様が登場して、あたふたする度に。劇場ではふふふっと笑い声が起こっておりました。
僅かな出番で作品を締めていたような気がしますね。
きららさんが仰るように、ずしりとくる作品だし。
見て暫くしたらすぐ忘れてしまうような作品ではなくて、何とも言えない余韻の残る作品でしたよね。
投稿: となひょう | 2008年6月17日 (火) 21:20
となひょうさん、こんばんは。
ソン・ガンホの温かな人間味あってのドラマでしたねー。
わたし的には『オアシス』の感銘には遠かったのですが、興味深い切り口の物語でした。
投稿: かえる | 2008年6月18日 (水) 01:32
かえるさま
TB&コメントありがとうございます。
>ソン・ガンホの温かな人間味あってのドラマでしたねー。
くわぁぁぁぁー、嬉しい一言です
確かに、切り口が面白かったですね。
余り予備知識を入れずに見たので、ちょっと驚きました。
投稿: となひょう | 2008年6月20日 (金) 19:03
イ・チャンドンの映画はデビュー作のグリーンフィッシュを観たときに衝撃を受けたのですが、以降全く外れなし。
今回も圧巻でした。
五年のブランクは全く感じなかったです。
チョン・ドヨンとソン・ガンホが切なくて、優しくて。
そういえばソン・ガンホが初めて脚光を浴びたのも、グリーンフィッシュでした。
投稿: ノラネコ | 2008年6月26日 (木) 22:40
ノラネコさま

TB&コメントありがとうございます。
すみませんー
>「グリーンフィッシュ」
ガンホ様が出演しているだけでなく、ノラネコさんが絶賛しているのなら見ないとです。

本作。切ないけど、どこか優しさに溢れているようで素敵でしたね。
温かい陽射しという感じでした。
投稿: となひょう | 2008年6月28日 (土) 21:40
はじめまして!
わたしもこの映画を観てきました。
チョン・ドヨンの演技に圧倒されて
2時間以上があっという間に過ぎて行きました。
つらい映画でしたが観てよかったと思います。
わたしも感想をUpしていますので
もしよろしかったら遊びにいらしてください☆
投稿: 永岡瑞季 | 2008年12月 6日 (土) 12:44
永岡瑞季さま
初めまして!ようこそ、いらっしゃいました。ヽ(´▽`)/
コメントを頂きまして、どうもありがとうございます。
チョン・ドヨンの演技が本当に素晴らしかったですよね。
私は、ソン・ガンホの大ファンで。
本作も、見るキッカケはガンホ様だったのですが。
見事に、チョン・ドヨンにグイグイと引き込まれてしまいました。
重い内容であるのに、淡々としているところが凄いとも感じました。
私も見て良かったと思いました。
投稿: となひょう | 2008年12月 6日 (土) 21:51