扉をたたく人
「扉をたたく人」
<THE VISITOR>/製作:2007年、アメリカ 104分
監督、脚本:トム・マッカーシー 出演:リチャード・ジェンキンス、ヒアム・アッバス、ハーズ・スレイマン、ダナイ・グリラ、マリアン・セルデス、リチャード・カインド、マイケル・カンプスティ
2009.7.3 劇場前売り鑑賞券¥1,500にて鑑賞
隣の評論家はいくら?→¥2,300で妥当 / 評価:4.3★/5点満点★
「扉を閉ざしたニューヨーク―― 移民の青年との出会いとジャンベの響きが孤独な大学教授の心の扉を開く。」
友情、ジャンベ、ロマンスが、孤独な心の扉を開かせる。
喜びや癒し、そして哀しみを抱くジャンベの響きのように
いつまでも胸を打つ、忘れ得ぬ一編の物語。
===(goo映画よりストーリー紹介)===
コネチカットで暮らす大学教授のウォルター(リチャード・ジェンキンス)は、妻と死に別れて以来本を書く事にも、教える事にも情熱を燃やせず憂鬱な日々を送っていた。ある日、出張でニューヨークを訪れた彼は、マンハッタンにある自分のアパートで見知らぬ若いカップルに遭遇する。知人に騙されて住んでいたというそのカップルは、シリアから移住してきたジャンベ奏者のタレク(ハーズ・スレイマン)と彼の恋人でセネガル出身のゼイナブ(ダナイ・グリラ)だと名乗る。
チラシにある解説も、一部引用させて頂きます。
「2001年9月11日に起きたテロ以降、アメリカは移民希望者や不法滞在者に対して厳しい措置を取るようになった。不寛容な空気が増し、その扉はかたく閉ざされてしまったかのようだ。」
リチャード・ジェンキンスが本作でアカデミー賞主演男優賞にノミネートされたことくらいしか認識していなかったのですが。全米公開時、口コミで評判が広がり、公開劇場も4館から270館へと拡大していったそうです。
世界同時多発テロのことは知っているけど、移民への監視が厳しくなっていることは知りませんでした。世界のニュースを表面上しか意識していなかった事を改めて気づかされました。
そういう報道って、あったのかしら。よく考えてみると、日本は島国ですから。食、文化、言葉と、色々な面で欧米化していっているとは言え。
結局のところ、排他的で視野が狭いのかもしれないという気がします。最近では、日本で暮らす外国人も増えているようだけど。人種のるつぼと言われるアメリカの感覚とは、やっぱり違うような気がするし。本作が全米でヒットしたのは、アメリカの人が悲しい過去と向き合って歩み始めたからなのかとも思えました。
地味な作品ながらに、とても深いテーマが盛り込まれていて。社会情勢を薄くでも感じつつ鑑賞してナンボなのかもしれませんが。世界のニュースを表面的にしか追いかけられない私の感想は。
浅い切り口になっていることと思いますが、ご了承ください。![]()
本作で私の心を掴んだのは。地味でも素晴らしい俳優陣の存在感と、音楽の力。
もちろんのこと、主人公ウォルターを演じたリチャード・ジェンキンスが素晴らしいの。(o^-^o)
こんな作品にも顔を出して、何だか酷い目に遭っていましたが。
本作では、シリアスに本領発揮です。シリアスながらに、時には小さく愛嬌を見せてくれるところも最高です。冒頭、妻が残したピアノを使って習い始めるも。なかなか上手く続かず、講師にも「才能ない」とキッパリ言われる始末。でも、ウォルターは本当に音楽を愛していたんですね。序盤、ストリート・パフォーマンスでゴミ箱(多分)を叩く若者に遭遇。それは、STOMPのように完成した素晴らしい演奏で私の心をも掴むのですが。気がつくと、ウォルターはもの凄く近い場所を陣取って聴き入っていました。
この場面でも、フフフと愛着が湧いてしまったのですが。(* ̄ー ̄*)
ちょっとした手違いから同居する事になるタレクのジャンベを見つめ。タレクが居ない空きにコッソリ叩いてみます。姿を現したタレクにビックリして飛び上がる場面が大好き。
不法滞在がバレて拘束されるタレクを助けようと必死になるも。現実は、どうにもならない。その悔しさに怒りを爆発させる場面も印象深い。
20年にも渡り、忙しいフリをして淡々と生きてきた自分への怒りでもあり。テロ後の現実と向き合い始めたアメリカの人々の代弁でもあるのでしょう。そして、ラストのウォルター。
地下鉄のホームでジャンベを演奏する姿が胸に染み入りました。![]()
タレクの母を演じたヒアム・アッバスの凛とした輝きにも引き込まれます。例えば、IKKOさんにメイクをお願いすれば、カメラ映えする完璧な化粧ができあがると思うけど。
そういう美しさではないんですよね。皺1本1本に刻まれた人生、そこから覗く強さが際立っていると言うか。内面から滲み出る美しさっていう感じで、素敵でした。(*^.^*)
でも実は、彼女以上に印象に残ったのが。タレクを演じたハーズ・スレイマン。彼の笑顔は、どうしてこんなに素敵なんだろう。笑顔と言えば、女性が持つべき武器くらいに捉えていたのだけど。
彼の笑顔は、アイドルが強いられる表情とは全然違うんですもの。音楽を愛して情熱を傾け、人との繋がりに感謝する。とても広い心を持っているように見えました。
ジャンベに興味を示したウォルターに、演奏を伝授するタレク。考えるのではなく、感じることが大切。(お茶のCMみたい・・・
)移民である以上に、音楽で食べていくというのはもの凄く大変だと思うのですが。
大らかで優しい口調が心地良かったです。あくせく働くサラリーマンだと、ノンビリ構えていられないから。こういう男性は殆ど見掛けることがなく、新鮮に映りました。
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コメント
ああ、タれクの笑顔、ホントにいい表情でした。実はタレクとウォルターはそんなに長い時間一緒にいた訳ではないのに、偏屈ジジイだったウォルターの心を開いたのはタレクのあの顔でしたよ。
あの顔を見てしまったら、不法滞在が犯罪だと理屈では解っていても、感情が納得出来ないです。
ヒアム・アッバスは『シリアの花嫁』同様、とても素敵でした。イスラエル出身でパレスチナ紛争を肌で感じて育った彼女だけに、芯の強い女性の役がぴったりでした。^^
投稿: KLY | 2009年7月 3日 (金) 22:39
KLYさま
TB&コメントありがとうございます。
タレクの笑顔は、本当に素敵でしたよね。
男女を問わず、たくさんの人がそう感じられる本物の笑顔って感じがしました。
確かに、不法滞在は違法だけど。
頭ごなしに否定できない気持ちにさせられますよねー
つい最近、日本でもフィリピン一家が話題になりましたし。
日本よりもアメリカでは多い問題なのかもしれないですね
>『シリアの花嫁』
チラシは見かけて存在は知っていたのですが、未見です。
これってKLYさんのところで高評価にしていたような記憶があるのですが・・・
是非とも見てみたいと思います。
投稿: となひょう | 2009年7月 4日 (土) 21:46